表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション1.01【始まり】
72/268

72:マジ、先祖を知る。

 焔のマントで走り回るのはいろいろマズいと判断。

 ま、まぁノーマナー行為として通報されるのも恐ろしいし、何より時間差でコスライムの群れに襲われるのはもっと怖い。

 マントもサンダーフレアもCT中で各個撃破しか出来なかった俺は、現在ファクトの町に戻ってきていた。

 いや、死に戻りなんだけどね。

 そういや、デスペナってレベル10以下だと無いって公式に書いてたから余裕こいてたが、その10もとうに超えてたんだよなぁ。

 経験値3%ロストか。いまだとまだそう痛くも無いが、気をつけなきゃな。


 テレポートで再びさっきの草原に飛び、ドロップ集めに勤しむ。

 ある程度集まったので、森に移動して討伐と弁当を渡すクエを終わらせるか。


 移動しつつ、唯一採取技能が必要なクエの分を行う。

 採取しつつ、ここではついでに『発見』も試みた。

 じぃーっと目を凝らし、何か落ちてないかと下心丸出しで辺りを見回す。

 なんかお宝とかあったらいいよな。

 お、向こうの木の根あたりに何か見えるぞ。

 近づいてみると、木の実……だった。

 しかも普通の木の実だ。


『キュイ』


 何かの声が聞こえたから振り向くと、カウリスではない、普通のリスが潤んだ目でこっちを見ていた。


 それを持って行くの?

 ボクの食べ物が、無くなっちゃうよ。


「そんな目で俺を見んなぁーっ! うわぁーん」


 木の実を投げ捨て、俺は一目散に森の中へと入っていった。






「じゃあ、これ。頼まれてた弁当」

【やぁどうもなんだなぁ冒険者さん】


 森の猟師には声優がついていなかった。かわいそうに。

 受け取り用のサインを貰って来いというクエスト内容でもあるので、ギルドから貰った用紙にサインを貰う。

 紙を渡すと一瞬でサイン入りで紙が戻ってきた。

 相変らず、書く動作を省いてやがる。


【それにしても、冒険者さんがダークエルフだとは、珍しいんだなぁ】

「そうか? まぁノーマルエルフに比べると少ないかも?」


 ノーマルエルフは人間より多いんじゃね?

 と思いたくなるほど多い。主に女だが。


【ダークエルフは昔犯した罪の意識からか、あまり人前に出てこようとしないからなんだなぁ】

「罪?」

【わしもダークエルフから聞いた話なんだけんど、冒険者さんは知らないのけ?】


 いや、知らないも何も、公式サイトに無い情報なんか知る訳……

 そんな風に思っていたら、猟師のおじさんが一人語りを始めた。



 大昔、神々がまだ地上で生きていた時代。

 光と闇の勢力に分かれて、長い戦が行われていた。


 光の神々は自分達の眷属としてエルフをお創りになった。

 闇の神々は自分達の眷属として魔物をお創りになった。


 長い戦の間に、エルフの一部は闇の神々に寝返る。

 透き通った白く美しい肌は闇に染まり、彼らはダークエルフと呼ばれるようになった。

 そして光の神々が劣勢となり、世界が闇に染まり始めると――



【寝返ったダークエルフのうち、極少数が緑豊かな森に帰りたいと思うようになったんだなぁ】

「まさか二度目の寝返り?」


 俺がそう言うと、猟師のおじさんは頷く。

 ダークエルフの一部は闇の神々から盗んだ武器を持参して光の神々に取り入ったらしい。

 彼等のお陰で光の神々は勝利を収め、世界は光に包まれた――と。


 しかし、一度は寝返った彼らが簡単に許されるわけも無く、人々からは恐れられ、同族であるエルフからは忌み嫌われ、ダークエルフたちは長い間、人もエルフも訪れないような深い森の中でひっそりと生きてきた。


【そんな彼らは安住の地を求めてこの大陸に移住してきたんだなぁ】


 ……なんかつれーわー。

 結果的には救世主になったってのに、迫害されて生きてきたなんて。

 なんかファンタジーによく出てくる、悪役のイメージしかないダークエルフとは大違いだ。


【ダークエルフたちはいろいろ親切で良い連中なんだけど、なんせネガティブ思考過ぎなんだなぁ】

【彼らは優秀な狩人であり、魔法使いでもある。もっと自分達に自信を持てばいいんだなぁ】


 親切なダークエルフ……嘘くせぇ。

 ネガティブってのもなぁ。どっちかというと、傲慢で高笑いしているイメージなんだけど。


【そうだ。君もよかったら彼等の集落を訪ねるといいんだなぁ。ここから東に行った、遺跡の少し手前にある森に住んでるんだなぁ。きっと新しい発見もあるんだなぁ】


 猟師がそう言うと、突然システム音が鳴ってクエスト発生を知らせる。


《クエスト【始祖を訪ねて】を受諾しました》


 いや、受諾っていうか、これ強制?






