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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション1.01【始まり】
78/268

78:マジ、ぼっちを実感する。

『お帰りなさいませ、彗星マジック様』

「ただいま」


 ふぅ、今日はいろいろあったな。

 知り合い増えたり、同族NPCの貧乏生活を救ったり……。

 楽しかったけどね。


 商人組合とダークエルフの取引も成立して、そのお礼にとブリュンヒルデ様から後日また来てですのと言われたし、きっと新しい技能フラグだぜ!

 ダークエルフだしなぁ、精霊魔法とかいいよなぁ。


『――ク様』


 いや、そもそも精霊魔法って『召喚魔法』の分類になるのかな?


『――マジック様』


 あと合成剤も材料持ってくればいつでも作って貰えることになったし、これで金策の心配もしなくて済む。


『彗星マジックさぁーまぁーっ!』

「ふひっ!? な、なんだ急にでかい声だして!?」

『ずっとお呼びしておりました。また人の話を聞かず、トリップなさっておいでですね』


 トリップって……まぁ違わなくないか。

 で、呼んだ理由が何かというと――


『現在、公式サイトの掲示板にて、恐らく彗星マジック様であろう人物が映る画像が投稿されております』

「は?」

『戦闘中の画像ですが、もちろん撮影者は他のプレイヤーの方でして。ワタクシが解析可能な範囲では、彗星マジック様が撮影の許可をお出しになった形跡も無く。いかが致しますか?』

「いかがって……さっぱり意味がわかりませんが?」

《ぷっ。ぷぷっぷ》


 あたちも映ってる? と尋ねるぷぅに、シンフォニアは『映ってますよ』と答えると、嬉しそうにぷぅはくるくる踊りだした。

 こいつもぷぅ語が分かるのか!?


 つまり、どこかの誰かが俺の戦闘中の姿を盗撮。

 それを交流掲示板にあるSS板って所に投稿したらしい。

 更に、俺の戦闘スタイルと頭にある鳥の巣、種族などからキャラ特定されたようだと。


「顔が映ってないって話だが、よくそんなんで特定できるもんだなぁ」

『頭に鳥の巣を乗せたプレイヤーは、現在彗星マジック様お一人ですから』

「なんだ、そうなのか。それじゃあ特定も仕方ないか」

《ぷぷぅ♪》


 あたちのお陰ね♪

 いや、特定されるのは、あんま良い事でもないからな。


『はい。ただ彗星マジック様の名前までは特定されておりません。一応、投稿者に対し批判の声も上がっておりまして』

「批判?」


 SS掲示板にも利用規約があり、背景なんかを投稿する分には問題ないが、被写体が居る場合、許可を貰えという事になっているらしい。

 許可を貰ってない場合、『名前が出ていない事』『相手が誰だか特定されないよう加工処理などをして配慮する』が条件になっているようだ。


『今回は後ろ姿であるため、特定できないと投稿主は思ったようです』

「でも頭装備や種族で、見る人によっては俺だって分かったんだろうな」


 シンフォニアも頷き、記事を削除したほうがいいか尋ねてくる。もしくは、公開を許可しますか――と。


「うーん、まぁいいんじゃね? どうせさ、ほら、ロビーの大改造計画でムービーデビューするだろ?」

『あぁ、左様でございますね。公式デビューなんですし、怖いものなんてありませんね』

「そういう事だ。ちょっとの盗撮ぐらいで目くじら立てても仕方ないって。ばんばん晒してくれていいぜ!」

『畏まりました。では正式に許可を下さったという事で、運営側として対応致しますね』

「オッケーオッケー」


 じゃあ今日は落ちて寝るか。

 と思ったら、もう一つ連絡があったのだとシンフォニアが言う。


『うっかり忘れるところでございました』

「AIなのにうっかり忘れるのか。いや寧ろお前ってうっかりしてるよな」

『何の事か理解致しかねますが』


 自分がうっかりしている事を認めようとしないのか、分かっててスルーしているのか。


『明後日水曜日は十一時から十五時まで定期メンテナンスとなっております』

「あぁそうか。ネットゲームって、水曜日にメンテってのが多いな」

『そのあたりの理由はワタクシもよく存じ上げませんが、週末にメンテナンスを入れると多くのプレイヤーが利用できなくなりますし、週明けですと週末に接続者数が多かった分、いろいろとデータ処理などもございますので』

「あぁ、俺は夏休みだから関係なかったけど、仕事してる人なんかだと週末メンテじゃ遊べないもんな」

『はい。あと、比較的平日のほうが接続者数が少ないですから』


 なるほど。夏休みが終われば俺も平日昼間はログイン出来なくなるし、これが平日とはいえ夜にやられると学生にも被害が及ぶな。

 なっとくなっとく。

 けど、メンテ時間を伝える為だけに呼び止められたのか?


