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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
21/372

続・お散歩日和♪

 「ルンタッター♪ルンタッター♪ルン♪」


 牧場を後にした三巳達は、気ままに村を散策しています。

 調子っ外れな歌声で、機嫌良く元気良く手足を大きく振って、まるで行進とスキップを混ぜ合わせた様に歩いて行きます。

 それに合わせて大きく左右に振られる尻尾も、機嫌が良さそうです。尻尾に意思があれば一緒に歌っていたことでしょう。


 「ランラララ~♪」


 隣を歩くリリも釣られて歌い出しました。リリの歌声は小鳥の囀りの様で、道すがらすれ違う人達が思わず立ち止まって楽しそうに聴いています。

 二人のデュエットが村に響いて、まるで村までもが楽しく歌っている様です。


 「あ、あそこはローグの鍛冶屋だ。

 刃物が欲しくなったら頼むと良い。

 大抵のものは作ってくれるぞ」

 「刃物……使えるかしら。

 でも、もっと料理してみたいし。上手に作れる様になったら頼もうかな」


 三巳とリリは村の中でも端の方に位置する、大きめな建物を横目に見ながら通り過ぎました。


 「ルンルララー♪

 あ、あそこに見える可愛い家はロナとミキの家具屋だ。三巳も良く目の保養に遊びに行ってるんだ」

 「本当、素敵なお家ね。私も自分のお部屋を持てたら是非行ってみるわ」

 「今は見なくていいのか?」

 「ふふ。だって見たら欲しくなっちゃうもの」

 「そっかー」


 鍛冶屋さんを過ぎて植樹林が背後に見える、ドールハウスの様な可愛い建物も窓からチラリと覗くだけで通り過ぎました。


 「ルントトター♪

 あ、あそこは洗濯場だ。他のとこにもあるから好きなとこ使うといいぞ」

 「凄く清潔に整備されてるのね」


 石を彫刻して作られた、こんな山奥にあるより城下町の方にありそうな洗濯場に差し掛かり、つい足を止めてしまいました。

 側面には花があしらわれており、リリは目をキラキラさせて周りをぐるっと見て回ります。


 「これは先代の石材加工屋達が趣味で作ったもので、それぞれ彫刻家が違うから趣も違って面白いぞ」


 三巳がペチペチ叩いて朗らかに笑います。

 リリもワクワクドキドキが止まりません。花の彫刻をペタペタ触って楽しみます。


 「凄い。表面がツルツルしてる。

 こんなの王都にだってなかなか無いわ」


 リリが褒めるので、三巳は自分が作った訳では無いけど得意げです。鼻をふんすと慣らして、耳もピーンと立てています。尻尾もどこか誇らしげ。尻尾にもそらす胸があったらそらしている事でしょう。


 満足するまで見ていたら日が暮れてしまいそうです。

 三巳とリリは洗濯場を早々に引き上げてお散歩を続けます。


 「ルンタタトールン♪」

 「ララララ~♪

 あら?」


 案内をされながら村を見て回るリリは、遠くにピンク色の木を発見しました。


 「あれは何かしら」


 リリはよく見ようと目を凝らします。


 「うん?ああ、珍しいな。桜だ」


 三巳もリリの横から同じ方向を確認して得心します。


 「桜?時期には遅く無いかしら」

 「そーだなー。あれは遅咲きだなー。

 リリの回復に合わせて咲いたのかもなー」


 驚いて振り返るリリに、三巳は頭の後ろで両手を組んで、調子良く答えます。


 「そうだったら素敵ね。

 行ってみていいかな?」

 「いーともー!」


 三巳とリリは村の外れに向かって楽しく歩いて行きます。

 田畑を抜けてそのまた向こう。杉の木や松の木に囲まれて、ポッカリ空いた空間の真ん中に満開に咲いた山桜が、威風堂々と立っていました。


 「綺麗……」


 (こんなにゆっくりお花を鑑賞出来るなんて、三巳達には本当に感謝しきれないわ)


 心穏やかに見惚れるリリに、三巳も満足そうに笑んで桜を見上げます。


 「明日も晴れるしお弁当持ってまた来ようか」


 三巳が提案すると、リリは嬉しそうに振り返って両手を組みます。


 「嬉しい!お花見なんて何年ぶりかしら!」


 余りの喜びようとはしゃぎ振りに若干タジタジになりながらも、言ってみて良かったと嬉しくなった三巳です。ニカッと犬歯を見せて満面の笑みになりました。


 明日はお弁当持ってお花見ピクニックに決定です。

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