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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション1.01【始まり】
88/268

88:マジ、再び――

《上位十名様には既にメッセージと一緒に装備ボックスが配布されております。是非ご確認ください》

《尚、今回の『騒々しい海のキュカンバー』討伐貢献度上位十名様は――》


 海岸が静寂に包まれる。

 きっと皆、自分の名前が呼ばれることを祈っているんだろうな。

 俺もだ。

 ぷぅを掌に乗せ、マイクを持つアロハシャツのスタッフに向ってぷぅと一緒にお祈りポーズをする。

 さぁ、こい!


狙撃手ガンナーマグナム。……ん? このゲームに銃は未実装なはず?》


 わははっと笑いが起こる。その中心にはふんどし姿の弓使いが居た。

 あれ?

 さっきの濃い面々じゃないか?

 遠距離職でどろどろ攻撃の範囲外に居るってのに、気を引き締めるとかなんとかでふんどしになった人じゃないか。


冒険家アドベンチャラーインディー》


 おぉっとざわめき立つ男達。

 おい、最初に俺にふんどしの事を尋ねてきた……。


剣闘士グラディエーターグレイト》


 あぁ……濃い面々がどんどんふんどし姿のまま決めポーズしちゃってるよ。

 どうやってあの筋肉動かしてるんだ? っていうかアバターでそれ出来ちゃうわけ?

 まさかあのメンバー全員が上位陣なのか。


 システム画面を出して彼等の名前とレベルを確かめると、比較的近くに居て情報がちゃんと見えたマグナムって人がレベル25だった。

 あぁ、うん。

 俺21になったばっかりだしね。勝てないわ。


 インディーって人のパーティーメンバーらしいワンマンってのと、ウィリアムって人の名前も呼ばれていた。

 これで五人だぞ。

 それにしてもこの五人、全員が全員彫の深い顔立ちで、尚且つ華がある。まるで一昔前のハリウッドスターのようだ。

 というか、見覚えがあるようなないような、そんなキャラフェイスだな。


 なんて考えている間にもアナウンスは続く。


創世の賢者(ジェネシスマイスター)シュミット》


 おおぉぉぉぉぉっという、一際大きな歓声が湧き起こる。

 なんだなんだ。有名人なのか?

 二、三十人が群がるその中心に、いつ出来たのかわからないお立ち台の上に男が立っていた。

 あぁ、あの王子様ルックのエルフだな。


「さすがっすシュミットさん!」

「マスター、かっこいいっ」

「シュミットさんの右に出るウィザードなんて居ませんからね」


 随分と持ち上げられてるな。

 いや、そもそもお立ち台はどこから出てきたんだよ。


 それにしてもあいつの周りにいる鎧男達……さっきナマコをこっちに引っ張ってこようとした連中じゃないか?


 残り四人の名前が読み上げられたが、そこに俺の名前はありませんでした。

 どういう事だよ!


「あ、マジックさん。やっぱりマジックさんだったんですね」

「ん? 誰?」


 呼ばれて振り返るが、見覚えがあるような無いような、そんな男が立っていた。

 隣には弓を抱えた海パン男もいる。


「やだなぁもう。ルーンですよ。海岸で助けて貰い、護衛クエでお世話になった」

「あ……あぁ!!」


 そうだったそうだった。どうりで見覚えあるわけだ。

 じゃあ後ろのは弓使いの――なんだっけ。


「フラッシュですよ。もしかして名前忘れてたとか!」

「うん。忘れてた」

「そこ、素直に言うところっすか!?」


 人間素直が一番だもんな。

 あ、俺ダークエルフだった。


「残念だったな、マジック氏。まぁ戦闘にほとんど参加してなかったみたいだし、当たり前か」

「え? フラッシュは見てたのか?」

「俺、後衛ですからね。周りの状況みながら動いてたら、マジック氏が見えたもんで。なんか腹抱えて笑ってたっしょ?」


 あぁ、そういや笑ってた。思いっきり笑ってたな。だから攻撃もあんましてなかったし。

 なるほど。戦ってなかったんだから、貢献度なんてあるわけないよな。

 それはそうと――


「フラッシュは海パンだけど、ルーンは普通装備なんだな」

「あぁ、はい。ボクが貰ったアバター装備は、この武器アバターなもんで」


 と言ってルーンが見せてくれたのは、彼の身長程もある巨大十字架だ。

 確かルーンって、殴り神官だって言ってたけど……まさかそれで殴るのか!?

 見たかった! 凄く見たかった!


「お陰でボク、この戦闘では固まったままほとんど何も出来ませんでした」

「俺は海パンはいたけど、はく必要もなかったなと」

「あぁ、やっぱ後衛には関係なかったんだ」


 そう言うとフラッシュが頷いた。

 だが周りを見渡すと、弓を装備しているプレイヤーも、杖を装備しているプレイヤーも、何故か海パンだのふんどしだのを装備しているのが目立つ。


 ルーンやフラッシュと喋りながら露店に戻ってくると、逃げずにその場に留まったお客等に囲まれた。

 また囲み取材!?


