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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

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39/103

39:マジ、oβを終わらせる。

 Q:前に出てくる魔法使いは地雷ですか?
 A:はい。

 そんな解りきった事、なんで今まで気づかなかったんだっ。
 MMO自体、経験がこれで二度目ってのもあるし、最初が前衛だったからなぁ。
 魔法使ってるから立派な魔法使いだと思い込んでしまっていた。
 そうだよ、パーティーで遊ぶのなら、それぞれの役割分担ってあるだろ。

 ただ問題がなぁ。
 だって俺の攻撃、ゼロ距離まで近づかないと当たらないんだぜ。
 こればっかりはどうしようもない。

 考えろ。なんとか方法はあるはずだ。
 スキルを作れるんだぞ。それでなんとか抜け道を――

 考えながら戦闘をしていたら、ヤンキーラビットの突進攻撃を食らって軽く咽る。
 くっそこいつら、跳躍力を生かして、まるで瞬間移動でもしてきたかのように突進しやがって。

 瞬間……移動?

 あれ、これってテレポートが使えたりしないか?
 任意の場所に移動なんだし、例え直ぐ近くでもテレポ、出来たりしねえかな?
 ものは試しだ。

「『テレポート』」

 唱えるが、システムメッセージが現れて【現在戦闘中の為、『テレポート』は使用できません】と。

「今のなんやったん?」
「戦闘中やったら使えねえだろ?」
「使えなかった。いや、テレポを回避スキル代わりに使えないかなと思って」
「「あぁ、なる」」

 姉弟が納得している最中、兎相手に奮闘していたセシリア。こちらはその場での回避行動として『クイックターン』というのを作っている。
 くるんっと身を翻し、すぐに攻撃に転じられるスキルだ。媒体にしたのは『格闘術』だという。
 羨ましい。
 ヤンキーラビットを倒し終えたセシリアが、こちらに振り向き一言。

「テレポートが使えなくても、技能そのものを媒体にして新しいのを作ればいいのでは?」

 そう言う彼女の顔は、まるで女神のようだった。





◆◇◆◇

『リターンオブテレポート』
 属性:空間移動+格闘術
 効果:自身を中心に半径十五メートル以内の目視できる場所に近距離テレポートを行い、且つ
    五秒後に元の場所へと近距離テレポートを行う。その間、攻撃行動は可能。
    尚、一度目のテレポート先で一歩でも動けば、スキル効果は解除される。
 消費MP:50

◆◇◆◇


 ふ、ふふふ。
 攻守を兼ね揃えたスキルを作ったぜ。
 スキル作成をやってみて判ったのは、スキル効果にデメリットを入れてみるとIMPの消費が減った事。なのでスキルが解除されるかもというデメリットを入れてみた。
 まぁ一発ぶっぱして帰還テレポが発動するのを待てばいいしな。『サンダーフレア』だとスキルを唱えて多段ヒット終了まで待ってると、だいたい七秒だ。二秒分のヒット数が無駄になってしまうが、ここを十秒にしたら消費IPMが30超えてしまった。五秒に縮めると消費22。これでも溜め込んだポイントの半分近くが消し飛ぶ。

「技能を複合した分、消費が増えたみたいだな」

 スキル作成の結果を言うと、ドドンが興味深そうに声を掛けてくる。奴も格闘と敏捷の複合を考えていただけに、思うところがあるんだろう。
 その辺りはセシリアも同じようで、既に作った『クイックターン』以外に技能複合スキルを作りたがっている。

「防御系スキルをそんなに作って、どうするんだよ」
「むぅ~。だってぇ。攻撃スキルだとポイントたくさん必要だしぃ」
「まぁ気持ちは解るが。技能を増やしてレベル上げさせて、ポイント溜めするしかねえよ」
「むぅ~」
「無駄にポイント使わないで、しっかり考えたほうがいいぞ」

 かく言う俺も、この新しいスキルはパーティー専用でしか使えないスキルだ。
 ソロだと俺に向ってきているモンスターの移動先を予測してテレポとか、難しいに決まってるし。しかもテレポ先にモンスターいないからって動けば、帰り道用テレポが解除されてしまう。
 ヒットアンドアウェイの究極スタイルなわけだ。
 誰かがモンスターを抱え込んでくれてる所にテレポしていって、一発ブチかまして逃げる。
 そんな感じだ。

 ソロでは使えない。逃げる意味が無い。
 だが後悔はしてないな。
 これで後衛魔法使いとして、立派にデビューできるんだから!

 セシリアをAGI前衛タンクにして、新スキルの練習に励む。彼女もパーティーのタンク役としての練習をしたいというので丁度いい。
 あまり囲まれすぎない程度にし、戦闘終了後には俺が『ヒール』を掛け万全を期す。

「さて、練習だ。行き成り俺が横に出て来ても、驚かないでくれよ」
「解った。いつでもくるがいいっ!」

 どこのラスボスのセリフだよ。
 まぁ練習ってことで、とりあえず三メートルぐらいの所からスキルを使ってみる。

「ゴブリン、三匹来るぞ」
「ういっす」
「彗星君の練習やから、そこの草を採取しながら見とるねぇ」
「あ、じゃあ俺も採掘!」

 姉弟は戦う気が無いらしい。
 セシリアに寄ってきたゴブリンどもを、彼女が一撃ずつ入れていく。これでダメージヘイトが溜まった事になる。
 そこですかさず俺が『リターンオブテレポート』を使って移動・・するわけだが……攻撃魔法と違って、移動はノーコンと関係ないから楽勝なはず!

