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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
24/372

温泉大浴場建設大作戦

 梅雨の合間の良く晴れた日の事です。

 村の北東には三巳と大工達が集まっています。


 「よーし。それじゃあ温泉発掘大作戦からの大浴場建設大作戦の決行だー!」


 三巳達は円陣を組んで気合を入れます。


 「まずは浴槽を作ってくれ」


 三巳が指差した処に石細工師と庭師が気合を入れて向かいます。


 「掘るぞー!」


 庭師が掛け声一つ掛けて、地面に両手をつきます。

 地面には三巳の魔法で描かれたプロジェクションマッピングがあります。

 魔法で描かれているので陰る事も無ければ、簡単に形も変えて整えられます。


 「底線出たぞー!」

 「よっしゃ任せろ!」


 庭師が退くと今度は石細工師が前に出てきました。

 石細工師は工房で彫刻済みの石材を操り穴の側面を埋めていきます。

 表面には軽く凹凸があり、一見するとただの四角い石ですが、角度によって絵が浮き彫りになります。それが淵を覆うように並べられると、あら不思議。東洋の龍が姿を現しました。


 「おおー、凄いなー。

 見方によって色を変える石の特徴をこういう形で生かすとわなー」


 三巳が素直に感心していると、石細工師は照れ臭そうに鼻をかきました。


 「へへ、こんな楽しい計画に本気出さないやつがいるかってんだい」

 「よく言うぜ!全くその通りだがな!」


 大工達は「がっはっは」と胸をそらして大笑いします。


 「よーし!三巳!張り終わったぞ!」


 石細工師は照れ隠しに大きな声で言います。


 「よーし、下水道設備と排水溝繋げるぞー」


 三巳が前に出ると、底に設けられていた排水溝口目掛けて魔法を放ちました。

 事は地面の中の事なので、専門家か透視能力者でもない限り判りませんが、排水溝口から穴がどんどん伸びていきます。そして村の下水道と繋がると、穴の周りは魔法によりパイプの様なもので覆われました。

 

 「下水完了ー」

 「よっしゃ!次は露天だな!」


 三巳が「ふいー」とかいてない汗を拭うと、また庭師が前に出てきます。

 こうして同じ要領で先程より小さめの穴をいくつか段差をつけて掘ると、石細工師に代わります。

 石細工師は先程と違って小さめの岩と大きめの石を組み合わせて、隙間なく側面を覆っていきました。

 底面には平らに切断された岩を敷き詰めていきます。

 やはり露天は岩の方が雰囲気ありますよね?


 「浴槽は完成したし、早速温泉掘り当てるぞー」

 「「「うおおおおおおおおお!!!!」」」


 三巳が「ふんす」と無い力こぶを作ると、周りから「待ってました」と言わんばかりの大歓声が沸き起こりました。その大音声で地面が揺れるので、近くを通った人は地震かとキョロキョロしてしまう程です。


 「そんじゃちちんぷいぷいのほーい」


 周りの大歓声に答える様に不必要な身振り手振りで演出をしつつ、いい加減な魔法の言葉を放ちます。イメージはそう、子供向けアニメの女の子戦士の魔法のシーンの再現です。言葉も動きも滅茶苦茶ですが。


 「お、そろそろ来るぞー。

 総員ー退避ー」


 鼻を「くん」と人嗅ぎした三巳は、確かな硫黄の匂いを感じ取り、我先にとその場から離れます。

 それに合わせて大工達も慌てて離れていきました。

 その直後、ドドドドという地響きと共に、地面から溢れんばかりの温泉が「どっかあああん!ばしゃしゃしゃ!」と吹き出しました。


 「「「うおおおおおおおおお!!!!」」」


 先程と一言一句違わぬ大歓声が起きました。しかし温泉の噴き出す音に掻き消されました。


 「よーし、吹き出し口作成班前ー」


 三巳が吹き出す温泉を魔法で制御し、大工が吹き出し口を石や木などで素早く組み立てていきます。

 終わった頃にはそれぞれの浴槽に合ったデザインの吹き出し口から大量の温泉が出ていました。

 

 「よおうし!そんじゃ建てるぞー!」


 浴槽にはまだ温泉が溜まっていませんが、大工達は石材や木材などを使い、魔法でどんどん建物を組み上げていきます。あっという間に、土台が出来、骨組みが出来、屋根が出来、そして壁が出来ました。

 出来たのはそう、最初に三巳が妄想していた日帰り温泉施設でした。

 間取りは今回の参加者他プラスαのこだわり抜いた忍者屋敷です。


 「後は細かい装飾だけだなー」


 三巳が小躍りしながら喜びます。


 「おおっと、ここから先は俺達に任せて貰うぜ」


 意気揚々と建物の中に入ろうとした三巳でしたが、大工達に止められてしまいました。


 「おの?」


 三巳が不思議そうに首を傾げます。


 「ふっふっふー!ここから先はお楽しみにしとけってこったい!」

 「おお!何というサプライズ!

 それじゃ三巳は楽しみに待てばいーだけだな!」

 「そういうこってい!」


 大工達は大きく頷き、入り口は通せんぼです。


 「んじゃ任せたー!」


 三巳は尻尾と腕を大きく振って、ジャンプをして喜びました。

 そしてその場は大工達に任せて、終わるまで診療所に戻ることにします。


 「出来上がりと前世ぶりの日帰り温泉、楽しみだなー」


 診療所であっちをうろうろ、こっちをうろうろしていますが、そぞろな気が晴れません。

 楽しみ過ぎて、チラチラと入り口を見てしまいますがなかなか大工達が来てくれません。

 来なければ、来ないだけ三巳の楽しみが増していきます。



 結局、拘りに拘り抜いた大工達により、呼ばれたのは翌日の事になりました。

 三巳は楽しみ過ぎて、眠れない夜を過ごしました。


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