挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

バーション1.01【始まり】

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

95/103

95:マジ、バグらせる。

 いったい何処から現れたんだあいつは?
 剣を抜き、今にもNPCに切りかかろうとする女。
 紅の髪を靡かせ、足元には猫を従えてやがる。
 あれ、ウミャーか?
 なんかでかくなってんな。

 唐突に登場したセシリアに、さすがのNPCも驚いているようだ。完全に固まって、シンキングタイムを余儀なくされている。

《ぷぷ。ぷぷぷぅぷ、ぷうぷぷぷ》

 今よ。あたちが飛んで降りるから、ダーリンはリターンであたちの所に来て?
 その手があったか!

 ぷぅが羽ばたきながらゆっくりと降りて行き、そして、ルーンの頭に着地。

 よしっ、今だ!

「『リターンオブテレポート』――からのぉ」

 このNPCどもが敵で、実はモンスターの扱いだったら……魔法が利くはず。

「『雷神の鉄槌・トールハンマー!』」

 ルーンの真横に瞬間移動した俺は、即座にトールハンマーで攻撃。
 さぁ、感電しろ!

 ……。
 …………。

 え?
 無反応?

 直撃食らった奴も、驚いているようだが無事だ。周辺の奴等もぴんぴんしている。
 じゃあ、敵じゃない?

 ざわつくNPCたち。

《ぷっぷぷうぷ?!》

 ルーンの頭から飛び移ってきたぷぅが、俺の眼前でホバリング。
 そして決めポーズ。シャキーン。

「鳥!」
【と、鳥じゃ!】
【奴ではないようだ。だがアレは……】

 吹き出し含めてどよめくNPC……ど、どういうこと?





 村の広場まで連れてこられた俺達とセシリア。

「久しぶりだな、マジック君!」
「あ、ああ。久しぶりだなセシリア」
「ロッククライミングに良さそうな岩山があったから、技能レベル上げをしていたのだ」
「はぁ」
「登ったら村が見えたので、降りてきたのだ」
「はぁ」
「そしたら、凶悪な現地人に襲われている人を見つけたので助けにきたのだ」

 でも今一緒に連行されてますよねあなた。

 広場に連れて来られた俺達は、適当に座れといわれ素直に従う。
 攻撃が当たらないんじゃ、どうしようもないしな。こいつらは敵じゃな……いはず。

「貴様達」

 NPCの一人が一歩、前に出る。
 四十代ぐらいの、どこにでもいるような中年男だ。この人にだけ声があるってことは、村長とかそういうポジションかな?

「貴様達。この場所をどうやって知った?」
「どうやって……えーっと、ぷぅが飛ばされて、助ける為に魔法でジャンプして――で、見つけた」
「ぐ、偶然なのか!? 貴様達、この大陸に住む民なのか?」

 この大陸に住む?
 うーん、どう答えたものか。まぁこの大陸で活動してるんだし、住んでいるって事になるのか。

「うん、まぁ、住んでる?」

 ちらっとルーン達に視線を送ると、彼らも一呼吸おいてから頷いた。
 それを見てざわつくNPC達。
 がやがやとした雑音はあるものの、ちゃんとしたセリフは吹き出しなんだよな。
 えーっと、『やっぱりだっぺ』『とうとう奴等は岩壁を超える方法を見つけただべか』とか言っている。
 村長ポジの人は普通の口調だが、その他は田舎者丸出しだな。

「もういい。いいのだ。先祖の宝などより、これから先の子らの事を考えようでは無いか」
【そうだっぺ】
【我らのような不自由な生活を、この先もずっと続けさせるのは酷っぺよ】
【ここから解放されるのであれば、お宝なんてもういらねえずら】

 お、お宝?
 俄然興味が沸いてきましたよ!

