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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
250/372

学校が始まるよ

 村に雪が積もり、本格的な冬がやって来ました。村はもう真っ白々です。


 「さ~む~い~」


 三巳が尻尾毛皮に包まり震える前で、子供達が元気に列をなして歩いています。年長組を先頭に、年少組、年中組と続いてしんがりは年長組に戻っています。


 「おはようございます」

 「おはよう!あ、ございます!」

 「おはよーごじゃいます!」


 先頭の年長組が挨拶をすると、他の子も挨拶をしました。敬語の無かった村ですが、ハンナの影響で随分と浸透しています。理由は何か格好良いらしいです。

 確かにハンナはビシッと背筋が伸びていて、動きもキビキビしているし、村には居なかったタイプの格好良さがあります。


 「おはよーなんだよ」


 交差点で待ち伏せていた三巳は子供達の挨拶に手を振り返します。これは日本の小学校でよく見られる朝の登校の光景です。

 そうです。三巳が教えたのです。

 ハンナが学校を作るにあたって何となく口にした日本の学校事情を、ハンナが感心して詳しく聞いてそれを取り入れていたのです。

 結果、初の登校では三巳やロウ村長達大人が見守る事になったのでした。


 「うーにゅ。三巳としては桜の季節に入学式して欲しかったんだよ」


 ピルピル震えながら白い息を吐き出す三巳ですが、当の子供達はキャイキャイはしゃいで楽しそうに歩いて行きます。


 「うみゅ。まー、皆楽しそうだから良し!」


 子供達の後ろ姿を見送ったら三巳はお家に帰ります。帰って炬燵で丸くなると決めています。なんならミカンも食べちゃいます。


 あっという間にいなくなった三巳を年少組の子供達は見ていました。

 列の動きが止まってしまったのでその後ろの年中組が注意します。


 「ほら、置いてかれるよ」

 「ロハスにいちゃん、三巳ねえちゃんいたよ」

 「いたのにいなくなっちゃった」

 「三巳姉は学校通わないんだよ」

 「そーなのー?ざんねんー」


 立派な年中組となったロハスは、子供達のエアもふもふに苦笑します。自分達が年少組の時は三巳がいつも一緒に遊んでくれていたからです。


 「学校の行事にはなるべく参加してくれるって言ってたから、オレ達が学んだ成果を見せような」

 「うん!」


 ロハスがさあさあと手を広げて前へ促してようやっと列が動きました。少し行った先で年長組の子が待っていてくれています。


 「ごめん、待たせた」


 合流した所でロハスが謝りました。

 待っていた年長組の子は朗らかに笑って緩く首を振ります。そしてほっぺを赤くする年少組達の頭を撫でて言います。


 「大丈夫よ。まだ皆三巳と遊んでいたい年頃だもの。仕方がないわ」


 年少組達は撫でられて嬉しいのでしょう。「きゃっきゃ」と笑い声を上げて楽しそうです。

 年中組と年長組の子達もそんな年少組の子達を見てニコリとします。


 「さあ行きましょ。初日から遅刻しちゃうわ」


 年長組の子がスクール鞄を持ち直して前へ進みます。

 するとそれを見た年少組の子達も背中に背負ったランドセルを背負い直してニコニコ笑顔で進みました。

 その後ろ姿を見ているロハスの背にもランドセルはあります。でも背負い直さずに進みました。もうロハスは大人の真似っ子をして大人な気分になる年ではないのです。

 けれどもそんなロハスを見ていたミオラやミナは顔を見合わせてクスクスと笑っていました。ロハスのヤンチャ時代を知っているから大人になったなーと思っているのです。

 因みに年長組の子達はランドセルではありません。中学生が持つ指定鞄の様な形です。

 真新しい鞄にウキウキしながら進み、交差点で大人達に見送られ、着いた学校は雪に埋まっていても輝いて見えました。


 「はわー」

 「おっきーねー」


 温泉施設と同じくらいの大きさの建物に子供達は目も口も大きく開けています。


 「おはようございます皆さん」


 学校の玄関では雪掻きを終わらせたハンナがいつもの侍女服で待っていました。威厳のある理事長みたいな立ち姿で子供達を出迎えます。


 「「「おはようございます!ハンナ先生!」」」


 それに大きな声で朝の挨拶を返したならば、さあ今日からワクワクドキドキの学校生活が始まるのでした。

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