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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
239/372

本格的な冬の前に

 山では雪の降る頻度が増える時期になりました。

 この時期になるともう雨は殆ど降りません。降ると雪になっているからです。


 「では行ってくる」


 雪囲いはもう終わった村では旅支度をしたロウ村長が山の民達に見送られていました。


 「気を付けてな」

 「今回行くのはリファラじゃないんだろう?大丈夫かい?」


 道の完成発表の時と打って変わって山の民達は心配が尽きません。

 何故なら今回ロウ村長が行くのはリファラでは無いからです。


 「ウィンブルドンはワシが冒険者登録をした地だ。知った顔も多いから問題ない」

 「だからってねぇ。1人で行くなんて……」

 「ワシは慣れているがな。リファラと違い荒くれ者も多い。皆にはまだ危険が無いとも言えん」


 そうです。今回行くのはウィンブルドンです。道が出来たよと伝えに行くのです。そしてこれからの交流を再度話し合うのです。

 山の民達は荒くれ者の言葉に青褪めます。そしてロダや三巳を見ます。


 「うーん。僕は特に大丈夫だったけど、泥棒とかいてビックリしたかも。同じ動くなら真っ当に動いた方が気持ち良いのにね」

 「うにゅ。警察みたいな人達が優秀だった。

凄いんだよ。悪い人がパッて現れても直ぐにサッて捕まっていなくなっちゃうの。すぐ捕まるのに何でやっちゃうんだろうね」


 純朴な山で育ったロダは兎も角、地球の記憶がある三巳まで不思議そうに首を傾げます。その時の様子を身振り手振りで伝える三巳は、耳も尻尾もその時の感情を如実に表しているので和んでしまいます。

 2人のあまりにもあっけらかんとした調子に、山の民達も眉尻を下げて息を吐きます。まだまだ不安は拭えないけれど、ロウ村長なら大丈夫だと信じます。


 「うむ。では行ってくる。留守は頼んだぞロダ」

 「うん!任せて!」


 外へと足を向けたロウ村長に頼られたロダは、力拳で胸を叩いて堂々と応じました。

 その頼もしさにロウ村長は歯を見せてニカリと笑います。そして片手を振って力強い足取りで1人山を降りて行きました。


 「行っちゃったね」


 大きくて力強い背中が見えなくなるとリリがポツリと言いました。

 ロダはリリの手を握り笑みを向けます。


 「うん。ロウ村長ならきっと上手いこと纏めてくれるよ。もしかしたら本格的な冬の前にリファラの民を連れて来ちゃったりして」


 冗談めかしてロダは言いましたが、それを聞いていた山の民達の心は


 (((ありそう!)))


 と一気に不安が膨れ上がったのでした。

 そして誰ともなくソワソワしだします。


 「住む場所の準備をしといた方が良いかもな」

 「そうね。干物や漬物も多めに作っときましょう」


 誰かが言った事に皆が頷きそそくさとその場を後にしました。

 ロダも村長代理として大人達と相談しながら必要そうな物をピックアップしていきます。

 リリはそんなロダの補佐をしようとついて行きました。勿論ネルビーも一緒です。


 「ハンナは行かないのか?」


 けれどもハンナはついて行きませんでした。その事を不思議に思った三巳が訪ねます。


 「リリはもう立派なレディです。もうわたくしの助けはあまり必要としないでしょう」

 「んー。ていうか、だってハンナはリリのお姉ちゃんだから。助けっていうよりただ側にいるだけで嬉しいと思うんだよ」

 「あらまあ嬉しい事を言ってくれますね。そうですね、そうだと嬉しいです。けれども今はロダがおりますので」

 「にゃる程。んじゃ三巳もお邪魔虫だから行かないどこ」

 「ふふふ。では一緒に学校造りを模索しますか?」

 「うにゅ!良い場所探さないとな!」


 リファラの子供達が留学するのなら、まさか雪の中の青空教室をする訳にもいかないでしょう。

 三巳はハンナと一緒に村の中の空き地を物色しに行くのでした。

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