昼間の仕事2
…どーしよ…
今回は別にキレてないし…
会っても話す事ねーよ…
でもエーちゃん…やけにムキになってるな。なんかありそうな気がするんだけどな…
会うなら会うで話聞いてみるか…
…
相手も忙しいので土曜日の午後に病院に行って話す事にした。
相手にとっても迷惑な話だ。
普通なら相手にしないし、話もしてくれないはず…
でもよほど良い人なのだろう。
アポなしで行って話をしてくれた。
先生「初めまして。話があるって聞いたけど?」
『そんな大事な話って訳じゃないですけど…昨日の金曜日にエーちゃんと何か約束しましたか?メールを送ったはずなんですが…』
先生「メールは入ってきたよ。でも約束はしてないな…」
『じゃあエーちゃんが一方的にって事ですね?』
先生「そうだね。でも俺も君の立場なら気になるよ。」
『はは…俺の場合は違いますよ…俺頭おかしいだけですから…俺も何がしたいのか分からないし、いつも嫌な方向に物事がいって……』
…
…
『今日はお忙しい所すいませんでした。有難う御座います。』
先生「気にしなくていいよ!頑張って!」
…
何してんだろ俺…
本当に頭がおかしいな…
自分でも頭がおかしいって分かっていた。何でこう考えるのか?とか自分で分かっていながらも、
まだ鬱が影響して、裏切られる前に予防しないと恐い…が頭から離れない。自分でも否定はしてるんだが考えている事と行動はバラバラになっていた。
多分…この時は薬をほとんど飲んで無かったからかもしれない。
でも飲んでいたらこんな馬鹿な行動はしなかっただろう。
俺の人生の汚点だよ…
その後のエーちゃんは外来から手術室に移動になった。あの先生の所だ。
エーちゃんも手術室は初めてだったので家で勉強を沢山していた。
でも俺的にはかなり不安だった…
手術室は時間が読めないのでかなり帰りが遅くなったりするし、何よりあの先生の専属の助手なので仕事のほとんどを先生と過ごす…
そんな日々が1ヶ月ほど過ぎた。
なんか…エーちゃんが仕事に行くのを楽しんでいるように見える…
口では帰りも遅くなるのからかなり文句言っているが行動はとは違っていた。
それは仕事内容を見ていない俺でさえ分かるのだから職場の看護士達からみたら丸分かりだろう。
エーちゃん「今日仕事終ったら会議があるから遅くなる。」
『なんの会議?』
エーちゃん「わからないけど看護士同士で話し合いするみたい。」
『分かった…』
帰りが遅くなるのは嫌だが仕方ない。
会議の日…エーちゃんは9時ぐらいに帰ってきた。
『どんな事話たの?』
エーちゃん「最悪だったよ…何か私だけ悪者扱いだし…」
『なんで?』
エーちゃん「私が先生の助手してるのが気に入らないらしい…」
『…それで?』
エーちゃん「他の看護士から見ると私は先生にベタベタしてるって!いつも一緒にいるって!別にベタベタしてないしさ!助手なんだから一緒にいるのは仕方ないじゃん!」
『ふーん。』
エーちゃん「ムカついたから手術室から違う場所に移動してもらう事にした。」
『そうなんだ…』
エーちゃん「その話をママにしたら…ママは私が先生の事を好きなんじゃないかって言うし…酷くない?」
『そうかな?俺やお母さんが見てもそう思うのに職場の人が見たらバレバレなんじゃないの?普通に仕事してたらそんな事言われないでしょ…文句言われるほど…ベタベタしてるんだよ。俺の時と一緒で好きなのに気が付いて無いんじゃない?』
その一言を言ったら何も言わずにエーちゃんはうつむいてしまった。
俺もそれ以上は何も言わなかった。
多分…図星だったのだろう…
俺も別にショックは受けなかった。なんとなく分かっていたし…もうエーちゃんの事を好きじゃ無かったのかもしれない…
その後のエーちゃんは看護士とも仲が悪く居場所がない為辞める事を決意した。
エーちゃんも誰からも信用されないから寂しかったと思うよ。
なんの相談もなく、自分で決めて…
そして…
…
…
その日の朝俺とエーちゃんは仕事場が近いのでいつものようにエーちゃんを病院の前まで送った。
『着いたよ。』
エーちゃん「ありがと!」
…
…
エーちゃん「ふくちゃんごめんね。」
『何がごめんねなの?』
エーちゃん「何でもないよ!」
なんとなく不思議な気持ちだった…
何で謝るんだろ?
