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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
10/372

診療所にて~謎の少女③~

 (……そろそろあの娘戻って来そうよね。

 ……どうしよう。手が動かなくて涙が拭けないわ。

 魔法も今は使えない様だし。

 お行儀は悪いけど枕で何とか拭いてみよう)


 三巳が出て行ってから一刻程の時間が経とうとしていました。

 三巳は常に裸足なので足音が判り辛いです。

 けれど少女をビックリさせない様に、態とペタペタ足音が出る様に歩きます。

 お陰で少女は三巳が戻って来たのが判りました。


 「こんこんこん。

 三巳だぞ。入るぞ」


 この村の部屋には扉は滅多にありません。

 診療所も患者の様子が判り易い様に、扉がありません。

 三巳は入り口手前で立ち止まり、言葉でノックの音を奏でます。


 「(どうぞ)」


 少女はまだ本調子では無いのでハッキリと喋る事が出来ません。

 それでも先程喉を潤したお陰か、掠れた、普通の人なら聞き取れない声で答えます。

 勿論三巳の獣耳はしっかり聞き取りました。

 顔をひょっこり出して、様子を伺ってから中に入ります。


 「少し声が出せたな。良かった。

 声が出ないままは辛いだろうから良かった」


 三巳は耳をピクピクさせて喜びます。

 尻尾も嬉しそうに揺れています。

 少女は愛犬を思い出してホッコリします。

 もうすっかり三巳に対して警戒心を持てない様子です。

 其れはそうでしょう。よく懐いたワンコの様な三巳に警戒心を抱く様な可哀想な人は、三巳の結界に阻まれて山に入る事は出来なかったかもしれません。


 「粥作って来たから、食べれるなら食べた方が良いぞ」


 三巳はベッド横のサイドテーブルにお盆を置いて椅子に座ります。


 「3分粥だけど、ハーブも少し入れてあるから味気なくは無いと思う」

 「(ありがとう)」


 今度は警戒せずにお礼を言えました。

 ニッコリと笑った三巳は、レンゲに粥を救って「ふー」っと冷ましてから少女の口に運んであげます。

 少女は其れを含み、味わってから飲み込みました。


 (美味しい。久し振りの人間らしい食べ物だわ。

 3分粥とは思えないわ。ほんのり甘くてス~とする味わいが心地いい)


 少女は夢中になって食べていきます。

 これには三巳も大喜び。少女が口を開けると空かさず粥を入れていきます。


 あっという間に粥茶碗は空っぽになってしまいました。


 「これだけ食べれて具合悪くなっていないなら、次からはもう少し栄養のある物入れても大丈夫そうだな」


 満足感でポーっとなっていた少女は、三巳の言葉に顔を赤らめて喜びます。


 (もっと色々食べれるのね!)


 嬉しそうな少女に、三巳も嬉しくなり、背後の尻尾がもふんもふんと大きく揺れています。


 「薬湯も飲むか?」


 三巳が聞きますが、少女は首を横に振りました。

 先程飲んだばかりですし、粥でお腹も膨れていたのです。


 「そっか。じゃあ三巳は茶碗片してくるけど、寝てていいぞ。

 いっぱい食べて疲れたろ」


 三巳はお盆を持って立ち上がりました。

 少女は緩く首を縦に振って、素直に眠りにつきました。

 其れを見届けてから、ロキ医師の元へ向かいます。

 患者さんの様子を報告しないといけませんものね。

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