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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
218/372

初外国で山の民は

 首脳会談的な事が進む中、お守りで付いて来た山の民達はロザイヤをロウ村長付きに残して街を見て回っています。ロザイヤは複合魔法の使い手なのでロウ村長が暴走した時の歯止め役として大抜擢されたのです。


 「リリの国だから大丈夫だとは思っていたが、こうして話してみると俺達とそう変わらないもんだな」


 一緒にリファラに来ていた見回り組はロンとミズキです。

 三巳から貰ったお小遣いを片手にショッピングを楽しみながら交流を試みています。都会のお店は目新しい物が多く、面白い物をお土産にと買っているので両手は既にいっぱいです。


 「本当ね~。私達~何をそんなに怖がっていたのかしら~」


 ホクホクと満足気に歩く足取りはとっても軽く、次は何処へ行こうかと休まる事をしりません。次は何処へ行こうかと話します。


 「あら~?あれは何の建物かしら~」


 そこへふと目にした建物がありました。

 ミズキが指差す方へロンも目を向けます。

 それは山には無いし、まだ山に住む前の先祖の言い伝えにも聞いた事の無い建物でした。


 「大きな入り口の上に大きな絵が飾られてる」


 ロンもわからずハテナ?と首を傾げました。

 絵を描く風習は有りますがあんなに大きな絵を描いた事は無いですし、ましてや雨風のある外に出して飾るだなんて不思議でなりません。

 ロンとミズキは互いに顔を見合わせて困惑します。けれど好奇心が芽生えたので取り敢えず近くに寄ってみる事にしました。


 「うーん。見れば見る程不思議だ」

 「凄いわね~。ここの家の人が描いたのかしら~」


 下から見上げると迫力が増して圧倒されます。


 「そう言えば~三巳も~雨の日に~魔法の光で外に絵を描いた事があったわね~」


 ミズキはふと思い出して手を叩きました。

 ロンも思い出して「ああ」と閃きます。


 「そうか。リファラにも三巳みたいな人がいるんだな」

 「違うよ」


 納得して自己完結させ様としましたが、直ぐにそれは否定されました。

 否定したのは大きな両開きの扉から出て来た男の人です。


 「君達三巳の所の人達でしょ」

 「ああ、そうだけど」

 「なら今日はタダで良いよ。折角だから中でゆっくり見て行って」

 「中?家の中にも絵が飾ってあるのか?」


 ロンの訝し気に発せられた疑問の声に、男の人はニヤリと笑みを深めます。そして片手を胸に当て、そしてもう片手を真っ直ぐ建物の中を指して頭を下げました。


 「ようこそ、当劇場へ。劇中では御座いますが、どうぞごゆるりとご堪能ください」


 そうです。

 この建物は劇や音楽を楽しむ劇場だったのです。そして入り口上の絵は今期演劇の主役の男女が描かれている看板なのです。

 山には劇をする習慣は有りませんが、おままごとはあります。あれも演じているという面では劇みたいなものでしょう。そう理解したロンとミズキは頷くと、目を輝かせてポワポワした緩い気持ちで案内されるままに中へと入って行きます。


 「大人のやるおままごとか。流石都会はスケールが違うな」

 「楽しみね~」


 そして目にした、耳にしたそれは圧巻の一言に尽きました。

 シンと静まり返った観客席。舞台で繰り広げられる物語。そしてそれに合わせた音響。その全てが衝撃的に胸を打ち付けています。

 しっかりとした作りで、それでいてクッションの効いた座席は座り心地が良く、そのまま寝てしまいそうです。

 舞台上で演じる人達はそれが作り物と感じさせない迫力で、見ているこちらがハラハラドキドキワクワクしてきます。

 そして響く音響はその気持ちを更に上へと押し上げて、ロンとミズキはもう劇から目が離せなくなっていました。


 気づいたら劇が終わり、幕が降りた舞台をただ呆然と見ていた自分に気付いたロンはブワッと汗を吹き出します。


 「な、な、こんな……!こんな素晴らしい物がこの世にあったなんて!」

 「はわ~。ほわ~。へや~」


 ミズキなんて言葉を忘れています。

 ロンはキッと目に力を入れるとガッとミズキの肩を掴み揺さぶりました。


 「これ!山でもやったら盛り上がるぞ!」

 「はわ~っ!それは~なんて素敵なの~!」


 そしてその勢いのままに先程案内してくれたスタッフに弟子入りを志願しに行くのでした。

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