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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
208/372

砂漠を抜けたらそこはジャングルでした

 「あーああ~~~!!」


 お腹の底から張り出した声が鬱蒼と茂る緑の中に響きます。

 カラフルな鳥達がビックリして飛び出してしまう、そんな声の持ち主は


 「たーのしぃー♪」


 そう、三巳です。

 サリーちゃんとお別れして教わった通りにひとっ飛びした先は、なんとジャングルでした。大きなシダっぽい植物に大きなラフレシアっぽい花がそからかしこに見えます。

 そんな秘境っぽい景色に胸躍らない三巳はいません。

 マングローブっぽい湿地帯に入るや、蔓植物を素早く見つけて蔓から蔓への大移動です。気分はターザンでしょうか。


 「にゅふぅ~ん。腰巻姿でやってみたいんだよ」


 やはりターザンごっこでした。ターザンな自分を想像し、いつもの服を引っ張るとちょっと不満顔です。しかし見た目が獣人っぽい三巳が腰巻姿になったならば、野生感が満載となる事でしょう。


 「わにゃ!?危なかったー。危うく川だか池だかに落ちるとこだったんだよー」


 余裕をこいて片手ターザンしていた三巳はツルッと手を滑らせてしまいました。けれどもギリギリで蔓の先っぽを両手足を絡めて難を逃れました。下にはワニやピラニアっぽい生き物達が三巳を見ています。


 「ワニとかピラニアってジャングルにいたのかー?」


 ワニもピラニアも動物園や水族館でしか見た事ない三巳はコテンと首を傾げました。

 考えてもわからない事は考えないのが三巳です。チラリと下を見て、ウロウロしているワニ達に尻尾をワサリワサリと振ってご挨拶です。ワニはその動きに合わせてパクリ、パクリと顎を挟みますが三巳の尻尾は捕まりません。


 「にゅふふん♪三巳の尻尾は手強いぞう♪ワーニーズはここいら詳しいかー?」


 フリフリパックンで遊びながら三巳は下にいるワニに訊ねました。


 『肉っ!肉っ!』


 だけれど残念。ここのワニ達はお腹を空かせてご飯を食べる事しか考えていませんでした。一応これでも神族の一員なのに三巳がお肉に見えているようです。


 「むーん。お話が通じないんだよ……」 


 仕方が無いので三巳は蔓をよじ登って元の定位置に戻りました。


 「ミーザンはあーああ~を続行するんだよ」


 キリリと眉毛を上げた三巳はお腹の底から声を出してターザンごっこを続行しました。

 暫く縦横無尽に進んでいると、どうやら水辺からは離れていたのに気付きました。スルスルと蔓を滑り降り、大きな大きな三巳より大きな葉っぱの上にポフンと降りて、斜めに傾いた葉っぱを滑り降りて地面に着地します。


 「ジャングルは色んな植物がビックサイズで面白いなー」


 三巳は三巳を降ろした反動でミヨンミヨンと大きく揺らす葉っぱを見上げて言いました。暫くボーッと見ていて、葉っぱの揺れが止まった頃に動き出します。


 「さて。どっちに行くんだよ?」


 どうやら夢中になり過ぎて来た方角を見失った様です。キョロキョロと辺りを見渡して、けれども辺りは大きな葉っぱで視界が遮られています。

 困ってしまった三巳は眉を八の字に下げて、ついでに耳と尻尾も垂れ下げて上を見上げました。


 「ま、いっか!あっち行こー♪」


 そして直ぐに困る事を止めました。困っていても何も始まらないから動けばいーじゃない♪な精神の持ち主三巳です。

 気の向くままにシダっぽいのやらモンステラっぽいのやらを掻き分けて進みます。進んでいると急にパッと視界が開けました。


 「にゅお?あー、崖っぷちなんだよー」


 見渡す下は遥か遠くです。

 ダダダダダ!ドドドドド!などと爆音が左右から聞こえます。チラリと右を見て、


 「滝」


 チラリと左を見て、


 「滝」


 左右はもの凄く勢いのある滝でした。しかも横に長いです。


 「これは……!かの有名なナイアガラの滝なんだよ!凄い!迫力!かっちょいーんだよ!」


 そして三巳は大興奮で観光を始めました。

 右にチョロチョロと行っては落ち行く水の流れに感動し、左にチョロチョロと行ってはその勢いに見惚れます。

 そしてふと下から上を覗きたくなりました。そのまま足は崖下へ向かいます。そしてあと一歩で真っ逆さまという所で襟がクンッと引かれて止まりました。

 勿論喜び勇んで降りる気だった三巳はキョトンと変わらない足元を見ます。そして落ちない現状が不思議でキョトンと小首を傾げます。ここで漸く襟が引かれているという意味を理解しました。後ろを振り向いて確認です。


 「んぬ?ライオン?珍しく普通サイズなんだよ」


 襟を引いていたのは、いえ、咥えていたのはライオンでした。

 大きい物に見慣れていた三巳にとって、地球のライオンと同じ大きさを不思議に思います。けれども筋肉はしっかりと付いているし、シュッとしてスマートな肢体は素早さと力強さを感じさせてくれます。何より頭に生えた鋭い角と額に光る赤い宝石の様な石が、彼が強いモンスターであると物語っています。あとたてがみが何だかとっても格好良いです。

 その陽光に輝く金のたてがみと赤い宝石に、三巳は滝を忘れて目を輝かせるのでした。

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