「『リターンオブテレポート!』――おぉ! 一発で成功したぜっ」

 セシリアの横を狙ってスキルを使ったが、あっさり成功。よし、ノーコンはやっぱ影響しないな。
 嬉しさのあまりガッツポーズを決めて、さぁ攻撃だ――と思ったら、直ぐに元の位置へと戻ってしまった!
 うん。無駄な動作してる余裕は無いな。だって五秒だもんな。

「マジック君。それって成功なのか? 失敗なのか?」
「ス、スキル自体は成功だ!」

 ゴブリンの相手をしながら尋ねてくるセシリアに、精一杯の虚勢を張ってみせる。
 い、いや、間違った事は言ってない。成功はしたんだ。『リターンオブテレポート』そのものは大成功なんだ!

 その後、ヤンキーラビットやゴブリン、そしてシープという羊モンスターで時間ギリギリまでレベリング。
 お陰で俺とセシリアはレベル14まで上がったし、夢乃さんとドドンも12になった。
 目標より一つ高くなったのは、かなり嬉しいな。

 町に戻って清算をし、再び大賢者の下を訪れる。
 すっかり引越しの準備も終わったようで、家の中はテーブルと椅子、僅かな食器ぐらいしか見えない。まぁ元々あんまり物が無かった家だったけどな。

「帰ってきたか。で、レベルはちゃんと上げたんじゃろうな」

 大賢者が椅子に座って開口一番に尋ねてくる。
 ふ、もちのろんだぜ。
 レベル14になった事を告げると、

「ふむふむ。ちゃんとわしのヒントを理解したようじゃな」
「理解?」
「『火属性魔法』の技能、修得できたんじゃろう?」

 あぁ、それね……えーっと……。

「新しい技能は修得したんですよ。ですけどね……『火属性魔法』じゃなくって……『炎雷属性魔法』なんです」

 でもでも、炎って単語は入ってるし、『火属性魔法』と似たり寄ったりだよな。
 苦笑いを浮かべて大賢者の反応を待つが、どうやらシンキングタイムのようだ。
 口をポカーンと開けたまま硬直し、ようやく瞬きしたかと思うと――

「何故そうなるんじゃ!」

 と座っていた椅子から飛び上がった。
 大賢者様、また腰をやらかしますよ?

「わしは火属性のヒントを与えたんじゃぞ。なのに何故炎雷なんじゃ。そっちの方が難易度の高い技能じゃろうにっ」
「そうなんですか。それで、炎雷ってどんな魔法になるんです?」
「どんなじゃと? ――言葉そのまんまの意味じゃ。炎と雷を合わせた魔法じゃ。まぁ火と雷の属性技能を合わせて作られるスキルは、炎雷だけで作ることも出来るというだけのことじゃ」

 この技能を使って新しいスキルを作る場合、必ず火と雷の効果を同時に使っておかなきゃならないらしい。更にこの技能で作るスキルは、全て範囲攻撃になるんだとか。だから初期スキルなのに小範囲攻撃だったのか。
 なんかすっげー強くね?
 と思ったが、そこにはそれなりのデメリットもある。
 まず既に解っているデメリットだが、CTが長い。再詠唱できるまで六十秒あるんだからなぁ。
 そして消費MPの多さ。
 レベル1の現時点で100なんだけども、スキルレベルが上がると威力も少しあがるが、消費するMPはかなり増えるとのこと。
 そしてスキルレベルの上がりは悪い。
 結構使ってるけど、まだレベル1のままだし。

「技能の複合で作ったスキルのほうが、実はレベルは上がりやすいのじゃよ。まぁその分、スキルを作るときのイメージ力は少なくて済むがの」

 イメージ力ってのはIMPの事だろうか。
 ポイント少なくて済むけど、デメリットは多いぞってか。

「やっぱり火属性欲しいんですけどぉ!」
「引越しは明日の朝から移動開始じゃ。お前さんがたが揃ったら出発するから、なるべく早めに集まってくれ」
「「はい」」
「それから、移動には長時間掛かるからのぉ。いろいろな準備はしっかりしておくんじゃぞ。とくにトイレには事前にしっかり行っておくように」

 ここでもトイレネタかよ。このゲームのNPCはどんだけトイレ好きなんだ。
 まぁもちろんちゃんとしっかりバッチリ済ませてからログインするけどさ。
 そんな事思っていると、なんだか頭が……

「むずむずする」

 頭というより頭上か。
 なのにだ。

「トイレか? あっちじゃぞ」

 大賢者がシンキングタイム無しで反応する。
 どんだけトイレネタに敏感なんだよ。つうか、トイレじゃねえって!

