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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
254/372

雪壁遊び

 学校がお休みの日もあります。

 そんな日でも子供達は仲良く集まり遊びます。

 今はディオ達に雪遊びを教えるのが楽しくて仕方ないみたいです。


 「普通の雪壁は掘ると重みで崩れて危険なんだけど、この広場のは大量に積み重ねる為に圧縮してて硬いんだ」


 ロハスに連れられてやって来たのは水場の無い広場の中でも一番広い場所です。ミオラ、ミナ、ロノロのいつもの仲良し組に、今はディオとそれからファラという同年代の女の子が一緒にいます。

 壁を叩くロハスに続いてディオも雪壁を叩きます。そしてその思った以上の硬さに目を開きました。


 「すっげ!石の壁みたいだ!」

 「だろ?でも雪は雪だから熱系の魔法でこんな風に解ける」

 「あら、子供達(私達)だけで魔法使ったら危ないわ」


 ファラが心配して眉を下げます。

 それにニコリと返すのはミオラとミナです。両側からファラの手を握って安心させます。


 「勿論大掛かりなのは使わないわ。そんなことしたら折角の雪壁が無くなっちゃうもの」

 「そうだよ。むしろ力を抑えて調節しないといけないから鍛錬にもなるの」

 「そういう事!俺達だけで出来る力と知恵を駆使してやる遊びだから結構高度なんだぜ」

 「成る程な。よっしゃ!やってやろうじゃん!」


 ディオはニヤリと笑って気合を入れます。そしてロハスに顔を合わせました。


 「で?どんな遊びだ?」


 何をするかもわからず気合を入れていたようです。

 ファラは呆れ、ミオラとミナはクスクス笑いました。


 「ま、見てろって。ミオラやるぞ!」

 「はいはい。任せなさい」


 両手に熱の塊を生み出したロハスの背後にミオラは付きます。そしてダイヤモンドダストを半円状に周囲に展開しました。


 「先ずは俺が解かして進むぜ」


 熱の塊を前に突き出して雪壁に向かって歩きます。すると熱に触れた雪壁がジワリジワリと解けだしました。


 「解けたら私の出番よ」


 子供の背丈より少し上位まで解けた所でミオラのダイヤモンドダストがその表面を覆います。すると解けて水っぽくなっていたのが凍りつき、カチカチに硬くなりました。


 「小さいカマクラだな。でもそれは前にも作ったろ?そりゃ雪壁で作れば楽かもだけど」


 既にカマクラは学校の校庭で作り済みです。ディオは今更感が拭えません。


 「これで終わりじゃないのよ」


 ミナがファラと腕を組んで暖を取りつつ微笑みを浮かべて言います。

 ファラも寒いのでミナで暖を取ってロハスとミオラの動向を探りました。


 「あら、本当ね。まだ先に進んでいるわ」


 ファラの言葉にミナを見ていたディオがまた雪壁を見ます。すると雪壁にポカリと空いた穴は更に奥へと深くなっていました。


 「横長のカマクラか?そりゃ一から作るには大変だけど、出来ない訳じゃないよな」


 未だに何が出来るのかわからず、ディオは腕を組んで眉根を寄せてしまいます。

 そうしている間にも穴はどんどんと深くなり、到頭ロハスもミオラも見えなくなってしまいました。

 流石に心配になってきたディオは焦り出します。


 「お、おい……。雪に潰されてるんじゃ……」


 オロオロと助けに行こうか助けを呼ぼうかと右往左往していると、全く見当違いの場所からボコリと雪壁が崩れてビックリしてしまいます。けれどもその崩れた場所から飄々とした様子のロハスが出て来て更に驚き、でもホッと安心しました。

 安心したら今度は何だか無性にムカムカしてきます。ディオは早足でロハスに近寄るとその頭をポカリと叩いてしまいました。


 「!?何す」

 「心配掛けさせんなバカ!」


 ブルブルと体を震わせ怒り顔で、でも泣きそうなディオにロハスの目が見開きます。

 未成年組にはリファラであった悲しい出来事はまだ伝えてありません。ただ親のいない子達が新しくお友達になるとしか聞いていません。

 だからロハスは何でディオがそんなに辛そうな顔をするのかわかりませんでした。


 「えっと……、悪い……」


 ポカンとしながらもディオにそんな顔をして欲しくなくて、ロハスは素直に謝ります。

 ディオも未成年組は事情を説明していないと聞いているので、仕方がないと握る拳に力が入ります。だってディオの悲しみはロハスに関係なんて無いのですから。


 (ああ、でもロハス達なら関係なんて友達なら有るとか言いそうだな)


 ふとそう思ったディオは何故か可笑しくなって自嘲気味な失笑が漏れてしまいます。

 それにロハスはアタフタと慌てて視線を彷徨わせます。そしてふと視線の合ったミオラに視線だけで助けを求めました。

 そんな視線を受けたミオラは「やれやれ」と言いたげに前に出ます。


 「私も、ごめんね。村じゃこういうの普通だから気付けなかったわ」

 「いや……。俺が大袈裟だった。そうだよな、ここは三巳の村で、ロハス達は同い年でも山の民なんだもんな。これ位で急にいなくなったりなんかしないもんな」

 「?当たり前だろ。一応三巳姉に散々遊びと称して鍛えられてるんだから」


 子供達にとって三巳への信頼が厚い様です。大人達が聞いたら慈愛の微笑みを向けられそうですが、子供達にとって三巳はまだまだ頼れるお姉さんなのです。


 (そういえばジョナサン達が三巳の遊びに震え上がっていたな。あんな怖い国の人達でも怖がるんだ、ロハス達も只者じゃないのかも)


 ディオも例に漏れず納得して頷きました。

 そして今度はロハスが出て来た穴を覗きこみます。


 「で?結局これ何なんだ?」

 「トンネルだよ。しかも迷路の」


 そうです。ロハスとミオラが作っていたのは雪のトンネルだったのです。


 「へえ?成る程面白い。どうせなら隠し通路も作ろうぜ」

 「おお!それは良いアイデアじゃん!やろうやろう!」


 こうして絶対の安心感を得たディオとファラも目一杯雪壁遊びを堪能するのでした。


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