「とりあえず、話を聞かせてくれ」
「聞かせろだと? 知っているだろう。貴様等が我らをこの岩壁で囲まれた場所に閉じ込めたのだからっ」

 はい?
 うーん、どうも話が噛み合わないな。
 ルーン達を円陣を組んで、どう返答したものか話し合う。
 知っている振りで話を進めるか、知らない事を説明するか――

「うむ。もしかすると彼等の言うこの大陸に住む民というのは、船で移住してきた人達ではなく、最初からこの大陸に住んでいる人達の事かもしれないぞ」
「え? セシリア、そんな話、どこで聞いたんだよ」
「ドワーフの集落だ」

 えっへん――とドヤ顔のセシリア。
 公式サイトにもその手の情報は乗ってないが、先にこの大陸に渡ってきていた開拓民から聞けるようだ。
 ただセシリアの話には続きが合って――

「先住民は邪神崇拝者ばかりで、大変狂暴なのだとか」

 で、ここの村人がそうだと思い、剣を抜いて助けに来たという。
 いやだからあなた、一緒に捕まってるし。

 まぁセシリアの話が本当だとすると、さっきの質問の答えが既に間違っていたようだな。
 そこんところを訂正し、俺たちは西の大陸からやってきた冒険者だと説明する。
 すると、シンキングタイム無しで彼等の態度が変わった。

【やはり違ったっぺよ】
【どうりではいからな服を着ていると思っただ】
「では冒険者よ。お前達は我らを救う為にここに来たのだな?」
「いや、人の話聞けよ。たまたま偶然なんだって。こいつが風に流されて――」

 と、ぷぅを使って実演。
 あ、上空に飛ばしすぎたな。

《ぶっぶっぶぶぶぅ》
「あぁ、すまんすまん。今度は風が無くてよかったな」
《ぶっぶ》

 思いっきり突かれながら、偶然ここを見つけたんだと念を押して説明。

「そうか。偶然であったか……はぁぁぁぁぁぁ」

 ながーい溜息のあと、これまたながーい沈黙が続く。
 ……これはあれか?
 訳を聞くまで動かないってパターンか?
 業を煮やしたセシリアが立ち上がり、オーバーリアクションと共に声を張り上げる。

「何があったというのだ、村長よ!」
「聞いてくださるか冒険者よ!」

 あ、この人村長確定な訳ね。
 村長も立ち上がって彼女同様、オーバーリアクションにて応える。
 何このスポコンみたいな流れ。





「昔、我ら祖先がこの地の何処かに大量のお宝を隠したのだ」

 突然というか、恒例の昔語りだ。
 お宝か……くくく。

「だがある時嵐にあい、男達は帰らぬ人となった」
「じゃあ宝は?」

 フラッシュの質問に、村長が俯く。
 自分等の曾祖父達が、お宝を探してこの地にたどり着いたのが百年前。
 ようやく手掛かりを見つけたのに、元々この大陸に住む民にも知られて争奪戦に。

「手がかりはここ、まさに自然の要塞たるこの場所にある。故に我らの曽祖父達はこの地の民どもと長い間戦っておった」

 ここは防衛戦にはうってつけの場所だった。
 が、結果的に外へと通じる道を塞がれ、出るに出れなくなったのだという。
 それが六十年ほど前の話らしい。

「いや、でもあそこに洞窟があるじゃないか?」

 と俺が指し示す方向には、海と繋がった洞窟が見える。
 あ、大分潮が引いたみたいで、洞窟もくっきり見えてるな。あれなら船で渡れるんじゃ?

 だがNPC軍団はシンクロしているかのように首を振る。

「この海域には恐ろしいキュカンバーが生息しておる。船で漕ぎだそうものなら、あっという間に奴の胃袋行きだ」
「キュカンバー? あれって昨日のイベントで倒された?」
「『騒々しい海のキュカンバー』ですかね?」

 キュカンバー。名前だけ聞くときゅうりか九官鳥のモンスターだと思いそうな奴だったが、正体はナマコだ。
 あぁ、奴を倒して新たに進入可能になったエリアって、ここの事だったのか!

「なんとっ。奴を倒したのか!?」
「あ、いや、倒したっていうか……」
「まぁ倒したといえば倒したよなぁ?」
「ボクは固まってましたけどね」

 と苦笑いのルーン。
 倒したって事にしておこう。うん。
 そう伝えると、またもやざわつくNPC達。

【あの魔物を倒したのか!?】
【海からの出入りが可能になったというのかっ】
【だが潮が引くのは二日に一度、十分たらずだぞ】

 吹き出しセリフがあちこちから浮かぶ。
 二日に一度、十分しか通れないのか。となると船での脱出は難しいな。
 だが、海に通じる洞窟を通らなくても、他の通路ってのを使わなくても、どうにかなるんじゃないのか?
 実際俺たちはどうにかしてここまで来てるんだし。

