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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
35/372

ワンコ三巳再び

 「三巳聞いたわよ」


 ある日の昼下がり、凄い形相で三巳に詰め寄るリリがいました。


 「お、おお?なんだー?」


 三巳はあまりの迫力に、思わず一歩後ずさって距離を取ります。


 「完全獣化出来るって!

 ワンコ形態になってボールと戯れてたって!

 私聞いてないわ!混ざりたかった~!」


 どうやら先日三巳が犬変身した事を山の民の誰かに聞いた様です。


 「おーそう言う事かー。

 ワンコ好きなのか?」

 「以前実家で飼っていたのよ……」


 急に気持ちが沈んだリリに、三巳は深く聞かずに「そっかー」と言うに留めました。


 「遊んでくれるならワンコになるぞ?」

 「本当!?」


 三巳の提案にリリは前のめりになって目を輝かせます。


 「お、おー」


 あまりの迫力と熱意に三巳は、耳と尻尾をピーンと張って後退ります。

 あまりにも嬉しそうにキラキラされるので、三巳は若干照れながら秋田犬に変身しました。


 「!!!!!」


 ワンコ特有の愛くるしさと円らな瞳に、リリはノックアウトされました。

 言葉も無くその場で悶えています。

 あまりに悶えて構って貰えないので、三巳はチョコチョコ近寄ります。

 その瞬間。目をキラーンと光らせたリリは、両手をワキワキさせて三巳に跳びかかりました。


 「わきゅーん!?」


 咄嗟の事で対応出来なかった三巳は、驚きの声を上げます。


 「はあああ~っ。ワンコだ~、ワンコ可愛い、ワンコ~」


 ピルピル震える三巳を他所に、リリは「わーしゃわしゃわしゃ」と三巳の全身をくまなく堪能しています。


 「はあ~、三巳の獣型はこんなに可愛いワンコだったのね~」

 「?」


 三巳のもふ毛をウットリと堪能しながらリリは言いました。

 それに疑問符が付いた三巳は首を傾げます。


 (あ、そーかー。

 リリまだ魔力が安定してないんだなー。

 誰も言ってないんだなー。態々言う事でもないしなー)


 三巳が鼻をフンフンさせながらリリの顔に近づけます。


 「はわ~、もふもふ~。ふわふわ~。

 三巳可愛いね~」


 思うところがあった三巳でしたが、リリに顔を撫で繰り回されて直ぐにどうでも良くなりました。

 だってリリの手は動物界のゴッドハンドなのですから。

 恍惚としする三巳は最早何も考えられません。


 「ああ、三巳ワンコ可愛い。

 こんなもの作って貰ったけど……遊ぶ?」

 「!わん!(フリスビー!)」


 満足行くまでモフリ倒したリリは、徐に平たい板を取り出しました。

 それに気付いた三巳は弛緩していた体を勢い良く立たせました。

 リリが作って貰ったのは、まさしくフリスビーだったのです。


 「わん!(投げて!)わん!(投げて!)」


 それで遊びたい三巳は、飛び跳ねながらリリの周りをグルグル回ります。

 そしてそれに悶えるリリ。はなぢ出そうです。


 「行くよ~」


 外に出たリリは勢い良くフリスビーを投げました。

 リリの手の動きを顔全体で追っていた三巳は直ぐに反応します。

 だっと駆けだしてあっという間にフリスビーに追いついて空中キャッチ!

 ストンと見事な着地を決めると、銜えたまま戻って来ました。

 リリの前でお行儀よくお座りして尻尾を大きく振ります。


 「~!」


 リリはいちいち悶えています。

 「取らないの?」と言いたげに首を傾げる三巳の口からフリスビーを受け取ります。


 「そ~れ~」


 そしてまた投げました。

 今度はちょっと高めに投げています。

 それでも三巳は高い位置で上手に加えて戻って来ます。

 このやり取りをロキ医師が止めるまで三巳とリリは、青春の汗を煌めかせてキャッキャうふふと楽しんでいました。


 この日はリリにとって最高の一日になりました。

 三巳も沢山遊んで貰ってとっても満足な一日だったようです。


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