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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
296/372

お猫様へは突進するべからず

 「はぁ……尊い……」


 今日も何処かで誰かが呟く声が聞こえます。

 三巳は今日も今日とて島散歩中で、最早慣れた光景に反応を示しません。


 「ちゃんと見ればあちこちに猫獣人以外の人達が隠れてるんだよ」


 寧ろリアルなウォー◯ーを探せを楽しんでいます。

 彼等は猫獣人達の生活を乱さない様にあまり表に出て来ません。来るのは猫獣人達から構われに行った時だけです。

 とはいえ麦栽培を仕事としている人達もいます。なのに普通に目に入るのは猫獣人だけです。他の人達は見切れているのです。


 「逆に凄い」


 なのに仕事は猫獣人達より的確で素早いです。視線は常に猫獣人に向けられているのにです。

 三巳はふと気になって軽い足取りで近くの木の天辺に飛び乗りました。

 風に揺られる脆く不安定な木の先端で、しかし危な気なく立っています。まるで忍者の様な身軽さで猫獣人の里をグルリと見渡しました。


 「おおっ、やっとるやっとる」


 そして見つけた光景にニンマリ犬歯を剥き出しにして笑います。

 視線の先では、先日教えたばかりの猫じゃらし無双を子猫達にしている人達がいます。

 ハンターモードの子猫達に引っ掻き傷を付けられているのも見えますが、本人達は至って幸せそうです。


 「んむ。本人達が良ければそれで良い」


 大きく頷き下の安全を確認したら、ピョイと飛び降りてスタッと高さを感じさせない着地をしました。

 それを見た猫獣人以外の人達がザワ付きます。


 「んえ?何?」


 行儀悪いと怒られると思ったのか、三巳の耳がショボンと叱られ待ちになってしまいます。眉尻も下がって何が来ても良い様に若干構えています。


 「「「猫……」」」


 聞こえた言葉は小さな呟き過ぎて、身構えていなければ聞き漏らしていた程です。

 三巳は聞こえていたのに空耳かなと少し思ってしまいますが、視線が有弁に語っているのを感じ取れました。


 「三巳、父ちゃんが猫獣人だし、母ちゃんは多分狼だから」


 未だに自分を犬かもしれないと思う時がある三巳です。母獣も実はと少し疑っていますが、紛う事なき狼の神です。この場に母獣がいたならば雷が落ちていた事でしょう。

 しかしこの場には母獣がいないので話は進みます。


 「お猫様……。師匠もお猫様だった!」


 誰かの叫びがさざなみとなって広がっていきます。するとサワサワと感じる視線に熱が篭り、三巳は思わず全身の毛を下から上へとザワザワザワッと逆立ててしまいました。


 「「「っっっ!尊いっ!」」」


 その姿に見ていた人達が鼻を押さえて蹲ります。


 「え?父ちゃん様って、あの黒ニャンコよね?」

 「三巳ニャンコ様はターキッシュアンゴラっぽいな」

 「いやいや、サイベリアンも捨てがたい」

 「何でも良いよ!尊ければ!それよりっ」

 「「「ああっ猫吸いしたいっ」」」


 蹲りながら行われる猫好き達の会話に、三巳は全てを悟り、そして諦めの境地に至った菩薩の顔になりました。

 徐に歩き出した三巳は、良さげな木陰を見つけるとコロンと横になります。そして視線の元へと視線を飛ばして頷きました。


 「尻尾なら……良いよ」


 許可をするや否や、猫好き達の目がキラーン!と光ります。そして手が空いているものから人族の最速ではないかという速さで三巳の元へとやって来ました。やって来ると同時に尻尾の毛に顔を埋めています。


 「うにゅ……こしょばい……」


 ちょっと、いえかなり急な触れ合いに、思わず尻尾をワサリと揺らします。揺らしますが殆どの毛を抱き込まれているので尻尾の先しか動きませんでした。


 「すーはー」

 「すーふすーふすすー」


 尻尾を思う存分吸っている彼等は心の底から幸福な顔をしています。

 あまりに幸せそうなので、三巳は


 (こしょばいけど、まーいっか)


 と満更でもなさそうに耳をそよがせるのでした。


 なお、この後島中の猫獣人以外が三巳の尻尾に殺到し、ちょっとジャラシーを起こした猫獣人達のデレが増えるのでした。


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