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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
343/372

ゴール!

 「出口だー!」


 煌めく夕日が眩しい地獄谷です。

 三巳達がダンジョンから出て来ました。


 「おかえり三巳」


 そしてそれを野営の準備をしていたロダに迎えられました。


 「あれぇ!?ロダ達のチームゴールしてたん!?」

 「うん。ダンジョンが動いたから探索は後回しにして先に出といたんだ」


 そうです。勿論の事でロダも参加していました。残っていたチームの内の一つです。


 「ロダってば相変わらず遊び心が弱いって言うか、安全第一なんだもの」


 そうつまらなそうに言うのはミナミです。ロダと同じチームにいました。


 「ふふふ、怪我が無くて良かったわ」


 そう言って微笑むのはリリです。リリは危ない事には手を出さないので、救護班としてダンジョンを通らない道から来ていました。


 『ご無事で何よりです。三巳様』


 大きな翼を広げて影を作るのはサラちゃんです。リリを安全に地獄谷まで連れて来てくれたのです。どうやらネルビーが先回りしてサラちゃんにお願いしていた様です。

 そのネルビーは岩の上で鼻提灯出してピスピスと寝息を立てています。


 「そっかー。ロダはロウ村長と違うなー」

 「あははっ、そうだね。ロウ村長なら今頃全ての道を楽しんでそうだよね」

 「然もありなん」


 頷く三巳は改めて集まった山の民を確認します。


 「んーと。残ったチームはーっと」

 「4チームかな?」


 指折り数える三巳に、ロダが先んじて答えます。ロウ村長とレオを数えない辺り、状況をわかっています。


 「ぬぬ。けっこー多い。幾チームかはロウ村長が見つけてたとしても探し漏らしあるかも」


 唸ってダンジョンを睨む三巳は、警戒心剥き出しに耳と尻尾をピン!と立てます。


 「探すなら一緒に行こうか?」


 ロダが言って、三巳はその目をじっと見て、そしてリリを見ました。

 リリはそれにニコッとして返してくれます。

 三巳は神妙な顔で頷くと、


 「んじゃ行こう。もしも他のチームが揃ったらレオに言って吠えて貰えるか?レオの声なら三巳離れてても多分わかるから」

 「あら」

 「まあ」

 「ほほほほほ」


 その言葉に頬を赤くしてニマーとする女性陣です。


 「へえ」

 「ほお」

 「ふーん?」


 男性陣も軽く目を開いて三巳を見ます。ちょっとは何か変化があるのかもしれないと思ったのです。

 そんな様子に気付かない三巳はロダを連れ立ってまたダンジョンに入って行きました。


 「ぬ。また変わってる」

 「いきなり道が3つに別れてるね」


 入って直ぐに複数チームが待機出来る広場が形成され、その奥に道が3つ出来ていました。


 「三巳が出る時は1つだった」

 「僕達の時もそうだよ」


 三巳とロダは互いに顔を見合わせて、改めて道を確認します。

 三巳は左の道から楽しそうに尻尾を振って、ロダは右の道から警戒しつつ見える範囲は全てチェックして。


 「何か書いてある」


 そして見つけました。


 「三巳の方も書いてあるんだよ」


 三巳も見つけた文字を指差して伝えます。

 ロダが見つけた文字は、


 『最難関』


 です。

 三巳の見つけた文字は、


 『反対出口最短距離』


 でした。


 「迷路かな?」

 「遊園地なんだよ」


 お互いの見た文字を伝え合って、一拍置いて、出た言葉は同時でした。


 「遊園地?」


 遊園地は山には有りません。ロダが聞き返すと三巳は遊園地の楽しさを熱弁しました。


 「それは楽しそうだね。特にめりーごーらんどはリリが好きそう。三巳には作れないの?」

 「ぐにゅ。三巳、しがないOLだったから……。機械にも弱くて……。システムとかわからん……」


 スマホすら出て来たのは三巳が年を取ってからです。ガラケーですらお局と呼ばれていた時代なので、今の若い子の様にスマホでチョチョイと調べられないのでした。


 「ふうん?残念だね?」


 OLもわからないロダですが、三巳が残念そうなのはわかるので同情してくれます。


 「うぬ。遊園地作った人は偉大だったんだよ」


 特にでずにーは楽しかった思い出が詰まっています。きっと絶対レオと行ったら楽しいに違いないのにと、歯痒い気持ちで歯を喰いしばっちゃいます。


 「でも!ダンジョン楽しいな!」


 そんな三巳の山にも遂に念願の遊び場が登場しそうです。いえ、本来のダンジョンの用途は違うでしょう。けれども三巳にとってダンジョンは此処しか知りません。だからダンジョンといえばもう立派な遊園地なのです。


 「行きもな、燕の巣があったり槍が飛んで来たりしてな、でも皆にはまだまだの出来だったみたいで酷評でな、ダンジョン悲しんでたんだよ。この道もダンジョンの頑張りの証な気がするな!」

 「成る程。確かに僕達が出口に一直線で行ったら何だか哀愁を感じた気がした。そうか、ダンジョンって感情があるんだね」

 「!そう!そんな気がするんだよっ」


 ダンジョンは力の坩堝から発生すると言われています。

 そしてそれは精霊や妖精と通じるものがあります。

 ならばダンジョンにだって人格ならぬダンジョン格があるのかもしれませんね。

 三巳は納得に頷き、改めて別れ道を見ました。


 「村側出口一直線は無いよな。なら真ん中か右の道に行くんだよ」

 「問題はどっちに行くかだけど」

 「うぬ。三巳はロウ村長なら最難関行ってる気がするんだよ」

 「ははっ、確かにロウ村長なら自力で最難関に到達してそうだよね」


 という訳で最難関はロウ村長に丸投げです。

 三巳達は真ん中の道を行くことにしたのでした。

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