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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

バーション1.01【始まり】

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54/103

54:マジ、死亡。

【戦闘不能状態になりました】
【最寄のセーブポイントに帰還しますか?】
【はい   いいえ】

 半漁人に押し倒され、尚且つ奴の攻撃をまともに食らった俺は、ほぼ即死状態!?
 え、視界が灰色なんですけど。
 死んだって、どうしよう。オープニングイベントん時みたいに復活しないのか?
 いや、するだろ。
 ってことはセーブポイントに戻れば安泰!?

【はい】をポチるとそこは……。

「トイレ休憩の村……だよな」

 戸数僅か十軒たらずの極小村。ほんの小一時間前ぐらいに見たあの村だ。

「お、おおぉう。どうしよう。まさかこの村がセーブポイントになってたとは」

 ここからダッシュでさっきの川まで……走っても三十分以上掛かるだろっ。どうすんだこの状況!
 視界に見える簡易パーティー欄。
 セシリアのHPがぐぅーっと減ると、また一気に回復している。自前の課金ライフポーションを飲んだんだろう。
 夢乃さんやドドンのHPは維持できてるが、MPが減ったり増えたりしている。二人とも、ポーション飲んで必死に頑張っているようだ。
 火力が減った三人パーティーで、ボス相手ってのは厳しいだろ!?

「あぁぁぁ、俺の馬鹿あぁぁっ」

 今すぐ飛んで行って合流しないと、ライニャーに皆が食われてしまうっ。
 今すぐ飛んで……飛んで!?

「俺死んで、戦闘状態解除されてるからテレポ使えるじゃん!」

 俺ってば冴えてるぅ。
 テレポは一度来た場所なら、どこでも飛んで行ける仕様だ。
 さっきまでの戦場が、俺にとって新エリア内では最も奥になる位置になる。
 テレポを唱え、表示されるマップの、ここから東の方角を見る。川も目印になっているので、それらしい場所はすぐに解った。
 拡大し、表示された橋の――奥側をタップする。

【未進入エリアです。設定しなおして下さい】

 なら橋の手前だ。
 タップした途端、視界がぐにゃりと歪む。次の瞬間には景色が一変し、五十メートル程はなれた場所で枯れ木の化け物が見えた。その直ぐ先にはライニャーの姿も。

「よっしゃー! 奴等の背後に出れたぜっ」

 慌てて皆の所へ駆けつけようと走り出したが、後ろから大賢者に呼び止められてしまう。

「大賢者様、今は忙しいのでまた後で」
「今じゃ! 今じゃから呼び止めたのじゃ。しかしまぁ、上手いこと戻ってこれたの」
「あぁ、それはテレポのお陰で」
「なに! なら儂のお陰じゃろう。素直に従うがいい」

 ぐっ……まさにその通りなので言い返せない。
 手招きする大賢者の下に走っていくと、行き成り杖で額をど突かれた。
 くっ。痛ぇじゃないか――はっ、もしやこれは!?

「だ、大賢者様っ」
「んむ。土属性の魔法を伝授してやったぞ。じゃがこれでもお主のパーティーは人数不足で苦戦するじゃろう」

 そこはどうにもならない所なので、手数でなんとか頑張るしかない。
 いや寧ろあんたが参戦してくれれば……ブツブツ。まぁ無理だろうな。
 ステータスを確認し、新たに『土属性魔法』が加わったのを見る。そしてスキルには『ロック』というのがあった。
 そういやクエスト中にレベルが上がって16になってるが、ステータスも振ってないな。
 とりあえず今は火力が少しでも欲しい。迷わずINTに全振り!

 ポーションの残量も確認する。
 ゲーム内で流通する通常ポーションはまだ結構あるな。課金はライフが残り九本。マジポは……無い。
 けど、ポーションは他にもある!

 INT10アップ。
 五分間だけ有効だというブーストポーションだ。
 他にもステータス+10各種、命中率、回避率10%アップ、防御率10%アップ、HP+500、MP+500なんてのもある。
 この際だ、全部飲んでしまえ!

 ぐびっと全部を飲み干すと、体の底から力が漲ってくるような……徹夜明けでエナジードリンクを飲んだ後のような興奮が沸きあがる。

「うおおぉぉぉぉっ、きたきたきたあぁーっ!」
「その調子でぶちかまして来るのじゃ!」
「はいっ、お師匠様っ」
「弟子はとらんっ」

 ダッシュで駆けて行き、ライニャーの背後からまずはファイアを全力で浴びせる。
 そのダメージは640!!
 おぉ、ダメージがワンランク上がったぞ。

《ぷっぷっぷ。ぷっぷっぷ。ぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷ》

 なんか頭上から屁の三三七拍子が聞こえてくる。
 ぷぅの応援か。そういやペットって、戦闘には参加しないが、バフ効果があるみたいな事書いてたな!
 よぉし、更に俺様パワーアップ!
 だったら次は――

