帰ったら手洗いうがい丸洗い♪
グランを去り、ジャングルを抜け、砂漠を駆け抜けて、三巳はリファラに戻って来ました。
獣神姿のままリファラに入国です。砂漠を抜けるのに体を大きく戻したので、街中を歩く様にまた少し小さくなっています。けれどもレオよりは随分大きなモフモフに、街行く人達が思いました。
(((折角の毛並みが砂だらけ!)))
はい。砂漠を抜ければそれは砂が入り放題ですよね。
しかもそのまま体をブルブル振るわせようとしています。
「「「待った―――!」」」
おかえりの挨拶よりも制止が早く出ました。
此処で止めなければきっと街に砂が舞い散っていた事でしょう。
「おかえり三巳ちゃんっ。あっちに広い池があるから入りに行こうっ」
「こっちの川も広くて大きくて入り心地良いよっ」
一生懸命に誘われて、三巳は嬉しくなって尻尾を思いっきり振ろうとして、
「獣神娘!お座り!」
振れませんでした。
条件反射でビシッと座った三巳は改めて目の前のオーウェンギルド長に気付きます。
『ただいまー』
「ああ、おかえり。取り敢えず人型に戻れ」
『ぬ?戻るとすっぽんぽんだからちょっぴし恥ずかしいんだよ』
「服は持ってんだろ。人目は避けてやるから安心しろ」
『ぬー、汚れるのヤなんだよっ。綺麗な状態で見せたいんだよっ』
何のことかはわかりませんが、自分が汚れている自覚はある様です。
すぐさま女性陣が集まり三巳を囲いました。そしてとっても良い笑顔で川に連れて行きました。
連れて来られた川は左右に高い木がいっぱい生えていて街からの目を隠してくれています。
「それじゃあキレイキレイしましょうね♪」
川に入れられた三巳は、手にブラシやタオルを持った人達にジリジリと近寄られてちょっぴしビクビクしています。
『お手柔らかにお願いするんだよ……』
「「「任せて!」」」
「とっても綺麗にしてあげるわ!」
「艶出しにこれも塗りましょう!」
そしてモフモフを最高のモフモフにする使命感に満ち溢れた人達によって綺麗に仕立て上げられるのでした。
その頃ロウ村長一行は黒板の仕上がりを確認していました。
「このまま此処で乾燥まで終えられそう、だ……んん?」
三巳が戻って来るのが遅かった為、黒板はもうあと少しで使用可能になる所まで完成しています。それを満足そうに見て頷いていたロウ村長は、気配に気付いてリファラの入り口がある方を見ました。
「あら~帰って来たのね~」
「迎えに……あれ?なんか川に向かってる」
「これだから~男の人は~。三巳も女の子だから~身綺麗にしたいのよ~」
ロンはジト目で見られて汗をかきました。女心をもう少しわかってと言う奥さんの言葉が頭を過ぎります。慌ててうんうん頷けばクスリと笑われました。
「ふむ。ではかふぇで待とう」
ロウ村長もカッカッと快活に笑って皆を促します。
ロウ村長に同意してロザイヤがコクリと頷き、ロンが誤魔化す様に元気に外へと向かい、ミズキが仕方ないなと笑ってあとを追いました。
こうしてロウ村長一行は川辺に建つオープンカフェへと向かい、そこでまったり三巳の支度が整うのを待っているのでした。
さて三巳に戻って。川ではピカピカに磨かれ光を弾きキンキラに輝く毛並みの三巳がお空に鼻を向けてお澄まししています。
風で毛並みがふわそよとそよぐ度に『にゅふふん♪ふん♪』と鼻先を変えてご満悦です。
『凄いんだよ。リリにやって貰うのと違うんだよ』
「ふふふ、リリ様は艶やかすべすべよりもふわふわサラサラが好きだものね」
『うにゅ。リリにやって貰うとな、ふわ~ってしてうにゃ~ってなって夢心地になるんだよ』
「あらあらまあまあふふふふふっ」
リリの動物におけるゴッドハンド具合はリファラの民が一番良く知っています。その光景がリアルに思い浮かんで微笑ましさに笑顔が絶えません。
「それじゃあ綺麗になったしお着替えしましょうね」
「うにゅ!」
瞬時にシュバッと人型に戻るとすっぽんぽんの三巳が現れます。そして徐に尻尾にズボッと手を突っ込んで何やら探る様にわしゃわしゃ動かしました。
「いつ見ても可愛らしいわね~」
「本当、もふもふの毛に小さな手を入れてるのも可愛らしいけど、艶々の毛でもやっぱり可愛らしいわ」
女性陣に微笑ましく見守られ、お目当ての服を見つけて「てってれー♪」と効果音を口にして取り出しました。
その服を見て皆が「わ~っ」と歓声の声を上げてくれたので、すっかり嬉しくなって調子っ外れの歌を奏でながら音楽に合わせて着替えます。
「じゃーん!似合う?似合う?」
そしてレオに聞いた事を皆にも聞いて、
「「「とっても可愛い!」」」
と声を揃えて言われて耳も尻尾も元気に振りました。
「じゃあロウ村長とミズキとロンとロザイヤに見せてくるー!」
そしてそして、あっという間にロウ村長一行のいるカフェに向かって駆けて行くのでした。




