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チューリップ


夏のボーナスゾーンは見事に散った…

オーさんからかなり馬鹿にされたが、いつもみたいに仕事における情熱は沸いて来なかった。


でも…客が来ないのは精神的にダメージを食らう…

正直…今の俺には耐えられないプレッシャーだった…


オープンから今まで赤字は出した事はないが、最低利益の30万を出してしまった。

利益があるならいいじゃないか?と思う人も居ると思うが、実際はそうじゃない…

ボーナスゾーンと言う客が金を落とす時期でこれだと…先が思いやられる。


しかも…水商売は稼がなくてはやる意味がない。たった30万という利益は水商売には無に等しい…だったら他の商売したほうがまだマシだ…


そして…俺はその全てをエーちゃんにぶつけていた…


『全部テメーのせいだよ!』


エーちゃん「…ごめんなさい…」


そして8月も予想通り…撃沈した…


また…同じぐらいの利益だった…


ショウさん「駄目だな…これが来月も続くようなら店閉めて違う商売するぞ。」


『…すいませんでした…』


だが…やる気が出ない…


もう…諦めるしかないのかな…



〜9月〜


女の子達の様子が変だ…


あゆ「店長…お店お客さん来なくて平気なの?」


『平気じゃないよ。もっとお客さん呼んでね!』


あゆ「うん!分かった!」



いつものあゆじゃねぇ…

怪しいな…


今No.1に辞められるのは…かなり痛い…むしろあゆで持っているようなもんだ…

俺も最後の技…友達を呼んだが、これが不味かった。


嫌な事が続くもんだ…


友達の名前は「ひかる」。うちの店は自慢じゃないが可愛い娘がわりと居ると思う。他の俺の友達なんてマジ惚れして通った奴が居るぐらいだ。


まぁ…結局…フラれて撃沈したが…



大体友達の好みは分かる…ひかるの好みはギャルだ!店で1番ギャルの若い可愛い娘を付けたら… もろストライク…出勤する時はかなりの確率でひかるも遊びに来るようになった!




ひかる「おう!ふくちゃん?今から行くわ!また安く頼むよ!」


『分かった!待ってるよ!』


その日は0時にやって来た!

事件は…その日に起きた…


ひかる「お疲れー!」


『お疲れーぃ!澤!案内して!』


今日は暑いし、気を利かせてひかると俺のビールを持っていった…


ひかる「何だよ!くんなよ!」


『最近ちょいとブルーだから一緒に飲ませろよ!』


ひかる「少しぐらいなら居てもいいよ!」


『おう!ずっといる!』


ひかる「やっぱ駄目!」


でも俺は酒を飲んで、居続けた!途中ビールでは物足りなくなってウイスキーロックをがっつり逝った!


ひかるは2時まで居て店が終わった後も飲む事になった!

遠い女の子は澤に送って貰って、近い女の子だけ俺が送る事にしたが…

ひかるだけ待っててもらうのは悪いから一緒に行ってもらう事にした。



帰り道…


『付き合ってもらって悪かったね!』


ひかる「別にいいよ!」


『またチューリップ行って飲み直そうぜ!』


ピリリリリリ…


携帯が鳴ってる…


誰だ?


ん!引っ掛かって…電話が取れねぇ!




やっと取れた!


エーちゃんからだ…


『もしもし…』


!?


前を見ていなかった!


細い道で車がすれ違うのがギリギリなのに右側に車が止まっていたのに気がつかなかった。


もう…止まらねぇ…

避けるしかない…


車が右側にあったので左にハンドルを切ったが…



間に合わなかった…



『う…うぁ〜ぶつかる〜』


とっさに出た言葉がこれだった…


俺は…曲がり切れずに右側の運転席側をぶつけたがハンドルを左に切っている為にそのまま左のマンションの縁石に乗り上げ…



車は…横転した…




『ひかる!生きてるか?』


ひかる「い…いてぇ…」


『車から早く出ろ!ガソリンが漏れていたら爆発するかもしれない!』


ひかるは左側の窓を開けて登って外に出た。俺も続いて外に出た…



なんか…聞こえる…



携帯だ…


…エーちゃんだ。忘れていた…


『もしもし…』


エーちゃん「どうしたの!!!」


『事故った!』


エーちゃん「大丈夫なのっ??」


『大丈夫じゃねーよ!!何で電話すんだよ馬鹿!テメーのせいで事故っただろが!!』


エーちゃん「…ごめん!何処で事故ったの?」


『チューリップの直ぐ近く…』


エーちゃん「直ぐに行く!」



とりあえず…俺の身体は…何とも無い…


ひかるは?


