接待ダンジョン
三巳達は今、地獄谷目指してダンジョンをサクサク進んでいます。
「あ!ツバメの巣だ!沢山ある!」
いえ、サクサクは進んでいませんでした。滅茶苦茶ダンジョン観光を楽しんでいます。
「ツバメって何だ?」
「およ?ツバメ知らない?そいえば山で見た事無いなー。天然のツバメの巣は高級食材って聞いたんだよ。どーやって食べるんだろーな」
「食材?なら幾つか採ってくか?」
「あー!だめだめ!今子育て中みたいなんだよ。可哀想なのはメッ!」
巣から顔を出してピーチクパーチク鳴く雛達に、三巳は相合を崩して通せんぼしました。
その間にも親鳥達が三巳達を警戒して飛んでいます。番でしょうか。1羽は巣を警護する様に旋回し、1羽は嘴で捕まえた幼虫らしきものを雛に与えています。
三巳達は暫しその様子に絆されてから、
「あ。そろそろ進もうよ」
誰かしらが声を掛けて、親鳥達を刺激しない様に巣から離れてなるべく早くその場を抜けました。
また暫く行くと三巳の足元からカチリと音がして止まります。
「この感覚は昨日のやつ!」
いち早く反応した三巳が臨玉体勢で前をキッと鋭く見ました。
ヒュンヒュンヒュン!
そしてその横を何本もの槍が通り過ぎていきました。勿論一緒にいた山の民も巻き込んでです。
「危な!?」
「へや!?何今の!?」
難なく避けていた山の民は槍が飛んで行った方を見て、反対の壁に突き刺さっているのを見つけます。
集まっている中で一番の年長者がもう槍が出ない事を確認してから近付きます。
「槍かと思ったらニードルだ」
一本を抜き取って持って来ました。それを皆に回して見て貰います。
「あら本当、岩を削って出来たのかしら」
「そうじゃないか?ほら、丁度穴にピッタリだ」
最後に回って来て見ていた山の民が、槍が飛んできた壁に穴を見つけて差し込んでみました。するとピッタリ填まります。
「でも先端尖ってるわよ。出来は悪いけど」
「そうだな、歪だけど尖っているな」
「砕いて欠片になって落ちたんじゃないか?だからこんなにも不恰好なんだよ」
山の民がやいのやいの分析し、その度に三巳は何故かダンジョンから哀愁の念を感じ取りました。壁からグサグサ!っという音が聞こえた気さえします。
三巳は遠くを見やりそして目を瞑ってそっと壁を尻尾で撫でてやります。そうすればちょっぴし壁も落ち着いた気がしました。
「ええっと、こういう罠も所々あるから気を付けて先を行こうかなー。あ!でも玉の罠ならいつでも大歓迎なんだよ!」
三巳は壁をチラチラ見ながら妙な主張を始めます。
それに首を傾げた山の民ですが、三巳の玉好きは知っています。確かに喜びそうだと納得するのでした。
「さあ!次行こー次!」
大きく楽しく尻尾を振って、サクサク歩んで行けば又してもダンジョンが動く気配がします。けれども気にせず先に進めば丁度別れ道の一つが壁に塞がり、代わりに新たな道が出来る所に出くわしました。
「おおーっ、こうやって道が変わってるんだなー。あ!後ろの道塞がるから皆集まれー!」
キョロキョロ変わる様を観察していた三巳は、後ろの風の流れが変わったのを感じて両手で大きく手招きします。
山の民は誘導に従い三巳を中心に固まりました。
その直後に来た道は塞がってしまいます。
「これで先に進むしか無くなったな」
「どのみち帰る気なんて無かったろ」
「まあな!」
カラカラ笑う山の民に悲壮感は全くありません。何とかなる!……多分!の精神です。
「前後塞がったら天井破るしか無くなるから」
塞がった道を見た三巳が顎に手を当てて言うと、壁からビクッと怖がった気配がした気がします。
「……せめて道はゴールに続いてて欲しいんだよ?」
宥める様に優しく言うと、壁が物凄い勢いで頷いた気がします。しかも何故かこれ見よがしに道に光苔が生えました。更にしかも何故か矢印に見えます。
「……接待ゴルフはあんま好きくない……」
しょもんと尻尾と耳を垂らした三巳に、壁もしょもんと項垂れた(気がする)のでした。




