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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
205/372

ロウ村長 山を出る

 雪もすっかり解けて剥き出しの地面も乾いた頃。山の民達は動き出していました。


 「さて、メンバーも決まり、準備も万端だ。向こうさんからも返事が来ていつでも大丈夫との事。という訳で明日出発する」


 珍しく三巳も出席している会合の中、ロウ村長が厳かに告げました。皺が出始めたお年頃なのに意気揚々溌剌とした良い笑顔です。言葉の重さと顔が合っていません。


 「「「はぁ~」」」


 危険視される山の外へ行くというのにソワソワを止める気も無いロウ村長に、山の民達は諦めた目で長い溜息を吐いてしまいます。


 「そんなに心配せんでもロウ村長なら大丈夫なんだよ。伊達に三巳と遊んでないし若い頃に無茶もしてない。それに往復は三巳の背の上だ。何を心配してるんだ?」


 フサリと毛先を大きく振る三巳は、本気でわからず小首を傾げます。

 それを横目で見た山の民は内心で“類友”という言葉が過ぎりました。


 「いえね。聞いた話じゃリファラの民は大人しい人が多いというじゃないか。そこに、ロウ村長を、投入するのか、と……」


 どうやら心配していたのはリファラの民の方でした。一言一句を区切って見やる先のロウ村長は、ガッハッハと笑い飛ばしながらリファラの代表の肩をバッシバッシと叩きそうです。


 「アレで締める所は締める人だけど、念の為ちゃんと見ていておくれよ」


 山に残る全ての山の民の気持ちを乗せた手を肩に乗せられたのは、今回同行するロザイヤです。ロザイヤは乾いた笑みで口を引くつかせます。


 「まあ……何とか……無茶だけは、抑える……」


 この時居残り組の皆の心が、


 (頑張れ!)


 という言葉で合いました。


 さて、何はともあれロウ村長の初めての出張(おつかい)です。村の入り口ではロウ村長とその仲間達を見送る為に山の民達が集まっていました。


 「ではワシが留守の間は頼んだぞ、ロダよ」


 その一番前に陣取っていたのはなんとロダでした。

 ロダは元々年長組の中でもトップレベルの実力者でした。それが更にロウ村長を除いて唯一山の外での経験を積んだ猛者となったのです。最早次の村長はロダだろうとみられていたのです。

 とはいえまだまだやっと今年に成人を迎える若者です。今はまだ大人の師事が必要でしょう。


 「ロキ医師、ロジン。良く導いてやってくれ」

 「ほっほっほ。こちらは任せて安心して行って来なされ」

 「ああ。ロダは出来る男だ。帰って来て村長の座が変わっているやもしれんな」

 「何?それは暁光。ならワシはそのまま冒険者に……」


 ロキ医師とロジンの軽口に、ロウ村長はキラリと目を光らせました。


 「あなた……?」


 ですがその背後で迫力のある凄み笑顔な奥さんに立たれて冷や汗が滝となって流れました。


 「うおっほん!冗談はこの位にしてパッと行ってパッと帰ってくる!本当だからな!」


 何とも嘘くさい誤魔化しですが、奥さんは「絶対ですよ」と念押しして見送り側に戻ります。ロウ村長の目が本気だったのは山の民全員が察しているのです。


 「うむ!では行ってくるぞ!」

 「「「行ってきます」」」


 そそくさと踵を返したロウ村長に続き、同行する山の民達も手を振って一時お別れです。

 勿論三巳もブンブカと手を振って付いて行きます。大人組は山の外への行き方を知っているので楽ちんだと、尻尾をフリフリ鼻歌フンフンさせながらお散歩気分でレッツらゴーゴー♪な三巳なのでした。

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