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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
216/372

苗木をください!

 グランの街の顔役なお爺さんに連れられて、やって来たのは広いお庭の平屋のお家です。綺麗に整えられた庭と屋上庭園が家主のセンスの良さを教えてくれています。


 「はわー。とっても素敵なんだよ」


 庭というよりお洒落な感じでガーデンと言いたい景色に三巳もうっとりです。下に垂らした尻尾も感動でピルピルと震えています。

 レオも綺麗に彩られた植物達にピュゥッと短く口笛を鳴らしました。その姿が様になっていて格好良く見えて、三巳も衝撃を受けてヒュハヒュハ真似しだす位です。


 「何やってんだ」

 「うにゅぅ。何でもないんだよ……」


 格好良く決まらなくて悔しかった三巳は耳をペタンと伏せました。

 レオはそんな三巳の行動を変に思うものの追求はしないでくれます。


 「パメや、パメやよーい。お客さんぢゃぞい」


 そんな後ろの2人はどこ吹く風と、マイペースなお爺さんは扉をトントン叩いて中の人を呼んでいます。

 すると中から足音が聞こえてカチャリと扉が開きました。


 「ハイナ。珍シイナ爺」


 扉を開けてくれたのはアロハな踊り子の衣装を着た女の獣人です。短い尻尾がチャーミングな鹿の獣人です。

 三巳は目を輝かせて綺麗な花柄のパウとピンクのお花のレイを交互に見つめます。


 「踊るのか?踊るなら三巳も踊りたいんだよ!」


 そして両手を大きく上げて自己アピールします。尻尾もブンブカ振ってとっても踊りたいんだなって気持ちが良く伝わります。


 「アラ。可愛イ子。オ姉サント踊ルカ?」

 「踊る!」


 言うなり三巳は鹿の獣人の前までピョンと跳びます。そして両手両足を大きく広げ、大きく開けた目を輝かせます。そして目を塞がれました。

 塞いだのはレオです。大きな手で三巳の目を覆っています。


 「おいおい、踊りに来たんじゃないだろ」


 呆れを前面に出したレオに頭上から言われた三巳はハッとしました。


 「そうだったんだよ」


 踊る気満々だった手をしおしおと下げると、レオの手を両手で掴んで下げます。そして耳をペタンと伏せると上を向いてレオの顔を見ました。


 「ありがとーなんだよ」

 「いや良いさ。踊りは後で教えてもらえ」

 「うぬっ、そーする!」


 仕方が無い奴だな、という顔で失笑された三巳は元気いっぱいに頷きました。なんとなくレオの大きな手をきゅきゅっと握っていますが、無意識なので気付いていません。

 そんな三巳にレオは何だかなとむず痒く思いました。

 三巳はレオから手を離すと、改めて鹿の獣人に向き直ってニパッと笑います。


 「こんにちわ。三巳は三巳なんだよ。お姉さんはパメさんですか」


 鹿の獣人もニコッと笑みを返して頷きます。


 「ソウ。ワタシパメ。ワタシニ何カ用カ?」

 「うぬっ。三巳な、チョコ好きでな、だからカカオの木育てたくてな、ほいでな、だからカカオの苗木欲しいんだよ」


 大事な商談です。失敗したらきっととっても悲しいです。だから三巳は一生懸命プレゼンをします。けれども商談なんてした事のない三巳からは頑張って話してる感と兎に角チョコ好き感しか伝わりません。

 それでも大人な面々は微笑ましく思いながら黙って聞いてくれました。


 「フフッ。三巳チャン本当ニカカオ好キナノネ」

 「うぬ!チョコはな、食べるとふわーって幸せな気持ちになれるんだよっ。それにな、皆で食べるともっともーっと美味しくなるんだ」


 ほっぺを両手で挟んで食べた時の気持ちを思い出せば、自然と尻尾もわっさわっさと揺れ動きます。


 「良イワ、三巳チャンニナラアゲル。デモ育テルハ環境大事ヨ」

 「温室ならあるけど、それじゃ足りない?」


 温室にはバナナの木もあります。同じ南の国の食べ物ならいけるんじゃないかなと思う三巳です。


 「アラ素敵。デモソウネ、ソレダケジャダメネ」


 パメはパチリと手を合わせるとフワリと大人な笑みを浮かべます。その笑みは三巳がどう出てくるか楽しみにしている顔だとわかるので、三巳は拳を握りヤル気満点にしてキリッとした顔を見せました。


 「ぬぅー。三巳頑張って覚えるから育て方教えて欲しいんだよ」

 「勿論ヨ。ソレト踊リモ一緒ニ教エテアゲル。ソコノオ兄チャンモ一緒スルカ?」


 思った通りの答えにパメは嬉しそうにパチンとウィンクで答えます。そして後ろに控えていたレオにも面白がって聞きました。


 「いや、俺は見てるだけで良い」


 パメの思った通り、レオは片手を軽く振って固辞します。

 三巳はレオも一緒に踊ったら楽しいのにと思いました。けれどもそれと同時に確かにフラダンスするよりも、バーで大人の時間を楽しんでる方が似合いそうだなとも思うのでした。

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