報連相で良い笑顔のロウ村長
レオを伴って村へ帰って来ました。
本来なら恐怖の対象のライオーガですが、三巳の話を聞いていたので誰も怖がりません。寧ろ女性陣がとても良い笑顔で三巳とレオを見て、親指立てたり小さく力瘤を作って大歓待です。
『流石三巳の民だな』
ちょっと怖い勢いに流石のレオも引き気味です。
一方の三巳は村に入るので人型に戻ろうとして「はっ」としました。そしてシュシュシュンとチワワ並みに縮こまると、股の間に尻尾を潜らせてクルンと丸めてしまいます。
耳までペションと下げてピルピル震えて涙目の三巳に、周囲は俄かにザワザワします。珍しい三巳の悲壮感に戸惑っているのです。
『どうした三巳。何かあったか』
レオは三巳に鼻を近付けるとツンツンと突きます。三巳から香る匂いも悲壮感が感じられるので心配です。
『三巳……。レオに会えたの嬉し過ぎて服破ってきちゃったんだよ……』
それに首を傾げるのはレオです。
何故ならレオの服は魔法で作られた物だからです。人型になる時には服も一緒です。
『魔法で作りゃ良いじゃねえか』
そりゃ尤もな意見もするってものです。
しかし山の民達は「「「はっ」」」としました。
「そう言えば三巳が魔法で服を作るの見た事ないわね」
「三巳姉ちゃんいつもスッポンポンで人の姿になるよ」
「でも言われてみりゃ、三巳の母ちゃん獣神は人型になる時服着てるな」
そして周囲の視線が三巳に集まります。
三巳は集まった視線に戸惑いアタフタします。
『え?え?服って魔法で作れるん?』
『……お前ホント何も見えてなかったのな』
呆れたレオはそれだけ言うと瞬きの間に人型になります。勿論服をきちんと着てです。
「俺が変身する時は何時も着てただろ」
その姿を見て三巳はガガーン!!と雷に打たれました。
『そう言えば!』
とは言えわかったとしても前世では魔法は無かったのです。服を魔法で作る方法がちっともわかりません。それに。
『でもお気に入りの合羽だったんだよ』
三巳用の雨合羽は服屋のロココが他国の衣装に触発されて作った品の一つです。三巳のモフモフを損なわない可愛らしさを追求した山の民一同納得の品でした。
けれどもその雨合羽もレオを前にした三巳には頭に入らなくなっていたのです。
三巳は折角作ってくれたのにと、申し訳なさで捨てられた子犬感満載です。折しも梅雨でビショビショに濡れた毛が物悲しさを更に強調しています。
「あら嬉しいわ。張り切ってデザインした甲斐があるわね!色違いやデザイン違いも沢山あるから着れなくなったら新しいの着てみてね」
ロココは三巳の側に寄り、毛皮を優しく撫でながらウィンクをしてくれます。
三巳はその言葉にもうすっかり笑顔が弾けています。
『沢山あるのか!?今?今ある??』
「まあ!うふふっ!なら雨宿りも兼ねてお店に行きましょ♪」
『わーい!行くんだよ♪』
という訳で三巳はレオの紹介をしながらロココのお店へ向かいました。勿論他の山の民達もついて来ています。
ロココのお店の建物は元から建ってあったもので、ヴィーナらしい雪山用の家屋です。けれどもロココとリファラからの移住者や、偶に来る行商人の知恵や力を借りて内装はとってもオシャレに仕上がっています。
三巳もマネキンの事をポロリと口にしたので、地球にあっても違和感無い服屋になっていて落ち着きます。
「さあ先ずは毛並みを乾かしましょうね」
ロココの合図に女性陣が三巳を取り囲んで奥に連れ去って行きました。脚元も泥んこ塗れだったのでミナミが抱えてリリがタオルを巻いて連れ去っています。
お店の入り口には三巳の肉球跡だけが残されました。
「さて、アタシは三巳に合う服を選ぶわよぉ♪」
楽しそうなロココは兎も角、女性のショッピングに男性陣は暇を持て余しています。
「レオと言ったか。ワシはロウだ。ヴィーナ村の村長をやっている」
レオを囲んだ山の民達は、ロウ村長を皮切りに自己紹介を始めました。
レオもグランの事や三巳に案内してもらった山の事を話します。
そしてその話に目を爛々と輝かせたのは勿論ロウ村長です。
「ダンジョンが出来たのか!がっはっは!これは今直ぐ行かねばならぬな!」
言うが早いか出て行こうとするロウ村長を、山の民達が総がかりで止めます。
「待て待て待て!今は三巳とレオのもてなしが先だろ!」
「ダンジョンってそう簡単に消えねぇって話だろ!後にしろ後に!」
「駄目だ!俺達だけじゃ止まらねぇ!誰か奥さんかロダ呼んで来てくれ!」
「任せろ!耐えろよ!」
「「「頑張るさ!」」」
その一連の様子にレオはポカンと見て、
「ははっ!こりゃ楽しい人達だな!」
そして快活に笑い声を上げるのでした。