「王子様、大丈夫でしたか?」

「王子様の戦うお姿、ステキでした。ほとんど笑ってたけど」

「でも気持ちは分かるよね。あんなにふんどし持ってる人、多かったなんて」

「結構シュールだったよねぇ~」

「だろ?」


 と思わず俺も同意してしまう。


「ふんどしなんて、俺らの住んでる所だと、年に一回必ず見れるぜ。リアル男の大量ふんどし姿が」

「お祭で男の人はふんどし姿になるんよ」


 とドドンと夢乃さんが言う。

 リアル男のふんどし……それをここで引き合いに出されても……。


 あ、そうだ。


「ナマコのせいで接客が中断されましたが、ペットフードご入用の方はまだいますか?」


 アルバイトなんてやったことないけど、精一杯の営業スマイルで呼び込みを行う。

 ルーンとフラッシュにも、ここぞとばかり販売を持ちかける。


「お前らペットは?」

「いや、まだです」

「どの動物タイプをゲットしようか悩んでるところなんだよ」

「っち。じゃあペットフードはまだ必要ないか」


 二人にくるりと背を向け、集まったお客に声を掛ける。

 お、兎っぽいのを抱っこしてる人がいるじゃないか。

 兎といえば……人参?

 残念! ありませんっ。

 けど、小学校にあった飼育小屋の兎って、草食べてたよな。


「このペットフードなんかどうですか? 人参味じゃないんで、ちょっと食いつき弱いかもですが」


 兎を抱っこする女性プレイヤーに駆け寄り、草合成のペットフードを見せる。

 お、兎の鼻が高速ピクピクしているぞ。

 彼女の腕から身を乗り出し、必死に手を伸ばそうとしている。


「わぁ。こんな反応、今まで普通のペットフードじゃ見た事なかったわ。NPCより値段高いけど……買っちゃう♪」

「まいど! 値段はすみません。合成剤代だと思ってください」

「あ、そうか。え? じゃあ儲けないんじゃ?」


 正直に言えば合成剤もタダ同然。

 でも合成に使った食材の値段も考えると、確かに儲けは少ないな。


「いいんですよ。一応微々たる黒字なんで」

「そ、そうなんですか? じゃあ――」


 取引成功!

 そしてあれよあれよと、用意した合成ペットフード約百五十袋は完売した。

 そして――


《ここでタイムアーップ!》

《いやぁ、ハプニングも発生して一時はどうなる事かと思いましたが》

《思いのほか、『騒々しい海のキュカンバー』の攻略法があっさり見つかったお陰で討伐も早かったですねぇ。粘液対策の為の水着配布が功を奏したと!》

《マっちゃん、余計な事を喋るなっ》

《あ、しまった》


 ここの運営は大丈夫なのだろうか。

 サポートAIのみならず、人間様のほうもうっかり漏らしてるぞ。


 くすくすと笑いが起こる会場で、遂に称号争奪戦の幕は閉じた。

 誰がキラッキラするのか、見届けてやろうじゃないか。


《さぁ、どうやら結果が出たようです!》

《集客効果間違いなし! その称号を手にした男女はいったい誰!?》


 誰だ!!

 周囲を見渡し、それらしいプレイヤーを探す。

 といっても結構いるもんなぁ。あんな称号を欲しがる奴がこんなに居るなんて……。

 まぁでもNPCが客として来るんだし、確かに売り上げは上がるんだろうな。

 NPCが商品買ってなにをするのかは知らないが。


 キラッキラしている人物を探してきょろきょろしていると、なんと真横でキラキラ発生!

 だ、誰だ!?

 横に振り向いても、そこに居たのかお客であり、キラッキラはやっぱり視界の横で光っている。

 あ、薔薇が咲いた。


「王子様っ、光ってる!」

「やだ、似合い過ぎぃ」

「もう、だめ……ふんどしお姿で、キラキラ光るとか反則です」


 営業し過ぎたあぁぁぁぁぁっ!


【称号『ナンバーワンホスト』を獲得ました】

前話と今話で登場したキャラ『狙撃手マグナム』『冒険家インディー』『剣闘士グレイト』

自称が省略されている『ワンマン』『ウィリアム』

それに濃いくない『ノーリス』君の五人は、読者様がお書きくださった当作の二次創作小説にて

生み出されたキャラクターです。


濃いです。

ノーリス君以外は立派な大人(中年ぐらいな?)で、ノーリス君は中学生ぐらいの草食系男児。

このお話が全て完成したら執筆読者様サイトで公開して頂ける事を祈りましょう。

私の作品よりよっぽど技能やイベントの裏設定などもしっかりしていますよ!

あと

濃いです。

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