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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
199/372

ダム湖が凍ったよ♪

 キンと冷えた青空の下、今日は三巳と山の民達は子供達を連れてダム湖に来ています。


 「皆履けたかー?」


 尻尾をフリフリさせてご機嫌な三巳がちょこまかと確認して歩き、上手に履けない子にはお手伝いをしています。


 「三巳〜こっちもお願〜いっ」


 子供達だけでなく大人達も珍しく三巳に甘えています。

 それもその筈。何と今履こうとしているのはスケート靴なのです。靴底に細長い金属が付いた靴は普通は履きません。履きなれない上に脱げない為に紐で結く必要も有ります。


 「ほーい。ちょいと待っててなー」


 ウキウキさせてちみっ子に靴を履かせている三巳はもう既にスケート靴を履いています。冬の寒さでダム湖が分厚い氷に覆われた事に気付いた三巳が、ペカーン!と目を光らせたその足で鍛冶屋のローグと靴屋のロブとミケ夫妻に作って貰った逸品です。

 勿論快く作ってくれた3人です。けれどもこんな歩き辛い靴如何するんだと疑問に持つのも当然でしょう。そして三巳に聞いた内容がそのまま山の民全域に広がった結果の今日なのです。

 ダム湖の周りの雪を固めて作った即席の休憩スペースでは、ロウ村長を筆頭に念入りに準備体操をしています。慣れない靴にバランスを崩すかと思いきや、鍛えられた体幹はビクともしていません。しているのは一部の子供達位です。


 「よーし準備出来たなー?それじゃあ自由に遊ぼー!」


 皆の足元を確認して満足そうに頷いた三巳は、一番乗りで氷に足を乗せました。そしてそのままツイーッと氷の上を縦横無尽に滑ります。


 「ふわー!」

 「面白そう!」


 それを見た山の民達も勢い良くその後に続き足を踏み入れました。


 「「「!?」」」


 そしてその殆どがすってんころりと転びました。

 運動神経と体幹が鍛えられていても、やっぱり初めてのスケートは別だった様です。


 「おいおいどうしたのだ」


 その中にあってロウ村長はケロリとした顔で普通に滑っています。幼い頃から三巳に付き従って遊び歩いた能力は別格だったのでしょう。


 「多分この滑り易さがバランス取るのにコツがいるんじゃないかな?」


 同じく三巳と大冒険をしてきたロダも、リリの両手を支えて後ろ向きで滑りながら言いました。その横をネルビーが涎を垂らして大興奮に滑り遊んでいます。


 「あや。大丈夫か?感覚掴むまでは壁伝いに滑ると良いんだよ」


 尻餅を付いている山の民を見た三巳もやって来ました。指差すダム湖の周囲は雪で出来た壁と手摺があります。

 上手く滑れない山の民達は有り難くその手摺に捕まり練習を始めます。

それに安心した三巳はまたスイ〜ッと何ちゃってフィギュアスケートの真似事をしながらダム湖の端まで滑って行きました。

 だから三巳は知りません。


 「なあ、俺が支えるから一緒に滑らないか?」


 とか言って手摺に捕まり足をガクブルさせている女の人に手を差し出す男の人がいた事も。


 「……良いの?」


 トゥインクという音が聞こえそうな雰囲気を醸し出し、差し出された手にそっと手を重ねる女の人がいた事も。


 「そうそう上手に滑れてるよ」

 「ありがとう」


 などと密着している位に近い距離感で頬を赤く染めて滑る男女の事も。

 フィギュアスケーターごっこに悦に浸っている三巳はちっとも知らないのでした。


 このスケートイベントでカップル、又はカップル未満の恋心を芽生えさせた若者が多く出て、スケートで一緒に滑ると恋が成就するというジンクスが出来た事など、この時の三巳は全くもってちっとも知らないのでした。


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