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最低な男8




しかし…まずいな…


客に舐められて…

女の子に舐められて…

俺以外の従業員からも舐められて…


何とかしないと…


待ち合わせ場所のチューリップに着いて澤と居酒屋に向かった…


『好きな物頼んでいいよ!』


澤「じゃ〜一口ステーキください!」


歯が無いのに…

た…食べれるのか?


『ステーキなんか食べれるの?』


澤「一口サイズなら何とかいけます!」


『そ…そっか…』


残りの歯…大事にしろよ…

やばいクセが出てきた…


『食べ物とか何が好きなの?』


澤「カレーです!」


カレーなら確かに食べるのに困らなそうだな…


澤「食べやすいですからね!」


そのまんまかよ!


『そ…そっか…』


本題に入らないと…


『澤…お前はちょっと舐められ過ぎだぞ!』


澤「はぃ…」


『今までキレた事あんの?』


澤「特にキレたりしないですね…」


『キレる事は良い事じゃないけど、この仕事していたらたまにはキレる事も必要だと思うよ…客に舐められて…女の子に舐められて…何とか出来ないか?』



『もっと男らしい所を見せたら皆も舐めたりしないよ。その一つとして客が最低限のマナーを守れなかったら…キレても良いよ。それによって女の子も見方が変わると思うよ!』


『お前に出来る?』


澤「出来ます!」


『じゃー次客と揉める時は合図出すから、澤…キレろ!言っても分からない奴にはキレるしかないから。』


澤「分かりました!」


澤もやる気あるじゃん!これなら何とかなりそうだな…


〜数日後〜


チャンスがやってきた…

客のタッチが多すぎる!


『澤!注意してこい!』


澤「分かりました!」


澤は普通に注意した。

…が少し経って…またタッチし始めた!


『澤!もう1回注意してこい!』


澤は強めに注意した!

…が…またタッチし始めた!


『澤!キレてこい!』


澤「分かりました!」



澤「何回%&'$#だ!」


何喋ってるか分からねぇ…

キレて早口になりやがった。



逆効果だ…

直ぐに間に入った…


『澤…下がってろ。…お客さん!何回言えば分かるんだよ!金払ってさっさと帰ってもらえる?』



とりあえず大事に至らなかった。


『澤…キレても早口になったら何喋ってるか分からないよ…もっとゆっくり喋ろ。分かった?』


澤「分かりました!」


本当にこいつ…

この商売やれんのかな…?




11月も順調に進んだ…

売上もそこそこ…

これなら12月…期待出来る!


この風俗業界はボーナス月が1番忙しくなる…

特に12月はやばい…金が入る時期には皆落とす…


そして…12月は…



俺が親になる月でもあった…


予定日出産の為…


12月20日が生まれる日だった。


本当に…嫌だった…

心の準備も出来てないし、凄く逃げたかった…


仕事中はかなり忙しく、考える事が出来ない分…仕事中は楽だった。


でも仕事が終わると…

親になるプレッシャーがのし掛かって来る…


その分…あゆといる時間は伸びていった…

あゆとの時間はただ話すだけ…求めている物が違うからセッ○スもしない…

家に帰って寝ても直ぐに起きてしまい、朝からスロット…


そんな生活を送っていたが…

その日は直ぐにやってきた…

予定日出産なので3日から入院する病院だった。


俺も毎日、お見舞いに足を運んだ。周りの人達は凄く明るく見えた。病院内で1番元気が無かったのは…俺だろう。エーちゃんも気を使ってくれた…


エーちゃん「ふくちゃん…顔色悪いよ…家に帰って少し休みな!」


『うん…そうするよ…』


俺にも…どーしていいのか分らなかった…


子供が生まれる当日は恐くて寝る事が出来なかった…


そして…朝を迎えた…


病院に着くと陣痛が始まっていた!

俺はずっと隣りに居たが


『頑張れ!』


としか言えなかった…

昼を過ぎた頃…看護士さんに


看護士「まだ生まれなさそうだからご飯食べて来てもいいですよ!」


『平気ですよ。』


エーちゃん「長く掛かりそうだから食べて来ていいよ!」


『そお?じゃー食べてくる…』


病院を出て直ぐのラーメン屋で飯を食べる事にした…

ビールを頼み、一服して…休憩を取り始めたが、


ため息しか出て来ない…


ラーメンが出てきても…あまり食べる事は出来なかった…


無性に歯がゆい・・・

これが俺が望んでいた結婚なのか?

こんなんで俺は親になれるのか?


全てに・・・自信が無い…


そんな時…病院から電話が入った…


看護士「奥さん子供生まれなさそうです!早く来てください!」


!?


直ぐに向かった!