『ひかる!お前さっき痛いって言ってなかった?平気か?』


ひかる「…右足首がいてぇ…」


『病院行くか?』


ひかる「保険代が高くなるから別にいいよ!」


『気にすんなよ!行こうぜ!』


ひかる「いや…平気だ!とりあえず…警察呼ぶか?」


『そうだな…』


警察が来る前に荷物を出さないと…


車に入って財布と煙草を持って出て来た…荷物がそれだけって…

かなり寂しい車だな…




エーちゃんが来た…


エーちゃん「ふくちゃん!大丈夫??」


『身体は平気だよ。ひかるは足が痛いみたいだけど…』


エーちゃん「ひかる君大丈夫?足見せて!」


ひかる「うん…」





エーちゃん「大丈夫そうだね…」


ひかる「ありがと。そろそろ警察来るんじゃね?」


『だな…』


酒を飲んでいる為に秘密の道具を使った…

これで酒帯びで捕まる事は無いだろう。




結局…このあと直ぐに警察が来て実況見聞して車はレッカーされた…


終わったのは…5時…


仕方ねえか…


ん………?



財布が…


無い……


直ぐに現場に戻ったが財布は無かった…


最後に見たのは…


車から荷物を取り出して外で確認したのが最後だ…


また…やっちまった…


売上こそ財布に入って無かったから良かったが…


現金が…


14万入っていた……


マジかよ…


最近ツイてなさすぎ…


なんだ?俺は誰かに呪われてるのか?


でも不幸中の幸い…

大した事無くて良かったよ…


足も無くなったし、エーちゃんの車借りるしかないか…


マーチ…


小さいな…

仕方ないか…



店の方は…やっぱりかなり微妙だ…

最近…悪い事ばかり起きるし、嫌な予感がする。


予想は…




的中した。


その日は女の子の給料日が終わって初めての花の週末土曜日…

あゆとあゆの仲が良かった女の子2人が同伴してきた!

今日は調子いいね〜!っと思っていたが…あゆの指名客が他にもやってきた!


こんなのは久し振りだ!


それに釣られてフリーの客も沢山やって来てチューリップはかなり忙しくなって俺も安心出来た…





でもチューリップにとってこれが最後の盛り上がった日になってしまった…


その日を境にあゆを含めて4人が来なくなった…

来なくなった日…なんか…嫌な予感がしていた…

時間になってもあゆは出勤して来なかった。


電話しても出ない。


やっぱり…こうなったか…


残った女の子の中で1番仲良かった女の子が出勤してきて、俺に手紙を渡した。


女「あゆから渡されました…店長に渡してって…」


『そうか…』


俺は…直ぐに手紙を読んだ…


〜店長へ〜


まず…謝ります。

ごめんなさい…


でもバックレた事…きっと店長は優しいから怒ってないでしょう。


今いる女の子もそうですが皆この店、長いですよね?こんなのは珍しいですよ!1年近く居たなんて私は初めてでした。


なのに…何も言わないで…


本当にごめんなさい。


今まで色々な事が沢山ありましたよね?

店長と行ったカラオケ楽しかったです。

店長と行ったラーメンは本当においしかったです。


店長は凄く優しくて私の事を初めて理解してもらった人でした…


でも急に店長が変わってしまって少し寂しかったです。

もう分かり合えないのかな?そう思って何回も辞めようとしました。


でも…気が付いたら…店の娘とも仲良くなって、店にいるのが私にとってオアシスでした。


そう思ったら店長の態度はいつもと変わってなくて…



何が言いたいんだろね?

店長…私は…変れたのでしょうか?


辞めるのに手紙を書いたのは初めてです。これからは私も頑張れるので店長も頑張ってください!