「彗星君、早くログアウトせんと」
「マジ、リアルに戻ったらお漏らしとか、恥ずかしいぜ」
「マジック君……」
「だからそっちじゃねえって! 頭だよ。なんか頭の上のほうでむずむずするんだよっ」

 自分では見えない頭を指差し、小便では無い事をアピールする。
 すると当然の事ながら、皆の視線は俺の頭に集まった。

「はっ! マ、マジック君、その卵、割れているぞっ」
「な、なんだってーっ!?」

 セシリアの言葉に驚いたが、その驚きは直ぐに不安へと変わる。
 孵化、するのか?
 呪いの卵が孵化するのか!?
 割れていると叫んだセシリアは、何故か俺の頭を押さえつけて卵をガン見しているようだ。

「あぁ、それは卵型の孵化器じゃ。最初から割れたようなデザインになっておるが、その中に本物の卵が入っておるのじゃよ」
「そ、そうなのですか。なんだ、まだ生まれるわけじゃなかったのか。刷り込みはまたの機会か」

 そうだった。巣に乗ってるのは卵入りの孵化器であって、卵は直接見れないんだったな。

「ってセシリア。今サラっと刷り込みがどうとか言わなかったか?」
「ん? 鳥は卵から孵ったときに一番最初に見たものを親だと思い込むだろう? だから真っ先に私の顔を見せれば、私の後ろを追いかけてくるだろう。ふふふ、可愛いなぁ」

 ふふふ、じゃねえよ。もう既にお花畑妄想してるし。

「それやったら私も!」
「俺もっ。弓で射った得物を、鷹に取ってこさせるとかカッケーやん」
「いや、鷹じゃなくってピチョンだから。モンスターだからっ」
「モンスター? マジで?」
「マジだ。俺だけにな」

 ……。
 誰かなんか言えよ。
 いや、言ってください。

「まぁ冗談はおいといて、もし刷り込みなんか成功したら彗星君は困るやろ。孵化するときは念の為、人気の無い所に行ったほうがいいね」
「なんで困るんだよ、姉貴」
「ピチョンから直接卵を託されてるんやけど、その約束破ったら後悔するよって脅迫もあったしねぇ」

 ぐっ。嫌な事を思い出させるなよ。
 夢乃さんには話ししてないが、称号見たらそりゃあもう……
 エリア内の鳥類全部に追いかけられる運命だからな。

「ぬぅ、そうか。マジック君は言っていたものな。これは呪いの卵だって……そうか、呪われているのだな」
「そうだよ、呪われてんだぜ」

 孵化したら引き取りに来てくれねえかな。
 でも無事に成長してくれとか言ってたし……無理か。

 はぁっと溜息を吐いていると、セシリアが俺の肩をぽんっと叩き、

「強く生きるのだぞ、マジック君」

 と至極真面目な顔で言った。


 


「じゃあ、皆サービス開始時刻の八時ログインでいいんだな」
「オッケー」
「あたぼうよ」
「うん」

 お互いに正式サービス開始八時にログインする事を確認。
 丁度その時、空から何者かの声が響き渡った。と同時にNPC全員の動きがピタリと止まる。

《本日は『Imagination Fantasia Online』のオープンベータテストにご参加いただき、誠にありがとうございます。
 まもなくオープンベータテスト期間が終了となります。
 ご参加頂いた皆様にはささやかながら、運営より贈り物を贈呈させて頂きます。
 贈り物は正式サービス開始時刻に配布されますので、ログインサーバーのスタッフよりお受け取りください》

 おぉ、何かくれるのか!
 周囲からも他のプレイヤーが上げる歓声が聞こえてくる。
 セシリアなんかはあたふたしながら手を動かしているが、贈り物ってやつの配布はまだだからな?

《また、オープンベータテスト専用の特別技能を、一部のプレイヤーへ付与させて頂きます。
 こちらも正式サービス開始時に技能をセットさせて頂きますので、皆様ご確認ください。
 残念ながらこちらは、運営開発スタッフにて選ばせて頂いた技能とその習得条件に合致した方にのみ付与となっておりますことをご了承下さい。
 尚、用意された特別技能は五十ございますが、実際に習得された技能は三十二種類しかございませんでした。
 同一技能を複数のプレイヤーが条件をクリアしたというものもございます。条件をクリアした方全員に付与される仕組みとなっておりまして、特別技能を付与されますプレイヤー数は、約三百名となっております》

 と、特別技能!?
 おいおい、そんなもの付与されるとか、涎ものなんですけど?

《正式サービス開始時に行われますアップデート情報を、十七時より公式サイトにて公開させて頂きますので、どうぞお楽しみください。
 それでは皆様、正式サービス開始後の『Imagination Fantasia Online』で、またお会いいたしましょう》

 空から聞こえる声が止むと、世界は真っ白に光り輝いて――

 そして、サーバーがシャットダウンされた。
+注意+
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