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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
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料理は愛情♪歓迎準備を始めよう!

 キッチンにズラリと並べられた食材達を前に、三巳はご満悦に腰に手を当てて尻尾をワサワサ揺らしています。


 「山菜よーし。お魚よーし。お肉よーし。卵も有るし、お?胡桃も有った!

 リリっ、リリっ、ひじき有ったかな??」


 並んだ食材を指差し確認していると、胡桃を発見しました。

 三巳は目をキラーンと光らせて舌舐めずりします。涎もタラリしています。


 「ええっと……確か戸棚に……あ、コレよね」


 目に温かなモフモフに癒され悶えていたリリですが、三巳に聞かれて直ぐに対応しました。モフモフを萎らせてはダメ絶対の精神です。

 記憶の通りに戸棚の奥にしまっていた乾燥ひじきを取り出すと、直ぐに三巳に手渡してあげます。


 「おお!ありがとなリリ!」


 嬉しさを全身で現し受け取る三巳に、リリは「可愛い!」と抱き締めたくなりましたが我慢しました。三巳の料理の邪魔をしない様にです。


 「にゅふふふふ~。今日は三巳の好物作りまくりの日だな。

 先ずは煮物系が先だな。カレーは二日目が美味いの法則だ」


 手始めに取り出したのは、玉ねぎ、人参、ジャガイモ、白滝、豚バラ肉です。


 「三巳流レシピで肉じゃが~♪おっと忘れちゃいけない隠さない味、ニンニクん♪」


 いつも通りの調子っ外れな歌に合わせて食材を刻んでいきます。

 下準備が終われば鍋に火を掛けて強火でニンニク、玉ねぎ、人参、ジャガイモの順に投入し、炒めます。ある程度火が通ったらお肉を投入し、お水を野菜が浸る位いれて沸騰するまで待ちます。クツクツいったら中火に変えて、砂糖、みりん(もしくはその日の気分で日本酒)、醤油をお好みで投入し味見をしながら味を整えます。


 「今日は漬け込むからちょっと薄味仕様だ。

 味が決まったら白滝入れて、飾り付けのスナップエンドウは母ちゃん来てからだから、これで後はジャガイモに火が通る迄弱火でコトコトだ」

 「それじゃあ、それは私が見てるわ。三巳は次の料理に移って大丈夫よ」

 「おお、それじゃあお任せしちゃうんだよ。

 三巳はイカと里芋の煮っ転がし作るぞ」


 煮込み待ちの料理はリリにお任せした三巳は、他を気にせず次々に料理を作っていきました。

 煮物系をあらかた作った三巳が次に手に取ったのは胡桃とひじきです。


 「にゅふふ~とうとう君達の出番だぞ。

 三巳の大好物。ひじきの煮付けちゃん♪前世の田舎のバッちゃ直伝。胡桃入り!都心じゃ胡桃入りって主流じゃ無くて、バッちゃのひじき食べた時の衝撃はひとしおだったよなー」


 前世を思い出し、哀愁に浸ります。


 「三巳?どうかした?」


 三巳の呟きが聞こえなかったリリは、急に懐かし目をしだした三巳が気になりました。煮物をお玉でクルクル掻き混ぜながら問い掛けます。

 三巳はハッとして目をパチパチ、耳をピコピコ動かしました。


 「んん?にゃははー、大丈夫。ちょっと美味しい物との出会いを思い出してただけだから」

 「そう?何かあったら言ってね?」

 「おう、ありがとな」


 流石に前世の話をしてもリリを余計に混乱させるだけです。そう思った三巳は適当に言葉を濁しました。


 「そんじゃひじき作るどー♪」


 気を取り直してボールを手にして意気込みます。

 そんな三巳流ひじき煮の作り方。


 乾燥ひじきを水で戻す。

 人参と油揚を細切りに小さく切る。

 胡桃を細かく砕く。

 人参を油で炒める。

 大方火が通ったら油揚を入れる。

 更に大方火が通ったら胡桃とひじきを入れて炒める。

 水をヒタヒタより少なめに入れる。

 ダシ、砂糖、みりん、醤油を入れて煮る。分量はお好みで、味見をしつつ調整。

 後は汁が少なくなるまで煮て終わりです。


 「ぬふふふふ~上手く出来たぞ。ああ、早く食べたいな~。うぅ~っでも我慢我慢~」


 出来立てホヤホヤの料理の匂いに、三巳のお腹が自己主張をしています。でも折角両親に作った料理達を自分で台無しには出来ません。三巳はギュッと目を瞑って堪えました。


 『わふ~っ、わふーっ。ちょっと、ちょっとだけっ』


 後ろでチョロチョロしていただけのネルビーは我慢出来ずに調理台に顎を乗せて舌舐めずりをしています。

 リリはそのネルビーの鼻面をそっと手で押し戻しました。


 「味見をいっぱいしたでしょう?後はみんなで食べた方が美味しいわよ」

 「うん。うん。そうだよな。我慢~、我慢~」


 リリに諭されて、三巳は素直に頷きますが、ネルビーは『ぐるるる』と喉を鳴らして不貞腐れ顔で訴え目を寄越します。


 「三巳も我慢だからネルビーも我慢だぞ。

 それともネルビーは母ちゃん喜ばせたくないか?」


 涎を我慢する三巳にも説得されたネルビーは、『きゅ~ん』と耳も目も悲しそうに下げて、トボトボと引き下がりました。尻尾も力なく垂れ下がっていて哀愁を誘います。

 時折チラリ、チラリと振り返るその姿に、あげたくなるのをグッと堪えるのが大変です。三巳とリリはお互いに手を握りあう事でなんとか耐えるのでした。

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