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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
353/372

新しい力をゲットなんだよ!

 千里眼を会得した三巳がいます。


 「うはー!これは凄いんだよっ」


 今いる場所を起点に少しづつ範囲を広げていけば、ダンジョンの全容が明らかになってきました。

 ダンジョンは大まかに3ルートで構成されており、1つは今いるメルヘンルートです。

 最短ルートはダンジョンになる前の状態を維持していました。地獄谷に用事がある人はいつも通り来られる算段です。

 最難関ルートは忍者もビックリの、カラクリまくり、罠まくり、モンスターまくりな巨大絶叫系アトラクションとなっていました。しかもそこから更にルートが枝分かれし、難易度も其々に変わっています。ルートによっては行き止まりもあるので攻略は中々に骨を折りそうです。


 「あ!レオ見ーつけた!」


 真っ先に目に入ったのはレオです。ダンジョンにいるレオも格好良いと三巳が興奮で頬を紅く染めます。

 その姿にロダがニコーっと微笑ましく思いました。


 (三巳の一番の好きは今の所レオみたいだね)


 レオの勇姿に惚れ惚れしていた三巳も、やっと周囲の存在に気付きます。


 「おお。ロウ村長に他の皆も揃ってる。レオお手伝いしてくれてたんだなー」

 「本当?全員いそう?」

 「ちょっち待ってな。今確認するんだよ」


 集まった顔触れと、参加したチームを照らし合わせた三巳は「うぬ」と頷きました。


 「あと1チーム残ってる」

 「そっか。じゃあその人達は何処にいるかわかる?」

 「うぬ。えぇっと、ここはー」


 三巳は線を引いて遊ぶ迷路の如く、残ったチームを起点にゴールを探します。


 するするする。


 (んにゅあ。行き止まり。戻って戻って……)


 するするする。


 (んにゃあああ!また行き止まり!戻って戻って……)


 とても難解な迷路に三巳も悪戦苦闘です。上手くいかなくて尻尾が不機嫌にブンブカビシー!と揺れています。耳も感情豊かに動くので、ロダは三巳が頑張っているのが見て取れました。


 「頑張って三巳」


 ロダが優しく耳の裏を撫でると、三巳は耳と尻尾をピン!と立てて上機嫌になります。

 俄然ヤル気が漲ったのでフンスフンスと鼻を鳴らしつつ迷路を進めました。


 「あ、あ、あー!ゴール!」


 ロダの応援のお陰で無事ゴールです。


 「おめでとう三巳」


 ハイタッチで喜びを分かち合った後、残ったチームのいるルートの確認です。


 「難解コースだ。行き止まりが多いからロウ村長達とすれ違っちゃうかも」

 「ええ?それは大変かも。うーん、一度戻って入り直す?」

 「うにゅ。それが良いか」

 「待ちや」


 三巳とロダの会話に待ったを掛けた人がいます。


 「妾と同じ神なのじゃ。神の声位使えるであろう」


 魔女神です。

 実は特訓を終えたあとも三巳が無事山の民を探せるまで付き合ってくれていました。


 「神の声?皆の声はお正月に良く聞こえてくるけど」


 キョトンとして返した三巳に、魔女神と兎とダンジョンがドン引きです。


 「お主……まぢか……まぢなのか……」


 魔女神に至っては言葉が乱れる程に引きまくりです。


 「三巳、神族には神託って力があるでしょ」


 冷静に指摘するのはロダです。

 常に言葉と態度で示してくれる三巳だから、神託なんて村には無かったけれど、ちゃんと知識はあったのです。


 「神託って、神様がなんか神主さんとか巫女さんとかに下すやつ?」


 三巳は獣神としての自覚は有る様で、神様としての自覚は足らなかった様です。改めて、そう言えば一応神族だったと両手を打ち鳴らしています。


 「神託ってどーやるんだろ」

 「獣型の時の会話を応用して出来ないのかな?」

 「おおっ。そー言えばアレも声と違うなっ」


 ロダのアドバイスで取り敢えず小型の本性に戻ってみました。


 『うーにゅ。これをどーやって遠くに伝えるか』

 「妾はもう何も言うまい……」


 人族に神族の力の使い方を聞くと言う前代未聞の状況に、魔女神は呆れを通り越して魂が抜け落ちたかの表情です。

 そんな魔女神に気付かない三巳は、千里眼で先程見つけたチームに焦点を合わせます。そして普段の会話と同じ感覚で語り掛けてみました。


 『もしもーし。聞こえるかー?』


 気分は電話です。スマホよりは固定電話の方が馴染み深いので、公衆電話から掛けてる気分です。ちょっとテレカの残数が気になる所ですが、近場だからそんなに掛からんだろうとドキドキしながら返答を待ちます。

 けれども返答はありません。気付いてもいない様です。


 『んにゅぅー?もしもーし!』


 電話が遠いのかな?と、ちょっと声を上げて再チャレンジです。

 するとチームの1人が顔を上げてキョロキョロしました。


 『うにゃ!通じた!?も、もしもーし!』


 ドキドキとワクワクで胸を高鳴らせ、再度言葉を届けます。

 するとその人は目をパチクリさせて耳に手を当てました。


 「三巳?」

 『ロン!』


 声を拾ったのはロンだったのです。野次馬根性著しいロンは、勿論ダンジョンに速攻で参加を決めていたのです。


 「え?本当に三巳なのか?」

 「おい、どうした?」

 「いや、三巳の声が頭に響いて」

 「あははっ、幻聴かぁ?ダンジョンだしな!面白いよな、ダンジョン!」

 「違うって!本当に三巳」

 『幻聴じゃないんだよ!三巳なんだよ!』

 「「「うわっ!?」」」


 再度の主張に今度こそ全員に聞こえた様です。姿は見えないのに聞こえる声にザワザワキョロキョロしています。


 「何だこれ。新しい力か?」

 『神託なんだよ!三巳頑張った!』

 「「「神託……」」」


 胸を張る三巳の声に、しかしロンチームの人達は


 (使えたのか……)


 とか


 (そう言えば神族だっけ。いつの間にか近所の子の感覚だった)


 とか其々に失礼な事を思い、それを顔に出さない様に努めてニッコリ笑いました。


 「そうかー。凄いじゃないか」

 「どうしたんだ?もしかして皆ゴールしててそのお知らせか?」


 取り敢えずで褒めて事情を聞くと、三巳も「そうだった!」とやっと現状の説明を出来たのでした。


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