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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション1.01【始まり】
85/268

85:マジ、地雷を踏む。

 合成剤の材料を命懸けで確保して晩飯ログアウト。

 今夜のおかずは『豚のしょうが焼き』と『中華風春雨』。かき込みながら、夜は何をするか考える。

 新エリアにでも行くかなぁ。

 いや、ダンジョンもいいな。装備も整えなきゃいけないし、素材のドロップ狙って行ってみるか。

 それに、ダンジョンといえばボスだろ?

 運良く見つけられて、運良く装備をドロップしたら万々歳だ。


 とりあえず防御力やHPの補強の為に、12装備のコートを今のズボンに合成しておかなきゃな。

 まぁ……上半身裸族なのは変わらないけど。






『お帰りなさいませ、彗星マジック様』

「十一時半に連絡をくれ」

『畏まりました。本日二十一時より、港町クロイツ西海岸にてイベントが開催されます。是非ご参加くださいませ』


 へぇ、公式イベントか。

 せっかくだし行ってみようかな。

 って事は遠出出来ないな。

 ダンジョンは明日にして……あ、トリトンさんに合成屋の事を伝えておこう。






 ログインして早速トリトンさんに会いに行く。


「あ!ピリカの勇者さまだ〜」

「おう。元気か?」

「うん。勇者さまに会えたから、今日は何時もより元気だよ」


 くぅ、嬉しい事言ってくれるなぁ。

 シンフォニアといい、ぷぅといい、ピリカの爪の垢でも飲ませたいぜ。


 お父さんを呼んで欲しいとピリカに頼むと、すぐに呼びに行ってくれる。

 程なくして出てきたトリトンさんに、合成屋がダークエルフを騙していた事、その件でダークエルフと商業組合が手を組んだ事などを説明した。


「えぇ、その話は耳にしております。やはり汚い手を使っていたのですね。まったく、何も変わらない人だ」


 なんかいろいろ訳有りっぽいな。

 それを聞いたら、またイベントにでも発展しそうだ。

 今は何も聞かず、公式イベントまで時間を潰そう。


 で、せっせと合成剤の材料集めをするわけで……。さらに調合を頼みにブリュンヒルデを訪ねる。


「沢山作ったですのに、もうなくなったですの!?」

「あぁ。ちょっとな」


 かくかくしかじかで、ぷぅのせいで合成団子を配布しなきゃならなくなったと伝える。

 すると彼女がシンキングタイムに突入した。


 動きだしたブリュンヒルデは、


「じゃあ、ペットフードの合成依頼はお断りしておくですの」

「は?えっと、なんで」

「だって、その方がマジックさんの儲けに繋がりますの」


 そんな事で気を使わなくたっていいのに。寧ろ俺の代わりにやってくれと思うんですが。

 まぁ技能のレベル上げと思えばいいんだけど。

 実際、ペットフードの合成で、技能レベルは12まであがっている。

 一度に百回以上やったもんな。

 けど何度もとなると、材料集めに追われてしまう。

 合成剤も持参にして貰うかな。


「出来たですの。――考えてごとですの?」

「あぁ。他の戦闘技能も習得したいし、合成剤の材料集めばかりもしてられないなぁと思って」


 取引要請で受け取った合成剤は百五十個。これだとピッピ友の会メンバー全員に十袋ずつぐらいか。

 ぷぅの分も必要だし、セシリアにも分けてやらなきゃな。

 やっぱ合成剤は持参してもらおう。


「戦闘技能ですか。何を学びたいですの?」

「水属性とか?他は――」


 重力操作とか欲しいな。

 隕石召喚!とか。

 あ……


「なぁブリュンヒルデ。俺に召喚魔法、教えてくれないか?」


 あるじゃん!

 重力操作じゃなくても、隕石召喚メテオ使う方法が!

 あとはブリュンヒルデが頷いてくれたら……。

 フラグ用お使いクエ、ばっちこい!

 大賢者で鍛えられたからな。何度でもやってやるぜ。


 さぁ!


「いいですの」

「よっしゃ!お使い内容は――え?」


 今、何と仰いましたか?


「召喚魔法、教えてあげるですの」


 大賢者より優秀な講師見つけた!?






