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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
214/372

パメさんを探そう

 街中に入って街外に行ってまた街中に戻る。行ったり来たりしている三巳ですが、それすらも楽しいらしくて調子っぱ外れな鼻歌が知らない街に響いています。

 グランの街の人々は初めこそなんだなんだと見ていましたが、三巳のあまりにも楽しそうな顔に次第に面白可笑しく聞き入っているのでした。


 「楽しそうなとこ悪いけどよ。目的地はわかってんのか」


 何のかんの言いながらも三巳に付き合ってくれるレオです。三巳はそんなレオの事がどんどんと大好きになっていっています。大好きだから大事に飲んでいるココナッツジュースをレオと回し飲みしています。


 「街の中のどっか!」

 

 三巳はヤシの実をレオに渡して答えました。

 受け取ったレオは呆れと諦めの入り混じった顔でココナッツジュースを一口飲みます。そして直ぐに三巳に返してあげます。三巳が本当に幸せそうに飲むのでレオは沢山飲ませてあげたいのです。

 そんなレオ心知らずな三巳は、まだたっぷり残っているココナッツジュースにご満悦で尻尾を振っています。


 「で?街中名前でも呼びながら探すのか」

 「んにゅ?それも楽しそうなんだよ。でもこういうのは大概大きい家の人とか偉い人が管理してるのが人の世の常だからなー。先ずはこの国の役所的な所を探すんだよ」

 「へえ」


 今までの三巳の行動からは信じられない程にちゃんと考えていた事に、レオは意外そうな顔で感心しました。

 三巳は一応これでも社会人を経験している身です。普段からは想像も出来なくても一応多分ちゃんと考えられるのです。

 レオは三巳の見た目が子供でもちゃんと神族なんだなと見直しました。

 そんなこんなで三巳が今探しているのは役所っぽい場所です。国として機能しているのなら窓口は何処かに有る筈と、それっぽい建物を探して散策です。


 「にゅふふー♪観光と人探しを同時に楽しめてお得なんだよ♪」

 「そりゃ良かったな」

 「うん!ラオ君も一緒だからとっても嬉しい!」


 ニコパっと満面の笑みで言われ、さしものレオも少し照れた様です。視線を彷徨わせて三巳の頭をぐりぐり撫でました。


 「あー、役所ってんなら街の顔役の所がそうだろ」

 「ラオ君知ってるのか?」

 

 人の国なのにと驚き見上げる三巳に、レオはニヤリと笑いました。


 「俺が何で人の姿になれると思う?」


 逆に聞かれた三巳は、しかし直ぐに「あ!」っと思いました。


 「ラオ君何度か来た事あるんだなっ」


 確信を持って答える三巳に、レオは更にぐりぐりを強めて


 「正解」


 と答えました。

 なんとレオは何度も人の世に紛れて情報収集を欠かさなかったのです。ジャングルを守る為なら情報は多いに越した事がないのです。


 「流石にパメ個人は知らねえけどよ。行ってみるか?顔役んとこ」

 「行く!」


 即座に頷いた三巳は、レオの案内で顔役の場所に行きました。

 辿り着いたのは入り口も窓も開けている平屋の建物です。閉めるものの無いその建物は雨が降ったらビショビショになりそうですが。


 「うぬ。雨避けが掛かっているんだよ」


 魔法の壁が建物を守っていました。


 「流石だな。見ただけでわかるか」

 「んにゅ。山の民の家にも何軒か掛かってるんだよ」

 「山の民、ねぇ。そういやサラマンダーが移り住んだ迷いの森の山にそんな民がいるらしいな」

 「うにゅ?サラちゃんも知ってるのか。ラオ君はとっても物知りなんだよ」


 お友達がお友達の事を知っている事が嬉しくて三巳は耳がピーンと立ちました。

 しかしレオは得心がいった顔でじっと三巳を見つめています。


 「そうか。あんたが迷いの森の引き籠」

 「ふにょおお!?ラオ君まで!?」


 みな迄言う前に三巳の羞恥の絶叫がそれを遮りました。


 (なんなんだよ!?サリーちゃんに言われた時は何ともなかったのに、ラオ君にも引き籠りって思われるのちょっと嫌だっ)


 「ま。こんだけ駆け回れるんだ。そりゃデマだな」

 「う゛。うぬ。そうなんだよ。三巳もお外には出るんだよ」


 飄々とした風に否定したレオに対し、三巳は冷や汗を内緒で掻いて肯定も否定もしないでぼやかす方向に持って行く事に一生懸命なのでした。

 スンとした顔で三巳を見るレオがいましたが、三巳は


 (ふぃー。誤魔化しに成功なんだよ)


 と、引き籠りだったんだなと思われた事には全くもって気付かないのでした。

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