「『ロック!』」

 覚えたばかりのスキルを唱えると、足下からソフトボール大の石がふわっと浮かび上がった。
 そうか、これを――

「そうじゃ、それを――」
「掴んで――」
「念じて――」
「奴を――」
「奴に――」
「殴れっ!」
「放て! って、何故そうなるのじゃああぁぁぁっ!?」

 浮き上がった石をぐわしっと掴み、そのまま目の前のライニャーの背に思いっきり押し当てた!
 ゴキっという音と共に浮かび上がるダメージ数値は999!!
 激痛だったのか、ライニャーも背を仰け反らせて鳴いている。
 が、ヘイトは取っていないようだ。

「そうか、死んだから俺が蓄えたダメージヘイトもリセットされたのか。ありがたや〜。これなら最初からフルパワーで戦えるぜ!」

 ロックからサンダーフレア。多段ヒットが終わるとロックのCTは既に明けており、ここで再びロック。そこからファイアを撃つ。
 サンダーフレアのCTが明けるまで、ロックとファイア、CT明け待ちに一瞬座ってMPの自然回復量を調整。ダメージ量の少ないサンダーはMPの無駄使いと判断して切り捨てだ。

「マジック君! 戻ったのかっ」
「あぁ。待たせたな。いやぁ、テレポートがあって良かったぜ。お陰でここまで一瞬で来れたし」

 そう言うと、ライニャーの向こうからドドンが短い足でやってきた。

「なんでマジ死に戻ったんだよ!」
「いや、なんでって……死んだし」
「そのまま待ってればアイリスが起こしてくれたのに」
「え?」

 だってアイリス戦闘中――と思ったら、ウッドマンと戦闘していたメンバーの人がバタっと倒れた。
 そして駆けつけてくるアイリス。
 少し離れているのでなんて言ってるのか解らないが、うにゃうにゃと呪文を唱えると、倒れた奴がむくっと起き上がった。

「蘇生魔法……持ってたのかよ」
「持ってたんだよ」

 ……い、いや、無事に戻ってこれる手段あったんだし、問題ないない。
 それにその場で蘇生されてたら、即戦闘状態になっただろうし、そうなったら大賢者から土魔法も伝授されてなかったろうしな。
 それに、ブーストポーションを飲む余裕も無かっただろう。
 け、結果オーライさ。うん。

 ふ、ふぅ。オープニングイベントと同じノリだと勘違いしたが、テレポートがあってホント助かった。
 汚名返上するために、全力でぶっぱなすぜ、ウリャー!

 そこからの俺の快進撃は、自分で言うのもなんだが見事なものだった。
 死んだ事でダメージヘイトもリセットされていたもんだから、有効打中心に魔法をぶっぱしてもタゲが跳ねることもなく、安心して打ち続けられる。
 ライニャーのHPが二割を切ると、遠くで大きな水しぶきの上がる音が聞こえた。
 それと同時に光る俺。
 いったい何事!?
 え? レベルが上がってる? なんで??

「マ、マジ!? お前の頭、光ってるぞっ」
「あ、ああ。なんかレベル上がったみたいで」
「そうやなくて、彗星君の羽根……鳥の巣に刺さっとる羽根が光っとるばい!」
《ぷぷぅー♪》

 はいー?
 見えない俺にとっては何が何やら。

《ニャゴゴゴゴオォォォッ》
「くっ。そろそろマジック君に貰ったポーションも無くなるっ」
「うぉ。今は俺の頭の事とかどうでもいい。二人とも、全力でぶっぱだ!」
「おうっ」
「オッケー」

 ロックを唱えると、少し大きめの石が浮き上がってきた。
 それをぐわしっと掴み、体を捻って思いっきり奴の背中へと叩き付けるっ。
 うん。これじゃあまるで殴りマジだな。まぁダメージがINT依存なんだし、殴りじゃないさ。
 しかしなんかダメージがもうワンランクアップしてないか?
 1100ちょいになってたんだが。
 まぁいいか。これでたたみ掛けられる!

「ウッドマン討伐完了! 助太刀するぜ」
「よっしゃ、頼んます」

 これで鬼に金棒!
 ファイア、サンダーフレア、そしてロック!
 ライニャーのHPが一割を切った。更にたたみ掛け!
 数発お見舞いすると遂にはダメージヘイトを取ってしまい、奴がこちらに振り向いてしまった。

「うぉぉぉぉ、マズイマズイマズイ! さっさとクタバレ『ロック!!』」

 奴の眉間目掛けて石を叩き付けると、一瞬だがヒヨコが現れた。
 ピヨった!?

《ぷっぷっぷ。ぷっぷっぷ。ぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷ》
《ぷっぷっぷ。ぷっぷっぷ。ぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷ》

 再び屁の三三七拍子が始まる。

《ぷっぷっぷ。ぷっぷっぷ。ぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷ》
《ぽっぽっぽ。ぽっぽっぽ。ぽっぽっぽっぽっぽっぽっぽ》
《ぷっぷっぷ。ぷっぷっぷ。ぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷ》
《ぽっぽっぽ。ぽっぽっぽ。ぽっぽっぽっぽっぽっぽっぽ》

 ん?
 なんか違う音が混じってないか?

