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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
19/372

三巳幼少期の夢を見る。

 三巳は良く夢を見ます。

 それは野原を掛けたり、美味しい物をタラフク食べたりと取り留めも無いものが殆どです。

 ですが時折過去の夢も見ます。

 前世の夢は殆ど見ませんが、今世の母神といた頃の夢は時折見ています。

 

 母神との夢を見ている時、三巳は幸せそうな顔で枕をアムアムと噛んでいます。

 両手も枕を揉み揉み揉んでいます。

 そして朝起きた時に枕が涎塗れになっているのを見て、おねしょをした子供の様な顔をしています。


 今日もまた、母神の夢を見ている様です。

 枕がすっかりグッショリしています。

 どんな夢を見ているのでしょう。ちょっと覗いてみましょう。




 ~三巳の夢の中~


 「ぴきゅ(ママ)ぷきゅ(マンマ)」


 ちっちゃなちっちゃな赤ちゃん獣の三巳が、覚束ないちっちゃなちっちゃなあんよでとてちて歩いています。

 途中ふらふらと転けそうになると、「ぴ」と鳴いてその場でバランスを取り直しています。偶に取れずに転んでいますが。

 まだ獣としての経験が浅い三巳は、前世の二本足の感覚が抜けずに中々上手く歩けるようになりません。

 たまに二本足で歩こうとしては後ろにひっくり返って母獣に助け起こされています。


 「もうご飯か。先程乳を飲んだばかりだろう」


 母獣は慈しみの目で三巳の鼻先をべろんと舐めました。


 「きゅ~~♪ぴきゅ(ママ)ぷきゅ(マンマ)」


 三巳は嬉しそうにその場でコロンとお腹を見せて母獣の顎にじゃれ付きました。


 「なんだ。ママが上手く言えないだけか」


 母獣は相好を崩して三巳のお腹を肉球で綿毛を触る様に優しく撫でます。

 これには三巳の興奮が最高潮になりました。


 「きゅ~~♪(肉球気持ちい~!)」


 三巳はふわモコの母獣に思わず前世の感覚で、癒される為に母獣に近寄ったようです。

 肉球をあんよでぷにぷにして遊んでいます。


 「ふふ。くすぐったいな。赤子とはこうも愛らしい者なのだな」


 母獣は三巳がぷにぷにしやすい位置で肉球を留めてその下の三巳を愛おしそうに見つめました。

 母獣の様子など露知らず、三巳は肉球に夢中です。

 体が赤ちゃんだと心の年齢も下がってしまうのでしょう。人間だった時の面影など言動行動すら何処かへ旅立ってしまった様です。


 「うきゅきゅい~(お腹空いた~)」


 一頻りぷにぷにと運動したからでしょうか。もうお腹の虫が鳴っている様です。

 これには母獣も苦笑が禁じ得ません。

 ゴロンと横になって、三巳が吸いやすい様に乳を下側になる様に体制を整えました。


 「ぷっきゅう~(マンマ)♪」


 前世と違って今の三巳は欲望に忠実です。すぐさま御飯(オチチ)に飛びつきます。

 元気よく「んくんく」と飲んだ三巳は、疲れも相まって飲みながらお目々がとろ~んとしてきました。


 「きゅるぅ(眠いぃ)うっぷきゅぅ(でもマンマ)」


 三巳はちっちゃな体で睡眠欲と食欲の鬩ぎ合いに一生懸命に戦っています。勿論乳を飲む口は止めていません。


 「きゅ……zzz……ぴぅ……zzz……zzz」


 お腹も膨れてきたせいか、ご飯の途中で眠気が勝ってしまったようです。

 とっても満足気で気持ちよさそうで幸せそうな寝顔で、コロンとお乳から寝落ち離れしました。

 寝ていると、三巳は何か暖かくて柔らかくて優しい物に包まれている感覚がしましたが、それが何かはすっかり寝てしまっている三巳には判りませんでした。




 ~夢の中終了~


 「ふあ、懐かしい夢を見たなー。

 あれ、多分母の尻尾の温もりだよなー」


 三巳は懐かしい夢にほっこり郷愁の念を感じました。


 「今度久しぶりに母に会いに行くかな。

 兄弟が増えてたら面白いな」


 布団の中で尻尾をぱさぱさ揺らして窓の外、山の向こうのそのまた向に思いを馳せて言います。

 そして起きて布団を正そうとして、枕の惨状に気付いた時、しまったという顔で尻尾も耳も垂らすことになるのでした。

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