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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
31/372

取ってこーい!

 「そっそれわ!」


 ある日の事です。

 村の広場では三巳が両目をかっ開き、驚愕に震えていました。


 「おおぅ。これな、なんかよく伸びる素材が手に入ったから作ってみた」


 青年が「へへ」と笑い鼻を擦りました。


 「ボールぅぅぅー!!」


 三巳は青年が言い終わる前にボールに飛びつきました。


 「はぅぅっ。この丸々しさっ、この弾力っ、この抗い難い魅力ー!」


 三巳は尻尾をブンブン勢い良く振り回します。


 「はうあうっ。本能がっ、本能が訴えかけるー!」


 三巳は、自分の体くらいあるボールにガッシと掴みかかり、戯れています。


 「はうっ、あうっ。

 人型より獣型で戯れたいー。

 けど、本性だとボール潰れるー」


 三巳はボールに戯れながら、葛藤しています。

 そもそも三巳の本来の姿は大きな大きなフェンリルに似た獣神です。ボールどころか村まで危ないです。

 それでも最大限本能の赴くままに遊びたい三巳は、目をグルグルと回しながら妙案を巡らします。


 「そーだ!人型になれるなら、他の動物にもなれるよね」


 言うが早いか、三巳は人型を取る時のように、変身しました。

 現れたのは可愛い可愛いワンコです。

 三巳は真っ白な秋田犬になったのです。


 「わふわふ、きゅきゅーん!」


 三巳は泥んこにまみれる事も厭わず、一心不乱にボール遊びをしました。

 尻尾はもう既に高速回転の域に達しています。


 「あっはっは!こりゃいい!因みに更にちっと余ったからちっこいのも作ってみた」


 青年は徐ろに懐から野球ボールサイズの球を取り出しました。

 その時です。村に一陣の風が吹きました。

 青年の手に乗っていた球は、風に飛ばされてしまいます。


 「!わおーん!」


 それを見た三巳は、球を追い掛けて駆け出しました。

 球に追い付くと飛び付いてガブリと咥えます。

 そして青年の元へ駆け戻りました。


 「ばふっ」


 青年の元でお座りをした三巳は、球を加えたまま人吠えし、口を青年に押し付けます。


 「お?おお?ありがとな。三巳」


 青年は球を受け取ります。

 すると三巳はその場でクルクル回って「わん!」と人吠え。キラキラした目で訴えかけます。


 「おう?えーと?もしかしてこれで遊びたいのか?」

 「わん!」


 首を傾げて青年が問うと、そうだとばかりに尻尾を振って吠えました。


 「あー、こうか?」

 「わおーん!」


 しどろもどろになりながら、青年が球を投げると、三巳はそれを追い掛けて駆けます。

 そして球を加えると戻って来て球を返すのです。


 「わん!」


 球を受け取って暫く球と三巳を交互に見ていた青年でしたが、クルクル回って催促をされたのでもう一度今度はもっと遠くに投げました。

 それを追い掛ける三巳。

 青年もなんだか楽しくなって色んな所へ球を投げました。

 いつしか周囲には人だかりが出来て、皆んなで球を投げて三巳を愛でました。


 「いやー、良いもん見たわー」

 「本当、三巳犬可愛かったわね」


 取ってこーいの魅力にはまった山の民達は、今日も平和に笑顔に満ちているのでした。




 「ロナ、また遊んでなー」


 最後に三巳にお願いされた青年は、その後張り切って多くの遊具を作りだしましたとさ。


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