「テレポ使えばさ、どこか必ず岩壁の上に出れる位置があるだろうし、出れるだろ?」
「ロッククライミングの技能でも出れるぞ。これなら運便りではなく、確実に出れる!」
「でも技能レベル低いと登れないんじゃないか?」
「む。そうだな。私は技能レベルが10あるが、何度か足を踏み外して危なかったぞ」

 いや、危ないならやめとけよ。
 が、六十年も閉じ込められていたんだ。技能レベルを上げるのに数日掛かっても構わないだろう。
 寧ろ天然のロッククライミング技能を上げれる環境なんだ。
 好きなだけ上げてくれってもんだ。

「マジック氏、正規ルートとは違う方向から攻めようとしているな」
「たぶん彼らは何かの依頼をしようとしているんだろうけど……」

 フラッシュとルーンが呆れ顔でこっちを見ている。
 単純に外に出たいって話だろ? いいじゃん、どんな方法でも。

 NPC達の反応を待ったが、随分長いこと動こうとしない。
 ……せ、正規ルートじゃないと、やっぱりダメなのか?

 数分後、不安になってきだした頃にようやく村長が口を開いた。

「外ニ通ジル通路ハ奴等ニヨッテ塞ガレ、コノ数十年、ココカラ一歩モ出ルコトナク生キテキタ」

 あわあわあわあわ。村長のセリフが棒読みになってるぞっ。
 しかも顔から表情も無くなってるし。

「外ニ通ジル道ハ、西側ニアル。ダガ、ソコニハ奴ガ……『不運ヲ撒キ散ラスロックンピーコック』ガ待チ構エテイルノデ、塞ガレタ道ノ開通作業モママナラヌノダ」
【奴を倒してくだされ】
【我らに自由を】
【せめて子供等には、外の世界を見せてやりたいっぺ】

 テキストのほうは無事なようだが、でも全員死んだ魚みたいな目になってるんですけど!

 俺たちを取り囲むNPCの輪が、少し、また少しと狭まってくる。

《クエスト【海賊の子孫を救え】が発生しました。受諾しますか?》

 というシステムメッセージが浮かぶ。
 ちょ、こいつら海賊の子孫かよ!
 ってことは、お宝って海賊の!?

「『不運ヲ撒キ散ラスロックンピーコック』ヲ倒シ、我ラヲ外ノ世界ヘト誘ッテクレ」
【ピーコックを倒してくだされ】
【お願いしますだ】
【お宝なんてもういらねぇべ】
【助けてくんろ】
【奴を倒してくだされ】
【我らに自由を】
【せめて子供等には、外の世界を見せてやりたいっぺ】

 じりじりと輪を狭めてくるNPC達。吹き出しの数もどんどん増えていく。

「マジック氏っ。は、早く承諾するんだっ」
「これ絶対バグってますよっ」
「マジック君。よく分からないが彼らが怖いのでピーコックを倒そう。そうしよう。ふえぇーん、ウミャーァ」
《ウウウゥゥ、ウミャーッ》

 主人の足元に隠れながらも、必死に威嚇するウミャー。
 うちのぷぅは……どこにも居ない。
 頭に手をやると、巣の中でぷるぷる震えてましたとさ。

 使えねぇ!

「『不運ヲ撒キ散ラスロックンピーコック』ヲ倒シ、我ラヲ外ノ世界ヘト誘ッテクレ」
【ピーコックを倒してくだされ】
【お願いしますだ】
【お宝なんてもういらねぇべ】
【助けてくんろ】
【奴を倒してくだされ】
【我らに自由を】
【せめて子供等には、外の世界を見せてやりたいっぺ】
【ピーコックを倒してくだされ】
【お願いしますだ】
【ピーコックを倒してくだされ】
【お願いしますだ】
【ピーコックを倒してくだされ】
【お願いしますだ】
【ピーコックを倒してくだされ】
【お願いしますだ】

 ひぃっ。視界が【ピーコックを倒してくだされ】【お願いしますだ】で埋め尽くされていくぅ。
 これどこのホラー映画ですか!?
*ピーコックの二つ名を
不運→不幸→不運と修正しました。

不運で合ってたのに「あれ?修正し忘れてた?」と別名にしてたよorz
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