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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション1.01【始まり】
61/268

61:マジ、俳優になる。

 後発組のほうが有利になるっていうゲームも珍しいな。

 だがやっぱり納得いかない。

 同じ時間を掛けてレベル上げしたのは変わらないのなら、やっぱり同じようにIMPポイントが欲しい。


『これまでの行動によるデータは全て保存されておりますので、遡って技能経験値を修正することはまぁ可能ではございますが……』

「え? マジ!? じゃあやってくれよ!!」

『いえ、それはワタクシの一存ではできません。その辺りは幹部クラスの社員様による会議で検討しませんと』

「ならやってくれ!」

『いえ、ですから社員の……つまり人間による会議ですので』


 シンフォニアは蚊帳の外だという。

 じゃあどうすればいいのか。


『要望をお出しになりますか? 実は既に同様の要望は多数送られておりますので、数が増えれば会議にかけられやすいかと』

「要望! 出すっ。で、公式サイトからメール出せばいいのか?」


 前にやってたVRMMOでも、要望は公式サイトのメールフォームからだった。

 が、『IFO』ではもっと簡単に出来るらしい。


『ワタクシ達サポートAIスタッフに直接言って頂ければ、それをフォーマットしてお送りします』

「おお! 楽でいいな。じゃあ、オープンベータテスト中の技能経験値の見直し……でいいか?」

『見直しし、現在の仕様に準じたレベル調整の要望。でしょうか』

「おお、それで頼む」

『畏まりました。それでは一つ、ワタクシからもお願いをしてよろしいでしょうか?』


 ん? こいつからお願い?


『実はですね……その、ある企画が持ち上がりまして』

「企画?」


 シンフォニアが頷くと、昨夜のロビーハウス劇的大改造の話しを他のロビースタッフと共用した説明する。

 そこから端を発し、話しは運営スタッフ――つまり人間の社員にまで届き、そこからわいわいと盛り上がって――


『ロビー劇的大改造コンテストを開こうという話しになりまして』

「……はい?」

『ですので、各プレイヤーとそのサポートAIスタッフとが協力し、ロビー内を改造しようと。もちろん応募形式ですので、希望される方のみの参加となります』


 で、応募された中から最優秀賞だのなんだのを選出するんだと。

 ロビー活性化にも一役買うだろうし、サービス開始直後なんであれこれイベントやって新規ユーザーの確保もしなきゃならないんだとか。

 一瞬、運営会社の舞台裏事情が見えた気がする。


 それで、その企画とお願いになんの関係が?


『はい! 実は劇的大改造の見本として、ここをプロモーションムービー風にご紹介させて頂きたいと、チーフが申されまして』

「こ、ここをか!?」

『はい! 改造中のもようもデータとして保存されております。それを使って動画の作成をしたいのですが、よろしいでしょうか?』

「え? じ、じゃあ、俺ってば全国デビューするのか?」

『お嫌でしたら、モザイクなり代役を立てますっ』


 モザイクって……犯罪者じゃないんだし。

 寧ろ俺的には……遂にデビュー! みたいでウェルカムなんだが。

 それを伝えるとシンフォニアも大喜び。


『で、では……動画の最後に「ようこそ、イマジネーションファンタジアオンラインへ」というようなセリフと、出迎える仕草を入れたいので、その撮影も』

「オッケーオッケ。出迎えるねぇ……こんな感じ?」


 両手を広げて見せるが、シンフォニアのイメージでは無いらしい。

 眉を潜め首を左右に振られてしまう。

 じゃあ――帽子を脱いで会釈するようなポー……鳥の巣があるから帽子は被れない――と。


 ようこそ、ようこそね〜。

 くっくくっく。


「あ、そうだ。『ようこそ』っていうぐらいだし、せっかくだからそこの扉の前で撮影しないか? で、扉を開いて、さぁどうぞ。みたいな」


 そう言って俺はゲーム内に行くための扉の前に立ち、右手でドアノブを掴む。

 客をエスコートするようなイメージで、シンフォニアを招くようなポーズで迎えた。


 ほぉっと溜息を吐くような感じでシンフォアニアが俺を見つめる。

 よしっ。これなかなかグゥだろ?


『それ、いいですね。じ、じゃあ、撮影本番、参ります』

「おう!」






『はい、お疲れ様でした』

「お……おう」


 何度だ?

 何度扉を開く動作を繰り返した?


 服が乱れている。

 羽根をもっとふさふさに。

 髪を整えろ。

 笑顔を絶やすな。


 何度も何度もダメ出しをされ、ようやく撮影が今終わった。

 僅か十五秒たらずだってのに、何十分撮影したんだよ!


『ご協力、ありがとうございます彗星マジック様。それではごゆるりとゲームをご堪能ください』

「あ……あぁ。昼の十二時にログアウトして飯食いたいんだけど、アラーム機能とかないか?」

『でしたらこちらでお知らせしますが、十二時丁度でよろしいですか?』

「出来れば三十分前になったら教えてくれ。そこからゲーム内一時間以内にログアウトするからさ」

『畏まりました』


 ゲームをする前から精神的に疲れたな。

 この疲れを遊んでリフレッシュするぜ!


 あ、今日の分の宿題……。

 ゆ、夕方だ。晩飯までの時間にちょこっとやればいいか。


「よし、じゃあ行って来る」

『はい。いってらっしゃいませ』

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