《ぷっぷっぷ。ぷっぷっぷ。ぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷ》
《ぽっぽっぽ。ぽっぽっぽ。ぽっぽっぽっぽっぽっぽっぽ》

 絶対混じってる。なんか混じってるううぅぅっ。

 ばささっと背後の森から無数の鳥が羽ばたいた。
 ぎゃああぁぁぁっす。俺が死ぬううううぅぅぅぅぅっ!?

《ぽっぽっぽー》
《ぽっぽっぽー》
《ぽっぽっぽー》

 一斉に鳴き始める……鳩?
 いや、見た目は灰色のボールだ。ボールっぽい鳥だ。
 そいつらが一斉に鳴き始め、何故かライニャーの目がとろーんっとなりはじめる。

「ちょ、あっちのパーティーの人、寝てるし!」
「な、なんだって!?」

 主に寝ているのは前衛組。でもセシリアは寝ていない。どういう事?

「こ、この鳴き声、睡眠判定が入ってるわ」
「INT低いとほぼ全滅っぽい」

 と、立っている向こうのメンバーが言う。立っているのはヒーラーと、俺と同じ魔法職の人だ。
 でもこっちは俺以外、INT上げてないだろ? なんで?

《ぷぷぅ♪》
《ぽぽぅ♪》

 いつの間にやら俺の肩にボールが一個。じゃない、鳥モンスターが一羽止まっていた。
 見た目はピチョンそっくりの色違い。つまりこいつらは同じ種族なのか。
 ま、まさか……

「ピチョンの称号か!? 約束を守っている間、ピチョン系モンスターと友好的になれるとか書いてあった気がするっ」
「え? じゃあマジと同じパーティーの俺等にも、睡眠効果がこなかっただけってこと?」

 そう考えるのが妥当だろう。
 共闘はしているが、向こうのメンバーとはパーティーを組んでいないから、あの鳥モンスターから見ればただのプレイヤーって事になる。
 ターゲットはライニャーだったんだろうが、範囲攻撃だったようでプレイヤーも巻き込んだんだろう。
 頬ずりしている鳩モンスター。
 うん。羽根が気持ちいい。
 これは……ちょっと可愛いかもしれない。

 そう思った瞬間――

《ぶぅっ!》
《ぽっ、ぽぽーっ》

 巣からダイブしてきたらしいぷぅに足蹴りされ、鳩モンスターが飛び去ってしまった。
 なんてことしやがる!

「さて、ライニャーが眠っている間に止めを刺そうぜ」

 そう言いながらドドンが斧の柄をにぎにぎしながら近づく。
 ドドン。お前その斧、弓ですから!

 寝息を立てて眠るライニャーは、大きな猫みたいなものだ。
 そんなライニャーを前にして、やっぱりというか案の定というか、セシリアが苦しげな表情を見せた。

「うぅ、ライニャー……」
「セシリア。まだテイムしたいのか?」
「テイム? いや、私は召喚魔法を持っていないから」

 いや、そうじゃなくって。

「卵、まだ持ってるのか?」

 と尋ねると、彼女は首を左右に振る。
 一個しか買ってなかったのかよ!

「卵だったら、アイテムモールに封印率の高いのが売ってますけど?」

 という悪魔の囁きが、生き残った|(?)ヒーラーさんから齎された。
 直後、セシリアが光の速さでシステムメニューを操作しはじめる。
 まさか……まさかだよな?

「お、おいセシリア。相手はボスモンスターだぞ? いくら動物型だからって、封印出来る訳――」
「買った!! そして私は勝つ!!」

 ダメだこりゃ。人の話し全然聞いちゃいねえ。





 鳩ぽっぽが大合唱される戦場に立つセシリアは、その手に光輝く黄金の卵を握り締めている。
 結局、ボスの封印に関して起きているメンバー全員がOKサインを出した。
 まぁ面白そうだしな。
 出来なかったら笑うだけ。出来ても失敗したらやっぱり笑うだけ。
 成功したら……いやいや、無理だって絶対。ははっ。

 ごくり。

 睡魔に抵抗して起きているヒーラーさんと魔術師さん、そしてこちらのパーティーメンバー。あとファリスとアイリスの二人。
 全員が固唾を呑んで見守る中、遂にその時は来た!

「とりゃあぁぁぁぁっ!」

 セシリアの手から投げ放たれた黄金の卵は、ライニャーの後頭部にぶつかると――
 割れた!?

「わぁぁぁぁぁっ、500AQの卵がぁぁぁっ」

 うん、まぁそうだよな。失敗するよな。
 そう思った矢先、割れた卵から白煙が発生し、もくもくとライニャーを包んでいく。

 お、おい、まさか……

 数秒後、沈みゆく太陽を背に、煌々とした顔で仁王立ちするセシリアの姿があった。
+注意+
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