 クエスト内容――


 猟師マルコからダークエルフの集落について聞いた君は

 同胞である彼等の集落を訪れるべく、東の森へと向う。


 という物だった。

 あの猟師、名前あったんだ。

 これもしかして、俺がダークエルフだったから発生したクエストなのか?

 このクエスト、ギルド職員が俺の顔を見て真っ先にお勧めしてきた物だが……

 種族限定で発生するのかもな。

 まぁダークエルフといえば、魔法を巧みに操って武器による戦闘も得意というのが常識だ。

 もしかしたら……。


「新しい戦闘系技能も習得できるかも!」

《ぷ》

「お前もそう思うか、ぷぅ!」

《ぷっ。ぷぷぷぷぷぷぷ》


 どうやら腹が減ったらしい……。

 俺の言葉を全否定する勢いで体を左右に振り、嘴を開けて鳴き続けている。

 なんだか気分は桃太郎だな。こう、きび団子を……。


 木の実合成団子を食べたぷぅは満足したのか、俺の長い耳を掴み、登り、巣へと戻っていった。

 なんで鳥の羽で耳を掴めるのかと。

 やがてぷ〜ぷ〜といういびきが聞こえてくる。


 なんだ、寝たのか。


 途端に一人ぼっちになったような気がして、なんとなく寂しい。

 きっと森にひっそりと暮らすダークエルフもこんな気持ちなんだろう。

 早く会いに行こう!


『四時三十分になりました』


 ぬ。シンフォニアか。

 うーん、ゲーム内だとあと一時間だな。

 マップを確認してみると、コールからファクトまでの距離と、ここからほぼ同じぐらいの位置に遺跡があるってのが分かる。

 コールからファクトまで、三十分ちょいだったよなぁ。

 あれ、そういえば護衛クエの時は、トイレ村での休憩時間を除けても、移動だけで二時間以上掛かってた気がするんだが。クエ専用マップだったのかな。


 まぁとにかく、今からダークエルフの集落に行くのはキリが悪そうだな。

 夜の清算が終わった後にでも行くか。


 テレポートで町に戻り、クエストの報告をして報酬を受け取る。

 討伐とアイテム採取合わせて8500ENエンになった!

 美味いっ。

 いや、そろそろ装備に金が掛かる頃だし、こんなものなのかも?

 俺も防具が12のままだしなぁ。そろそろ次の――

 ここで夢乃さんの顔が脳裏を過ぎる。

 ぶるぶるっ。さ、寒気が……。

 変な装備を着せられる前に、自分で探すか。


 そう思ってファクトの町中をぐるぐる歩き回った。

 NPCの防具屋には、当然だがノーマル装備しか売ってない。

 探すならプレイヤーの露店かぁ。


 生産品だと、レベル12の次は16。その次は20か。

 12のままもう少し我慢して20を買うか、それとも16を買うか。

 ま、値段と相談だよな。


 まずは胴の防具。防具類では一番HP補正も高く、当然防御力もそうだ。

 レベル20まで頑張るとしても、ここだけは16にしておけば楽だろう。

 んで、やっぱレアだよな。

 町の手前に出るボスのお陰で、素材はそこそこ出回っているだろうし。


 ほほぉ。露店出すと屋台の上部に吹き出し式の看板が出るのか。これで何屋さんかもすぐ分かるな。

 なになに……



【レアコートあります。10000円】

【サマーセール! 軽やかな羽の法衣(レア):12500円】

【魔法職必見! レア法衣15000エン!!】



 コートが一万円かぁ……

 って、円にすれば安く見えるとでも思ったか!!

 円だろうがエンだろうが、高いんだよっ買えるか馬鹿野郎っ!!

 こうなったら金策だ!


 とりあえずまずはさっき買ってあった合成剤で技能レベルを上げよう。

 ファクトを避け、港町クロイスの路地裏でこっそり合成していると、ピカっと俺が光る!


「あぁ、そうか。生産技能使ってても経験値入るって言ってたもんな。俺、おめ」


 一人寂しくお祝いした後、再びゴミ素材を合成していくのであった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