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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
32/372

第1回パンパーティ開催

 ダム湖が出来て数日後のよく晴れた日。

 この日は兼ねてより計画していた、パンパーティの日です。

 村の広場には、家具屋のロナとミキが張り切って作ったテーブルが円を描く様に並んでいます。

 その上には、ミクスが作った沢山の種類のパンが並んでいます。この日の為に張り切って考案したパーティ用の限定パンもあって、山の民達の興奮は最高潮です。

 テーブルには、パンだけじゃ偏ると、果物や飲み物も置かれています。


 「さて、準備は整ったな。

 ご馳走を前に堅苦しい話は無しにしよう。

 今回はミクスによるリリの歓迎パンパーティだ。皆んなリリに感謝して美味いパンを味わおう!」


 ロウ村長がそわそわとしながら挨拶をして、言い終わるや我先にと目的のパンに手を伸ばしました。

 それを合図に山の民達は思い思いにパンを手に取ります。


 「やあリリ。約束のパンはコレだよ」


 リリの元にはミクスが約束のパンを籠に入れて持ってきました。


 「わあ!可愛い!これは三巳パンね!」


 籠の中を見て、リリは両手を合わせて喜びます。


 「なー、見事な耳だよなー」


 未だに勘違いしている三巳です。きっと誰かが指摘するまで気づく事は無いのでしょう。

 三巳とリリはパンを一つづつ手に取ります。


 「「いただきまーす!」」


 言うが早いか、大きな口を開けてパクリと食べました。

 モグモグと味わうと、三巳の目もリリの目もキラキラと輝いていきました。


 「んまーい!」

 「美味しい!」


 ゴクンと飲み込むと2人揃って絶賛です。


 「クリームパンだー♪」


 三巳パンの中身はカスタードクリームでした。

 三巳はバッサバッサと尻尾を振って夢中で噛り付きます。


 「これ、クリームパンって言うのね。

 とっても美味しいわ」


 凄い勢いで食べていく三巳の隣で、リリは一口づつ味わって食べています。


 「おかわりー!」

 「くすくす。沢山作ってあるから急いで食べなくても大丈夫だよ」


 あっと言う間に食べ終わって直ぐにミクスから三巳パンを受け取りました。


 「他にも限定パンもあるから、良かったら食べておくれね」

 「ありがとう」


 籠毎三巳に渡したミクスは、そう言って他の人達の元へ行きます。

 リスの頬袋の様にパンを詰め込んで喋れない三巳の分も合わせて、リリはお礼を言って頭を下げました。

 思い思いにパンや果物に手を伸ばして、和やかに談笑している山の民達を見るリリの目も、自然と和やかにキラキラと笑みが溢れました。


 「これ、目を作ったらもっと可愛くなりそう」


 三巳パンを矯めつ眇めつしながらリリはポツリと言いました。


 「!モグモグモグモグごっくん。

 おお!それいいなー。どっかにカカオ生えてるかな?」


 耳聡く聞いた三巳は、口一杯のパンを飲み込むと賛同しました。

 思い描くのは前世のパン屋でよく見かけたキャラクターパンです。

 三巳パンを耳パンだと思っている三巳は、目と鼻を描いたらワンコかニャンコになると思いました。似た様なものものですが。


 「山に無かったら外を探してもいいしなー」


 楽しそうに語る三巳とは対照的に、リリはそれを聞いてしゅーんと気持ちが沈んでしまいました。


 「外は危険な事がいっぱいよ……」

 「はは、そーだなー。

 まー、他所の人間には近づかないからなんとかなるさー」

 「うん。でも行かないに越した事ないわ」


 泣きそうに見つめるリリに困った三巳は、暫くは山から出ない方が良さそうだなーと、から笑いします。


 「まー、このまま食べても美味しいしなー」

 「うん」


 三巳が取り敢えず外に行かなそうな事に安堵して、リリはやっと笑みを取り戻すのでした。




 この日勃発的に開催されたパンパーティは、大盛況のまま、あっと言う間に売切れて終わりを迎えましたとさ。

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