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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
33/372

変~身♪

 最近の三巳のマイブームは、変身です。

 前世の少女時代に憧れてた変身です。

 年を経て憧れが憧れで無くなった今、三巳を縛る常識という名の枷は無いのです。

 それはもう、手を変え品を変えの如くです。


 今日も今日とて三巳は変身しました。


 「にゃおーん♪」


 どうやら今日はニャンコな気分の様ですね。


 「にゃふー」


 三巳はニャンコ姿をクルクル回りながら観察しています。


 (うーん、ちゃんと猫の尻尾だなー。

 コアラになった時は獣神の尻尾付いてたし、尻尾無い生き物になると獣神の尻尾が残るのかな?)


 クルクル、クルクル。ニャンコな細長いフサフサ尻尾を追い掛けながら、三巳は考えます。

 途中で何でも良くなって辞めました。

 因みにどんな変身をしても瞳は一緒ですが、鏡を見ていないので気付いていません。


 「にゃー」


 三巳はニャンコならではの動きを再現すべく、駆け出しました。


 ニャンコになったらやってみたい事その1。


 「にゃん」


 高い木に駆け登ってから飛び降りてくるりんぱ。


 三巳は綺麗に着地しました。


 「にゃふー」


 三巳は満足そうに猫胸を反らしました。

 尻尾も誇らしそうにペシペシ地面を叩いています。

 自己自慢に満足したら次に行きます。


 ニャンコになったらやってみたい事その2。


 「にゃにゃにゃにゃ」


 鋭い爪をシャキーン!と出してカリカリカリカリ。


 三巳は近くの木で思いっきり爪研ぎをしています。

 三巳の周りには削られて鰹節の様になっていく木がこんもりと溜まっていきます。


 キシ……メキメキ……。


 三巳が夢中になって研いでいると、不穏な音がしてきました。

 それでもなお、爪研ぎをしています。

 むしろどんどん速くなって、最早残像しか見えません。

 少し離れて見ると木が斜めになっていきます。

 けれど夢中になっている三巳は気付きません。

 次の瞬間。


 バキバキバキー!ど―――ん!!


 木は倒れてしまいました。三巳の方へと。

 勿論夢中になり過ぎて周りが見えていなかった三巳は、諸に頭上に直撃しました。

 これがギャグマンガだったら目ん玉飛び出ている事でしょう。


 「みゃふー!?」


 三巳はビックリして肉球で頭を抑えて飛び上がりました。

 ちっとも痛くは有りませんでしたが、頭を抑えたままあちこち飛び跳ねます。

 そしてササっと木陰に隠れて、そろりと倒れた木を覗きました。


 (にゃはー。ビックリしたー。削り過ぎたのかー。木には悪かったなー)


 三巳は木陰から出ると残った根元にまた大きく育つ様、魔力を込めました。

 これで太陽の光が上手く入らなくても、また大きく育つ事でしょう。


 (倒れた木は後で大工か家具屋にでも持ってこー)


 三巳は次行こー次。の精神で、別の場所に移動しました。


 ニャンコになったらやってみたい事その3。


 「にゃふ~ん」


 狩り……はネズミさんが可哀想なのでパスです。

 三巳は村の陽当たりの良い縁側までやって来ました。

 縁側ではお婆さんが座ってお茶を飲んでいます。


 「おやまあ、三巳かい?」

 「にゃ」

 「何だい?猫の真似事かい?」

 「にゃ」


 どうやらお婆さんは目が良く見えない様です。

 神気と気配だけで三巳が近くに来た事を感じ取ります。

 そんなお婆さんの膝上に三巳はピョンと軽快に飛び乗りました。

 そして暫く膝上をクルクル回って、ココと決めた処でストンとまぁるく寝転びました。


 「おやおや、ずいぶん小さくなったねえ」


 お婆さんは膝の上で欠伸をかく三巳猫の頭を撫でました。

 三巳はポヤポヤしながら穏やかに撫でるお婆さんをチラリと仰ぎ見て、直ぐに顔をクロスした腕に乗せて目を閉じました。

 陽射しはポカポカ暖かく、お婆さんのお膝もポカポカ暖かく、撫でり撫でりと撫でてくれるお婆さんの手もポカポカ暖かく、三巳はうつらうつらとして次第に夢の中に旅立って行きました。


 目が覚めたのは空が橙色に染まってからでした。

 お婆さんを仰ぎ見ると、お婆さんもすっかり寝てしまっていました。

 このままでは風邪をひいてしまうと思った三巳は、人型に戻ってお婆さんを起さない様に布団まで運んであげました。

 

 「ミーちゃんこれからも長生きしてなー」


 そう言って三巳はそっと部屋を後にしました。

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