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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
315/372

お土産いっぱい

 「レオー!」


 三巳は今、宙を飛んでいます。


 「おい。まじか」


 レオはそんな三巳を見上げて苦笑しています。そして三巳の落下地点を予測して移動しました。

 そうです。三巳は船が港に着いた途端、橋を渡すのももどかしく飛び降りたのです。両手足を目一杯広げて。さあ受け取ってと言わんばかりに。

 レオはそんな気持ちを汲んでしっかりと受け止めて抱き締めてくれます。

 その温もりに満足気に「むふー」と鼻息を漏らした三巳は尻尾をブンブカ振りました。勿論広げていた両手足はガッチリとレオを囲んで離しません。


 「おかえり」

 「ただいまなんだよ!」


 レオが背中をポンと叩いてやっと地面に足を着けました。

 尻尾が振れるのは止まらない三巳は、フンスフンスと鼻息が荒いです。


 「お迎えしてくれるって思わなかった」


 帰れる日がわからなかったので約束もしていません。

 なのに待っていてくれたレオに、三巳の心はキラキラが溢れて止まりません。今にも気持ちを爆発させそうな三巳です。


 「ジャングルから気配を感じたからな。三巳の気配はわかりやすい」


 レオは三巳の頭を撫でて落ち着かせながら言います。

 三巳は気持ちの良いレオの手に頭を押し付けグリグリしながら思います。


 (三巳わかりやすいのか!)


 神気は抑えていますが気配は抑えていません。その事に気付いていない三巳は尻尾を鼻に近付けてクンカクンカと嗅いでみます。勿論気配はわかりませんでした。


 「潮の香りしかしない」

 「気配は匂いじゃねえからな」


 レオは呆れ笑いをしてポンポンと頭を叩きます。そしてふと三巳の背後に立つ美女母を見ました。


 「ま。戦いに身を置いてなけりゃ気配読むなんざしないから、な」


 美女母の笑っている様で怖い笑顔に、何となく弁明してあげます。それで三巳へのお説教が無くなるかまではわかりません。しかし背後の怖い気配には敏感な三巳の青い顔は幾分か良くなりました。


 「み、三巳レオにお土産ある!」


 三巳は話を逸らそうと不自然に尻尾収納に手を入れます。暫くゴソゴソ動かして、お目当てを見つけると


 「てってれー♪」


 と言って取り出しました。


 「猫じゃらし」


 レオは三巳の手に持つ猫じゃらしに笑みを凍らせました。


 (猫だと思ってんのか)


 確かにネコ科では有ります。しかし戯れないレオは貰っても困ります。飾る場所も無いです。


「あ。間違った。レオにはこっち」


 しかし杞憂でした。三巳は自分の手の物を見て目を丸くすると直ぐに別の物と取り替えます。


 「バスボか。珍しい」

 「レオ知ってたのか」

 「まあな。交易品はある程度履修済みだ」


 人を知る事はジャングルを守る事にも繋がります。特に交易品はジャングルの密猟にも繋がるのでちゃんと学びました。


 「何年か前に店に置いてあったぜ」


 グランの港は唯一の交易玄関口です。他所からの商人は、ここぞとばかりに珍しい物を売り出しています。

 けれどもレオは買っていないので手にするのは初めてです。

 三巳からバスボを受け取ると物珍し気にバスボを操りどんな物がを確かめています。

 すかさず三巳がもう一個取り出してドリブルを披露しました。


 「こうやって遊ぶ」


 ムフーと満足気にドヤる三巳ですが、別にバスボはそれ用のボールではありません。遊具扱いされてはいても一応実なのです。

 レオは実に決まった遊びが無いのはわかっていましたが、三巳があまりにも楽しそうなので乗ってあげる事にしました。


 「成る程ね。こうか」


 バスバスと見事なドリブルを披露したレオに、三巳は拍手喝采です。


 「凄い!レオ初めてなのに上手!」


 バスケっぽい動きを見ると何となくシュートもして欲しくなります。

 三巳は魔法のプロジェクターマッピングでバスケのゴールっぽい物を描きました。


 「レオ!あれの輪の中に投げて上から通すんだよ!」


 ドリブルをしていたレオはその姿勢のまま輪を見ます。


 (また訳のわからない物作ったな)


 そうは思っても可愛い妹分に期待の目で見られて心の中で肩を竦めます。そして輪との距離と高さを把握して、ドリブルを止めるとポイッとバスボを投げました。


 「え!?」


 近くまで行って投げると思っていた三巳はビックリ仰天です。何故ならレオと輪の距離は、3ポイントの位置より遠かったのです。

 三巳はポカンと大口を開けてバスボの行く末を凝視で見守ります。瞬きも出来ません。

 バスボは綺麗な軌跡を描いて見事に輪を潜り抜けました。

 港にはポーンポンポンとバスボが跳ねて転がる音だけが響きます。


 「こんな感じか」


 レオのなんて事ない風に言う声が聞こえて三巳はハッとしました。


 「あー!凄いぃぃっ!レオかっちょいー!」


 大きく勢いよく拍手をしてその場でピョンピョン飛び跳ねます。

 あまりに激しい拍手に港に居合わせた人々も何となく拍手してくれました。お陰で港に拍手の音が響いています。

 流石に少し恥ずかしかったのか、レオは短く咳払いすると三巳の頭に手を置いてジャンプを止めます。しかしその場で早足踏みを初めて興奮する三巳に、恥ずかしいのも馬鹿らしくて笑ってしまいました。


 「満足したか?」

 「うにゅ!レオかっちょ良くて大好きなんだよ!」


 レオへの好感度が爆上がりの三巳に、レオも優しく笑って頭を撫でてくれるのでした。

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