「まずはこの本を読むですの。全部しっかり読むですのよ」


 ……どこから出したこの本。人を殴り殺せそうなほど分厚いじゃないか。


 大賢者は杖で額をこ突くだけで技能を伝授させていたが、ブリュンヒルデはそうはいかないようだ。

 なんか普通に勉強させられそうな予感。


 本を受け取り、ページを捲ろうとしたところでシステム音が鳴る。


『イベント開催までそちらの時間にして、後三十分です』


 お。なら勉強は後にして……


「ちょっと用事があって、そっちに行かなきゃならないんだけど」

「はいですの。いつでも来てくださいの。その本はお渡ししておくですから、しっかり読むですのよ」

「お、おぅ。サンキュー」


 借りれるのは助かる。

 けどまさか、テストがあるとかいわないよな?






 海岸に到着すると、突然アナウンスが鳴り響いた。


《まもなく港町クロイツ西海岸にて、『第一回ナンバーワン称号決定戦』が開催されます。露店商必見の、客寄せ効果抜群間違いなし!》


 お、このイベントで勝つと称号が貰えるのか。

 アナウンスの内容からして、生産系の人に良さそうだが。

 俺には関係なさそうだな。


《最も人気のあった方に付与される称号となっております。客側としての参加もお待ちしております》


 あ、なるほどね。

 イベントを盛り上げるために、客参加のプレイヤーも必要なわけか。

 オッケー。貢献しようじゃないか。


「あ、彗星君だ。え?なに、なんで半裸なん?」


 聞き慣れた声に振り返ると、夢乃さんが居た。

 しまった。合成でコートが消失したとは言いにくい。


「彗星君……」

「う……ゆ、夢乃さん、実はこれには――」

「彗星君も目覚めたんやね!!」


 はい~?

 い、いったい俺が何に目覚めたってんだ。いや、何に目覚めたと思っているんだこの人は!?

 にっこにこ顔で「じゃあ次からは性能重視の装備作るけんね」と言う。

 それ自体は嬉しいんだが、何を勘違いされているのかだけは不安で仕方が無い。


「おっす、マジ。っぷ。なんで裸族なんだよ」

「ようドドン。馬鹿には見えないだろうが、ちゃんとコートは着ているんだぞ」

「おおお! 見える。見るぞ俺には!!」


 どんなのが見えてるんだよ。


 この二人がイベント会場に居るってことは、やっぱ参加者側なのかな?

 尋ねると、夢乃さんは頷き、ドドンは首を振った。


「マジ、お前さ、ナンバーワンホストの称号持ってただろ?」

「ああ。あのキラッキラな奴な」

「その称号、今でも持ってるん?」


 夢乃さんに言われてステータスを確認すると……無くなってる!!


「ヒャッハー! あの恥ずかしい称号が消えて無くなったぜぇ~っ」

「その称号の争奪戦なんだよ、このイベント」

「女の子には『ナンバーワンスマイル』っていう称号が付与されるみたいなんよ。効果は、たぶん同じなんじゃないかな」


 たぶんってことは、まだ確認されていない称号なんだろう。

 なるほど、生産職にとっては客寄せ効果があるんだし、ありがたい……いや、あれが有り難いか?

 なんかキラッキラして見世物になってるだけだと思うんだが。


「俺はさ、ドワーフだし、あの少女漫画みたいなキラキラはちょっと、なぁ?」

「あ、ああ。そうだな。なんかキモぃっていうか、ガチムチのホモ臭くなりそうだな」

「んだ……」


 ガチムチドワーフが背中に薔薇背負ってキラキラしてる姿なんか……うぉえ。想像するもんじゃないな。


 じゃあドドンは何をしに来たのか。

 客側?


「いや、どさくさ紛れに自作宣伝」

「私の露店で共同出品するんよ。私はポーションと布装備とアクセサリーを並べるんだけど、やっぱり前衛系装備もあったほうが品揃え豊富に見えるけんね」

「あぁ、なるほど。そういやバイト機能もあったんだっけ。結局露店って店番は何人までやれるんだ?」

「え? 彗星君もお店やりたいの!?」


 うん。どうやら俺は地雷を踏んだようだ。

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