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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
253/372

学校帰り

 ピュウッと冷たい風が首筋を通る真冬時です。

 夕方前に学校帰りの子供達が集団下校をしていました。


 「うぅ……。雪国って想像を絶っするよな」

 「ディオの所はこれより暖かいんだもんな」

 「そそ。あまりに暖かくて冬なのに花が咲く事もあるんだぜ」

 「えー?うっそだぁ」

 「ホントホント」


 ザックザックと雪掻きされて固まった雪道を、寒さに慣れない子供達が身を寄せ合って歩いています。

 冬は寒いのが当たり前のロハス達は冬は草木も凍るのが常識なのでディオの言葉を信じられません。


 「あ。三巳姉がいる。聞いてみようぜ」


 そこへ下校を見守っていた三巳に気付いて駆け寄りました。


 「三巳姉、ディオがリファラは冬でも花が咲くって言うんだ。本当?」


 ワラワラと駆け寄られた三巳はキョトンとしてロハスをみて、ディオを見て、そしてミオラ達を見ました。

 視線に気付いたミオラが経緯を説明すると、三巳は得心がいったと頷きます。


 「成る程なー。確かにあったかい地方だとそういう事もある。しかも南国だとそれが当たり前だったりするぞ」


 ちょっぴしレオに会いたくなりながらもグランでの事を話せば、ディオ達も目を輝かせて聞き入りました。特に少年達は冒険話が楽しいらしいです。


 「凄え!グラン行ってみたい!」

 「えー?だって資格がないとジャングルでお花に食べられちゃうのよ?」

 「そ、それは、何とかするんだよ!」

 「何とかって何よ」

 「何とかは何とかだよ!」


 冷静なミオラに解決策が思いつかないロハスが答えになってない答えを言い、それに対してミオラは呆れ、三巳達はカラカラと楽しい笑い声を上げます。


 「そうだなー。頑張って何とかしようなー。でも無茶するのはダメなんだよ。三巳心配しちゃうからな」

 「うん。わかった。無茶しない。めっちゃ頑張る」

 「俺も!行きたいから一緒に頑張ろうぜ!」

 「ディオっ。うん!絶対行こうな!」


 どうやら男の友情が熱く結ばれた様です。

 女の子達は呆れて溜め息が出ますが深くは反対しません。どのみち子供の内は篩の森に行けないからです。篩の森に行けなければグランになんて行けっこないですからね。


 「よーし。そいじゃ頑張る子には三巳が良い事教えてあげよう」

 「え?良い事?」

 「何だろ」


 三巳が子供達に手招きして雪道を進みました。

 子供達はワクワクしながらその後ろを歩きます。高くそびえる雪の壁で遊びながら着いた先はパン屋でした。

 子供達もミクスのパンは大好きです。けれども良い事も何も山の民な子供達は知っています。


 「ディオ達には良い事か?」


 首を傾げていると何やらホカホカと温かそうな湯気が窓から出てきました。

 何だろうと覗き込むとそこにはニコニコ笑顔のミクスが湯気が立つ白いパンを持って立っていました。そしてそのパンをロハスに渡してくれます。


 「え?俺交換品持ってないよ」

 「良いのよ。君達は勉強を頑張って来たでしょう?学校帰りはお腹空くからホカホカの中華まん一個を一日の頑張りと交換してあげてって、三巳が言っていたのよ」

 「三巳姉!最高!」

 「にゅはははは!そうだろうそうだろう♪学校帰りはあんまん食べたくなるんだよ」


 三巳もミクスを手伝って肉まんやあんまん等を子供達に一個づつ渡していきます。

 其々手に持った中華まんは、手袋を脱いだ手にほかほかとして心地良い温かさです。ドキドキしながらそれを口に含み、咀嚼し、そして目を見開きました。


 「うっま!」

 「え?何これ美味しい!」

 「あ!私のと中身違う!」

 「「「これ!何!?」」」


 子供達の仲良く揃った質問に、三巳とミクスは顔を見合わせてクスリと笑って手を打ち合います。良い反応が返って来たのがとっても嬉しいのです。


 「それは中華まんというの。ロハスのは肉まん。ディオのはピザまん。ミオラのはカレーまん。ミナのはあんまん。ロノロのはツナまんよ」


 窓から近い子の中華まんの中を見てミクスが説明すれば、子供達は5人に集まり自分のと見比べて何を食べていたのか確認します。


 「今日はお試しな。明日からは自分で食べたいの伝えるんだぞ。あと冷める前に食べちゃえな」


 三巳の言葉にハッとして、慌てて温かい内に食べ切ります。そして其々に味の感想を伝え合いました。

 この後数日かけて全ての味を網羅した子供達は一番好きな味を見つけます。そして学校帰りはパン屋に寄り道するのが定番になるのでした。

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