何か…ありそうだな…
俺はなんとなく…昼休みの時実家に電話してみた…
母「エーちゃん帰ってるわよ!あんた何したの?荷物まとめてるわよ!」
…
やっぱりな……
いつかこうなると思っていたけど…
…
こういう事か…
あの「ごめんね」には意味があったんだ…
エーちゃんに電話を代わって貰った。
『何でいんの?』
エーちゃん「ふくちゃんに送って貰ってそのまま辞めてきた。」
『何で?』
エーちゃん「もう疲れたよ。全部……。私は何処まで我慢すればいいの?もう限界だよ…」
『…で?荷物まとめてんの?』
エーちゃん「もう…出て行くよ。」
『息子はどーすんの?』
エーちゃん「勿論連れて行くよ…」
…
それは…困る…
『いや…無理無理。連れて行くなって!』
エーちゃん「私も無理だから!」
…
…
『じゃー今帰るから息子の事話そうよ。』
エーちゃん「分かった…」
今息子を連れて行かれたら立ち直れない…
どーしよ…
どーにか息子と一緒になれないかな…
…
…
でも…エーちゃんも同じ気持ちなのかな?
なら多分エーちゃんも引かないだろうな…
帰る間約1時間半…
その間ずっと考えていた。
最初のうちは
あの馬鹿は何考えてるのか?
限界だろーが何だろーが我慢するって約束したんだから我慢しろよ!
息子を連れて行く何て許さない!
とか考えていたが時間がある為少しづつ冷静になってきて…
あいつも限界だけど俺の方が限界なんだ!から…
あいつも限界なのか…
分かってやれなかったな…
追い詰めたのは俺なのか?
俺が…悪いな…
あいつの気持ち…考えた事無かった…
きっと…俺みたいにエーちゃんも辛かったんだよ…
いつもは長い道のりもこの時だけは短かった。いつの間にか着いていた。
1時間半あったのでエーちゃんはもう車に荷物を運び終わって部屋の中は綺麗な状態だった。
『ただいま。』
エーちゃん「おかえり。」
…
…
色々話す事あるのに…
ずっと無言だった。
どのくらい無言だったかな…あまり良く覚えてないが、
次に口を開いたのはエーちゃんだった…
エーちゃん「話す事無いなら…そろそろ出て行くよ…」
『…息子連れていくんだろ?』
エーちゃん「うん…。」
『色々考えたけどやっぱり無理だ…連れていくな。』
エーちゃん「私も無理!」
…
その後…2時間ぐらいは息子の事を話しただろうか…
お互いに折れず…話は平行線のまま、また無言になって…
話疲れてエーちゃんも俺も寝てしまい、気が付いたら夜になっていた…
結局その日は出て行かずまた話合いをしてから出て行く事になった…
でも俺もエーちゃんも何回話しても同じ事の繰り返しで折れず…
エーちゃん「何か…幾ら話しても纏まらないね…」
『いや…多分ずっと纏まらないだろ。』
エーちゃん「はぁ…考えるのもめんどくさくなってきた…もう出て行くのは辞めるよ…」
『…分かった…』
つまらない話だが、俺にとったらエーちゃんの気持ちを初めて考えた良い出来事だった…
そしてこの話合いで得た物が今後の俺を変えるきっかけになって行くのであった…