分娩室に入り、エーちゃんの元に駆け寄ったら…





もう…生まれていた…


看護士「男の子ですよ!」


そう言って赤ちゃんを渡された…


抱き方なんて…知らない!


焦ったけど…


抱いたら…

柔らかく…

温かかった…


その瞬間…

悩みが全部吹き飛んだ…


何でこんなちっぽけな事で悩んで居たんだろう…


親になるって…


この子を愛してあげる事だったんだ…


…俺は逆に子供に救われたかもしれない…


エーちゃんは少し休むという事だったので、俺も帰る事にした…


帰り際


『良く頑張ったね!お疲れ様。』


エーちゃん「ありがと。少し休むよ。」



そして…

俺は帰りの車の中で…

号泣した…


プレッシャーから開放された俺は…忙しかった!

送りの時…あゆと2人になったが、早く家に帰りたかったので普通に送ろうと思っていた。


あゆ「何か良い事あったの?」


『あったよ!悩みから開放されただけだけどね!』


あゆ「ふーん…そうなんだ…」


この時のあゆは羨ましそうに俺を見ていた…

多分この日からお互いに壁が出来て触れる事も無くなった…

俺はさっさと帰り1人で酒を飲みながら名前を考えたり、

とにかく…早く子供に会いたくて仕方が無かった!


もう…こっからは親バカね。

誰も居ない部屋で俺は1人で喋っていた。

気分が変わると酒も美味し酔いも早い!


『俺の息子はプロ野球選手になる』とか


『こいつにはイチローを超えさせる!』とか


『プロ野球選手になったら契約金で家買って貰おう!』とか


『打倒松坂!』とか


…野球の事しか想像出来なかったが、考えるのは凄く楽しかった!


勿論毎日お見舞いに行った!生まれた後と前では笑顔が全然違ったと思う。息子は新生児室に居る為に窓越しからしか見れないがそれが楽しみだった!


しかも…この時…店の方では奇跡が起きようとしていたのだ!

気分も変わると全てが変わるものなのか?




俺はいつもオーさんに馬鹿にされていた。


オーさん「おう!今日はどうだよ?たまには俺の店より利益出してくれよ!頼むぞふく!」


この業界は結果が全て…


馬鹿にされようが結果を出さないと何を言われても仕方が無い…

しかしオーさんはすげー人を馬鹿にする…


オーさん「おい!澤!ふくの店で役に立ってるか?ちゃんと仕事しろよ〜ふくの足引っ張るなよ!」


『忙しいからだいぶ助かってますよ!』


オーさん「忙しいってのは俺の店のような事を言うんだよ!」


『そうですか…』



など言われて来たが…

ついに…来た!

12月は逝けるかもしれない!


但し…このまま平均が落ちなければ…

ま〜今の俺は落ちる事を知らない!ぜってー負けねぇ!


毎日がドキドキだ…


年末は曜日など関係無く客が来る!毎日仕事が終わってから1人でウハウハ飲み会!

早く…オーさんに結果見せてぇ!



年末に掛けて特に心配など無かった…むしろ…売上も上がってきた!

そして…30日…今年最後の日が来た…

客の入りは問題無い…

2時頃になりオーさんがやって来た…


オーさん「今月はどーよ?まあまあか?」


『まあまあでしたね…』


オーさん「今月の売上表見せてみろ。」


『どうぞ!』


オーさん「………」


『………』


オーさん「お前!誤魔化してんじゃねーよ!!!」


えっ?逆キレですか?


『誤魔化して無いですよ!本当です。』


オーさん「あっそ…」



そのまま帰ってしまった…

それはそうだろう…

この時の純利益は…

200万を超えていた…

グループ内で1番儲けてしまった…


お小遣いくれないかな…ショウさん…


『お疲れ様です!やりましたよ!今月の利益今日入れて200万超えましたよ!』


ショウさん「おつかれ!良く頑張ったな!」


『はい!』


ショウさん「じゃー俺田舎帰るからもう行くわ!」


『えっ?あっ…お…お疲れ様でした…』





お小遣い…無しですか?



すげーショックだ…


こういう商売ってプラスαがあるから面白いんじゃないの?

これじゃ〜何の為に仕事してるんだ…?

でも明日から3連休だし…


とりあえず…まぁ…いいか…


これが俺に取って初めての休みだったからすげー嬉しくて…

多分…休みがなければ辞めていたかもしれない…


「半年も休み無しで安月給で良く頑張りました!」と言う事で1人居酒屋で忘年会しました。


安月給でも…辛い仕事でも…達成感があると…続くもんですね…

疲れが溜まっていたのでその日は好きなだけ寝ました…


最高の連休でしたよ…

本当に…

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