『あぁ、忘れておりました』

「今度はなにをだ!」

『メンテナンス開始時間に合わせて、『受付ロビー劇的大改造計画』の応募ページが公開されます』

「おお!? 仕事早いじゃん」

『ページの作成と、応募フォームを作るだけですからね。映像の編集はワタクシがやらされましたし』

《ぷぷ!?》


 やらされたって……サポートAIって案外こき使われてるんだな。


 その劇的大改造計画特設ページで、今朝撮影した映像と昨夜の改造中の映像を編集して流すのだと言う。

 遂に俺も……あぁしかし、ムービーデビュー前にSS掲示板の方に出てしまったからなぁ。

 インパクト薄いかも?

 でもまぁ、これで俺もゲーム内ではちょっとした有名人かも?

 

『彗星マジック様。お顔が歪んでおられます』

「……そこはせめて、緩んでと言えよ」

『彗星マジック様。お顔が緩んでおられます』


 馬鹿正直に言いなおさなくても……。


「寝る。じゃあな」

『はい。お休みなさいませ』

《ぷぷぅぷ〜》


 軽く手を振ると、シンフォニアが笑顔で頭を下げ――意識は暗転した。

 目を開くと見慣れた自室の天井。

 肩にも掌の上にもぷぅは居ない。


 うん……なんか現実って、寂しいな。




・

・

・



【交流掲示板 SS板】


投稿者名:辻ヒーラー  タイトル:ふんどし王子降臨


Re69:運営チーム

 Imagination Fantasia Online運営チームです。

 この度、被写体となっているプレイヤー専属サポートスタッフを通じ

 該当プレイヤーから画像公開の正式な許可を頂きましたことをご報告申し上げます。

 尚、キャラクター名の公開は致しません。


 投稿主の辻ヒーラー様やその他ご観覧の皆様におきましても

 画像を投稿される際には十分なご配慮をいただくようお願い申し上げます。


 今後ともImagination Fantasia Onlineを円滑にお楽しみください。



Re70:猫天使

 前姿の盗撮ならモザク必須なんだろうけど

 後ろなんだしいいんじゃない?



Re71:カナコ

 ちょw

 運営様ご登場!

 正式許可きたわー!!



Re72:通りすぐる

 運営キタコレw

 ふんどし許可下りたんかよw

 放電の人の懐がすこぶるひろすぐるw



Re73:漢なら筋肉

 放電マジ……お前かっこいいよ



Re74:辻ヒーラー

 皆様今回は大変ご迷惑をお掛けしました。

 記事を削除しようか迷っておりましたが、許可を頂けたようなので

 このまま公開したままにしておきます。


 放電マジさん、本当にありがとうございました。





・

・

・



 翌朝。

 七時前に目を覚まして早朝ログイン!

 朝飯前の一働きだ。

 

 合成剤の問題は解決できたが、そもそも合成するためのアイテムが必要だからな。

 短時間で数をゲットする為には、ちょっと格下の奴を狩りまくろう。


 コールの町周辺で狩りをしてアイテム集め。

 ダークエルフの集落に行ってコスライム密集地で死に物狂いになってジェル集め。

 焦心のような傷心のような状態で集落に戻った俺は、癒しを求めてクロイス周辺海岸でマッタリ潮干狩り。

 アザラシ、出なかったなぁ……。


 大量に合成剤の材料をゲットし、集落で調合して貰う間、朝飯を――


「できたですの」

「あ、はい。さすがですね」

「それほどでもないですの〜」


 さすがNPC。汚い。

 これプレイヤーだと結構時間かかるだろって事も、NPCは一瞬で終わらせてしまう。

 本当に汚い!


 朝飯の後にでも合成するか。


 ログアウトして朝飯を平らげ、ログイン前に昨夜のSS掲示板でも見ておくかとページを開く。

 いったいどんな反応をされているのだろうか。さすがに気になる。


 ほぉほぉ。掲示板のスレも結構あるじゃん。賑わってんだなぁ。

 記事タイトルを見ただけで、投稿主は生産職だろうなーってのが分かるのがいくつもある。

 装備デザインとか、こんなん作りましたーとか。


 あぁ、そういやどういう記事タイトルなのかだけでも聞いておくべきだった。

 記事をいちいち全部確認するのは面倒だなぁ。

 二ページ目に突入してから、ふと嫌なものを目にしてしまった。


『ふんどし王子降臨』


 ……あんなもの着る奴がいるとは。しかも王子だぜ?

 自分で自分の事、王子とか言っちゃうって痛々しい。


 記事タイトルをクリックした途端、

 俺はいろいろと後悔した。

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