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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
305/372

クロの回想 続きの7

 図書館には食べる所が無いらしく、役場で配給された物を食べる。食べながら読んだものについて話し合う。


 「何かあったか?」

 

 ガリオンの問い掛けに私は首を横に振った。


 「有名な神族からレアな神族までの図鑑ばかりだったにゃ。島神様の資料は詳しい事は書かれていないし、愛しい神様に至っては載ってすらいなかったにゃん」

 「神族の本なんて図鑑か物語ばかりだからな。俺の方もサッパリだ」


 聞くと歴史書にも災害の酷さが書かれている位で、それを収めた話は今の所見つかっていないそうだった。


 「よう」


 進展のない話に項垂れていると、冒険者達から情報を集めていた人族が片手を上げてやって来た。

 

 「ようリッツ、その様子じゃ良い話聞けたらしいな」


 ガリオンが手を上げて返し、ニヤリと笑った。

 リッツと呼ばれた人族は頷いて空いていた席に座る。


 「俺達は運が良い。偶々有名は旅の冒険者チームがいた」

 「旅の冒険者は情報通が多いと聞くが矢張りそうなのか」

 「ああ、何でも遠い昔に、ここより遠い地で1人の女性を巡る争いが起きて甚大な被害を齎したらしい。あまりの酷さに女性が仲間達と力を合わせて他の神々に請い願ったんだ。するとその悲痛な声を聞いてくれた力ある神族が仲介に入り、その場を収めてくれたらしい」

 「まるでどっかの国の教会みたいな話だな」


 教会とは神族を祀る組織らしい。島神様を大切にしている私達も教会になるのだろうか。


 「その国の話だ。そもそも教会とやらが出来るきっかけとなった話で、以来その助けてくれた神族を祀ってるんだと」

 「へえ?じゃあその神族はそこに住んでるのか」

 「いや、その神族は遠の昔にその地を離れたんだが、教会だけが力を持ってしまったらしいぞ。というか、その神族が離れたきっかけが教会の有り様が嫌な風に変わってしまったからだと、冒険者達の間では有名らしい」

 「うわぁ。まあ、そりゃ初めの人達は鬼籍に入ってもういないだろうし、残った人達が同じ訳ないからな」


 うんうんと頷くガリオンにリッツ。この街には神族がいないのだろうか。

 疑問に思い首を傾げているとガリオンが困った様に笑った。


 「普通は神族ってのは人前に滅多に現れないんだよ。俺達とは有り様が違うからな」

 「島神様はいつでも側にいるにゃん」

 「あそこはな……まあ、そういう神族もいるってだけで。てかそれ止めさせようとして神族同士の言い争いという名の災害が起きてるんだろ」

 「うにゅ。困ったにゃん」


 項垂れて目の前の冷めたお茶を見つめる。猫舌には丁度良い温度になっただろうか。落ち着ける為にも少しづつ飲んだ。その間にも解決案が目の前で繰り広げられている。それを掻い摘んで考えれば、


 「要は他の神様にお話聞いて貰うにゃ」


 という話に落ち着くと思う。


 「だがその他の神族が何処にいるかが問題なんだよ」

 「?昔の人達は探してお願いしたにゃん?その間争ってた神様達も付いて来てたにゃか?」

 「うん?いや、んな訳、無い。か?」

 「だよな?て事は祈る場所は何処でも良いって事か!」

 「そうだよ!神族達は耳で言葉を聞いてる訳じゃないって書いてあった!心の声を聞くんだ!」


 ガリオンとリッツが天啓を得たりと喜色を描き、ガタン!と勢い良く立ち上がった。私も飲み易くなったお茶を飲みながら神様に願う。


 「島神様と愛しい神様の仲直りのお手伝いして欲しいにゃん」


 届くかわからない願いに、耳をピクピクさせてしまう。

 島神様にお願いする時はお願いと言えば叶えてくれた。他の神様にそれが通じないとは思わなかった。

 ふと視線を感じて目線を上げればガリオンとリッツと司書が引いた目で私を見ていた。

 意味が分からず首を傾げる。


 「うん。まあ、あの島の奴だからな」

 「せめて場を設けるとか無かったのかな」

 「極めて珍しいですね。是非詳しく聞いて文献に残したいものです」


 言いたい事はわからないが、何か他とは違う事をしていたのだと感じた。島で外へ行きたいと言った時の皆の反応と似ていたから。

 ちょっと悲しくなって耳と尻尾が下がってしまう。


 「あ!いや!全然悪くないからな!?」

 「そうそう!猫獣人族がやるとなんか癒されるしな!?」

 「それを言うなら犬獣人族もそうですよ」

 「あれだ!要はモフモフは癒しだから良し!」


 悲しんだのが伝わったのか、人族達は慌ててフォローしてくれた。それにホッコリと嬉しくなって笑みが溢れる。


 「取り敢えず、礼儀も必要だと思うし、俺達流のやり方で場を作るがそれでも良いか?」

 「勿論にゃ」


 確かに今の願いが聞き届けられたかわからない。少なくとも今はまだ外の様子は変わっていなかったのだから。


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