今まで本当にありがとう。


〜あゆより〜


びんせん2枚にわたって書いてあった…読んだ後は怒りなど無い。むしろスッキリしていた…逆に諦めがついたのだ…





もう…店は駄目だな…

ショウさんに伝えないと…


ショウさんは上の店に居たので直ぐに向かった。


『ショウさん…話が…』


ショウさん「なんだよ?」


『あゆを含めて4人辞めました。』


ショウさん「もう…駄目だな…」


『すいませんでした。全部俺のせいです。』


ショウさん「おう…今月一杯で閉めるぞ!次の商売は考えておく!もう気持ちを切り替えろ!」


『はい…』



今月一杯か…


そう言われると…



辛いな…


1年とちょっとの間だったけど…


頑張った分…辛さはデカい…


とりあえず…女の子には直前まで言うのはやめよう…バックレられても困るしな…


澤には伝えておくか…




その後の店は酷いありさまだった…


客は来ないから売上が増える事もない。


オーさんからは嫌味を言われて…


俺に重くのし掛かった。


今の俺は耐えるのもやっと……毎日仕事が終わった後…1人チューリップで


明日があるさ


ガッツだぜ


空を見なよ


を泣きながら歌って自分にやる気を出させていた…


多分…歌が無ければその時の俺は明日に希望は無かったと思う。この歌のお陰で俺は首の皮が繋がっている状態だった…


俺に休める場所など無かった…


家に帰ってもエーちゃんがいるし…


仕事中は苦痛だし…


辛くて…寝る事も出来ない…


唯一気が休める場所は…トイレの中だったかな…トイレから出る時はまた戻らないといけないのか…と思っていた。



閉店3日前…


初めて女の子に話した。


『実はね…3日後にチューリップ閉店するから…残り3日間頑張ってお客さん呼んでね!』


女「えっ!?本当ですか?」


『うん!本当だよ!』


女「…そっか…分かりました…3日間頑張ります!」


残りの3日間は常連さんが沢山来てくれた!中には3日間毎日来てくれたお客さんもいた…

なんか…お客さんも女の子もすげー温かくて、でもそれが辛くて…俺はトイレに行って泣いた…


そして…


最後の日も…


終りを迎えた…



女「店長!お疲れ様!」


そう言って花を渡してくれた。


『…ありがとう…』


女「店長はいつも頑張っていたもんね!」


『そうだね…』


女の子の送りは全部澤に頼んだ…

俺が送ってら多分…泣いていたからだ…


そして1人チューリップに残り…


俺は酒を飲んだ…


今まで…ほとんど休みもなく…俺は頑張ってきた。


俺はやっと…プレッシャーから開放された 。




次の日はチューリップの後方付けだった。

売上表を付けて月のトータルを出したら…黒字だったが微々たるものだ。


とりあえず…赤字を出さなくて良かった…


澤はとりあえずオニキスで働いて俺は掃除が終わった後飯食ったりプラプラしていた。

そしてチューリップにショウさんとオーさんがやってきた。


『お疲れ様です!』


ショウさん「じゃー次の商売でも決めるか!」


オーさん「とりあえずお前デリヘルやってたろ?デリヘルは利益どのくらい出るんだ?」


デリヘルかよ…


すげーやりたくない…


『そうですね…1日30本平均くれば1日の利益は平均25万ぐらいですから月で750万前後じゃないですかね…』


ショウさん「すげーなそれ…」


『そこまで逝くのにかなり時間も必要ですよ…』


オーさん「だろうな…」


『半端ない労働ですし、俺1人じゃまず無理ですね…宣伝もかなりしないと客は来ないし…』


ショウさん「上手く逝けばどのくらいで軌道に乗るんだ?」


『宣伝の量にもよりますが、かなりの量の宣伝しても…2〜3ヶ月掛かるんじゃないでしょうか?』


ショウさん「とりあえず…お前の給料と澤の給料が稼げればいいよ!やらないよりはいいだろ?」


『そうですね…』


オーさん「じゃー決定な!誰とやるかはショウさんと決めておくから!」





本当にやりたくない…


エーちゃんの事…思い出しちゃうし…




嫌だな…



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