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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
23/372

梅雨の日の遊び

 シトシト。シトシト。雨が降っています。

 サアサア。サアサア。景色に雨粒が線を描いていきます。


 「ポツポツパシャーン。今日も雨ー」


 手持ち無沙汰の三巳はテーブルに顎をついて足をプラプラさせています。


 「リリはロキ医師に弟子入りして忙しいし。

 あ―――ひーまーだー」


 手までテーブルの上でパタパタさせて唸っています。

 尻尾も耳も散歩したくてウズウズ、ウズウズ忙しなく動いています。


 「梅雨だもんなー。毎年の事だけどー。

 うー。……やっぱ作るか。大浴場」


 三巳は雨で濡れた後を考えて、外で遊べなく悶えていましたが、不意にキラリと剣呑に目を光らせました。


 「山の上に天然温泉が湧いてたし、掘ればいけるはず」


 三巳は温泉大浴場建築大作戦を本格的に計画し始めました。

 一旦熱中したら次々と妄想が浮かび、なんだか楽しくなってきます。


 「地脈的に建てるなら村の北東かなー。

 建物はーココは純和風な感じでー」


 構想を思い付く端から指先に魔力を集めて宙に描いていきます。


 描かれているのは、外見は純和風な日帰り温泉風です。

 外見の横には間取り図を描いていき、出来たのは忍者屋敷の様な入り組んだ間取りでした。


 「にゅふふ~。遊び心も大切だよねー」


 ニマニマしながら、あーしようこーしようと次々とどんどん複雑になる間取りを描いていきます。

 最終的にはダイニングは三巳の描いた絵でいっぱいになりました。


 「むむーもう描くとこないー」


 不完全燃焼の三巳は眉根を寄せて唸ります。

 描くスペースが無いかキョロキョロしていると、窓の外が目に入りました。


 「そうだ!外ならいっぱい描くとこあるじゃーん!」


 言うが早く、耳も尻尾もピーンと立てて外に飛び出してしまいました。

 外では未だにシトシト、サアサア、雨が降り続いています。

 けれど目先のことに囚われた三巳にはそんな些細な事は関係ありませんでした。


 「やっふー♪」


 鼻歌混じりに次々と思い付く限りの絵を描いていきます。

 村中に描いていると途中から動物やら植物やらまで増えていきました。どうやら描くこと自体が楽しくなった様です。

 足元をパシャパシャ言わせながら、軽快な足取りで下から上まで描いていきます。


 「ネコネコニャーンモフモフ肉キュー♪

 イヌイヌワーンモフモフ振ーり振り♪

 ヘビヘビシャーツルツルニョーロニョロん♪」


 村中に描かれていく絵は、魔力の線で出来ているのでピカピカ光っています。それが雨の雫に反射して一面キラキラの幻想世界が構築されました。


 「なんだなんだ」

 「おやまあ」

 「すごーい!」

 「ピッカピカ!」


 あまりの光景にお家に引っ込んでいた山の民達もゾロゾロと顔を出しました。


 結局この日は三巳の作ったなんちゃってイルミネーションによってみーんなずぶ濡れになってしまいましたとさ。

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