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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
30/372

緊急!山の防衛チーム結成。

 梅雨の雨が何日も何日も降り続いています。

 今日も雨が降る中、村はいつもより騒然としていました。


 「それじゃあミーティング通り三班に別れて行動する。

 各班のリーダーは随時報告を忘れない様に」


 ロウ村長は雨合羽を羽織り、先頭を切って歩き出しました。

 その後ろを其々の班が、間を空けて付いて行きます。


 「一班異常無し」

 「二班異常無し」

 「三班川の水位が予想以上に上がっている。

 川より高台を行く事を提案する」

 「一班了解」

 「二班了解」

 「三班、詳細を教えてくれ」


 雨が降り続いて泥濘む山道を、山の民の防衛チームは注意深く進んで行きます。

 川の近くを進んでいた三班が、川の異常を報告し、遠回りにはなるけれど高台ルートへと進路を変更しました。


 「川は氾濫しそうか?」


 ロウ村長は注意深く進みながら、三班に近づいて聞きました。


 「ミズキどうだ?」


 三班のリーダーが更に水魔法の使い手に聞きました。


 「そ~ね~、ん~今はまだ大丈夫~。

 でも~土砂崩れが~起きたら~駄目~」


 ミズキは水の流れを読んで答えます。


 「そうか。結局のところ土砂崩れを防ぐよりないという事だな」


 ロウ村長は頷き、先頭に戻って行きました。

 一行は更に上へと進みます。


 「ここ、水が漏れてる」

 「一班水漏れ確認」


 山頂側を確認していた一班が斜面から水が噴き出しているのを確認しました。


 「そうか。やはり限界まで来ているな」


 ロウ村長は落ち着いて、注意深く辺りに探索魔法をかけました。


 「一班、ここより上に向かい余分な水を抜き出してくれ」

 「一班了解」


 ロウ村長の指示に一班は、探査魔法で地下を確認しながら上へと向かいました。


 「三班崖の向こう側の様子を探ってくれ」

 「三班了解」


 ロウ村長の指示に三班は、飛翔魔法を使い上空から崖を確認しながら向こう側へと渡りました。


 「二班このままワシに付いて来てくれ」

 「二班了解」


 残った二班はロウ村長と崖まで進みました。


 「大分崩れてるな」


 崖を確認している時にも、ガラガラと崖が崩れています。


 「三班確認取れた。

 こちら側も大分崩れている」

 「そうか。なら崖の周りに壁でも作るか?」

 「いや、いっそのこと脆い大地を押し固めて椀状にしたらどうだ?」

 「成る程。地下水はどうする」

 「一旦纏めて上空に留めて、椀が出来たら入る分だけ貯めるか」


 ロウ村長達は崖をグルリと指し示しながら相談します。

 ここに三巳がいたなら「それはダムじゃないか」と言ったことでしょう。

 三巳は村にお留守番なので知る由もありませんが。


 「防衛魔法椀状に発動」

 「了解」


 ロウ村長の指示で各班の防衛魔法の使い手が魔法を発動しました。

 崖のこちら側とあちら側と上側から発動された魔力の壁は広く横に伸びて一つに繋がりました。


 「よし。地下水を吸い出して上に留めてくれ。

 決して慌てるなよ。状況に合わせて落ち着いてやるように」

 「了解」


 崖のこちら側とあちら側の水魔法の使い手が、大地が決壊しないように慎重に地下水をくみ上げます。


 「結構な量があるから時間掛かりそうね」

 「三巳なら一瞬だけど、村の防衛の為に残って貰ってるからな」


 ロウ村長は失敗するつもりなんて有りませんが、絶対がこの世にない事もわかっています。

 三巳には防衛が間に合わなかった時の為に村に残って貰いました。

 三巳も村が無くなるのは嫌なので了承したのです。


 「大分抜けたか。

 うむ、良かった。地面もこれなら大丈夫そうだ」


 ロウ村長は、地下水の無くなった地中を探査してホッと息を吐きました。


 「矢張り些細な事でも気になったら動くが吉だな」


 空中に溜まった大きな大きな水溜りを見上げて、皆が「全くだ」と笑いました。


 「ようし、仕上げだ。

 脆くなった大地を圧縮した後、他の丈夫な大地と固定」

 「了解」


 待ってましたと地魔法の使い手達が、腕を捲って気合を入れます。


 「どうりゃあああ!」


 気合の入った掛け声と共に、脆い大地を椀状に圧縮していきます。

 そして崖があった場所は大きく抉れて、その下に人工のクレーターが出来ました。


 「うむ。強度も山との接合もこれなら大丈夫だろう。

 水を少しずつ落としてくれ」

 「了解」


 ロウ村長の合図に上空に留めていた大きな大きな水溜りを蛇口の水の様に椀に落としていきます。

 抜き出した時と違って、貯める行為は直ぐに終わりました。

 椀も深く広く作ったので、水が余る事は無く、むしろまだまだ貯められそうです。


 「よし、最後に川と繋げる出口を設けたら村に戻ろう」


 そうして出来上がったまごう事なきダム湖を後にした山の防衛チームは、村に残った山の民達に持て囃されました。


 後日件の椀を見た三巳が「ダムじゃん!」と言った事により、村ではそこをダム湖と呼ぶようになりました。


 三巳は「まんまだなー」と笑いましたとさ。


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