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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
319/372

雪山巡回で気になる噂?

 雪深く。さりとて空は快晴の暖かな日の事です。

 ここ毎年留守がちだった三巳は山の巡回で情報集めをしています。


 「サラちゃんとチロチロが?」


 雪深い今、半冬眠している2頭に変わって小鬼達が色々と教えてくれます。


 「ぐがっ。寒さが厳しくなる前まで珍しく揃う事が多かったっす」


 三巳がお土産にと持って来たバナナやココナッツを目の前にお話が進みます。

 勿論持って来た本人も目の前にお茶受けと出されているので遠慮なく頂いています。


 「何してたんだ?」

 「ぐが~、ざてなぁ。おで達もリヴァイアサンにはあまり関わらないっすからね」


 緊急時や三巳やリリの前なら共闘も仲良くもしますが、平時は弱肉強食の関係です。君子危きに近寄らずです。

 三巳もそれを悟って頷き、そして首を傾げます。


 「う~ぬ。ま、何かあればサラちゃんなりチロチロなり教えてくれるか」


 当人達の事は当人達に聞くのが一番です。他者の言葉は所詮外側からしか見えていない、見た人によって印象の違う何かだからです。


 「ほんじゃコアッち達は何か変わった事あった?」

 「ぐげっ。おで達はいつも通りっすよ」

 「ぐぐが。ああ、でも今年は三巳神様も母神様も居なかったから結界の外は騒がしかったっす」

 「外?どーしたんだろ」

 「ぐげー……。おで達篩の森は近寄らないから詳しくは知らないっす。でも大鬼達が言ってたから確かっすよ」

 

 そこまで聞いて三巳は小鬼達と別れます。

 少し前に母獣に散々怖い目に遭わされた三巳は警戒心バリバリで大鬼に会いに行きました。


 「って聞いたんだけど、何があったん?」


 大鬼の寝ぐらで三巳はおしくらまんじゅうの様に挟まれて訪ねます。


 「いや、その前に外出ましょう」


 狭い洞窟で身を寄せ合って昼寝をしていた所に三巳が挟まって来たので、手狭感が否めません。

 三巳としては一緒にお昼寝するのも吝かでは無かったのです。ただ三巳の神気を間近に感じて大人しく寝れる程、大鬼達が図太くあれなかっただけなのです。


 「で。結界の外ですか」


 改めて洞窟の外に出た三巳達は焚き火に当たって温まります。

 三巳は折角だからと串に刺したチョコレートを火に当てています。焼きチョコ出来ないかなとでも思っていますが、普通に溶けています。

 三巳は溶けて落ちそうになっているチョコレートに、ガーン!と顔を青褪めながら頷きました。そして慌ててクッキーを取り出して溶けたチョコレートを乗せています。


 「2柱の神族の気配が遠ざかっていたのです。興味本位で近付く者達は多い様に思いました。何時もより集まった為に鉢合わせた者同士で諍いが起きる事もしばしばありましたね」


 大鬼は三巳に倣って、チョコレートを溶かしてクッキーに乗せながら教えてくれます。それを口に含んだら好きな味だったのか、パァッと顔が蕩けています。


 「諍い……。こあいのは嫌なんだよ」


 三巳もチョコレート乗せクッキーを食べて、はにゃりと顔が蕩けます。心の中は怖いと美味しいの鬩ぎ合いです。


 「ご安心ください。結界の外ではありましたが、ウィンブルドンの兵士が定期的に見回りをしているので大事には至っていません」


 酷い事にはなっていなくて三巳も一安心です。これで漸く美味しいだけに集中出来るってものです。

 それ以外の話も落ち着いて聞けました。特に変わりが無いのでこれも一安心です。

 三巳は大鬼達とも別れて他のモンスター達にも近況を聞いて回りました。そして特に変わり映えはしませんでした。

 強いて言うならどこかしこでもサラちゃんとチロチロの話が出た事が気になります。


 「サラちゃんもチロチロも冬は殆ど寝てるしなー」


 とはいえ気になるので足は向かっています。

 そして思った通りに川底にいるチロチロは隙間に埋まって寝ていました。


 「サラちゃんは精霊だし、起きてる可能性もある。多分。きっと。だといーなぁ」


 希望的観測を胸に、三巳は火口へ向かいます。

 そして希望は儚く消え去ります。

 サラちゃんは風呂場で寝落ちするが如く、溶岩に身を沈め、へそ天で顔だけ岩肌に預けて寝ていました。気持ち良さそうに鼻提灯まで見えています。


 「うぬ。寒い日の入浴は気持ち良いんだよ」


 気持ちはわかるので残念ではありますが納得して頷きます。

 そして気持ち良さそうなのが伝播したので、この日は火口近くの温泉でまったり過ごしたのでした。

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