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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション0.00【オープンベータテスト】
37/268

37:マジ、ネーミングセンスを問われる。

「マジック、本当に開拓民の護衛クエストじゃないのか?」

「あ、ああ。本当、違うって」

「じゃあ何で視線を逸らすんだよ」

「怪しいよね。嘘付いてる証拠だよね」

「はっはっは。何を仰る兎さん」


 くっ、なんて鋭い連中なんだ。

 えぇ、そうですよ。嘘ですよ。


「マジック、頼むよ。開拓民の護衛クエだったらさ、俺たちも混ぜてくれないか? ほ、ほら、一緒にパーティー組んだ仲じゃん」

「そうだよマジック。ボクたち、あの乗客クエで力を合わせたじゃないか」

「マジックさん、イケメン度アップしてて、アコ痺れちゃうぅ。鳥の巣も可愛い♪」


 鳥の巣が可愛いというアコさんの美的センスは、相変らず理解に苦しむ。

 しかし、パーティーを組んだ仲とは言え、その後俺以外でパーティー組んでた事実があるのによく言えるよなぁ。

 まぁ俺が火マジじゃなかったから、仕方なかったのかもしれないが。


 ただ、どう頼まれようが彼らをパーティーに招き入れることは出来ない。

 パーティーの最大人数は六人。こっちは既に四人決まってるし、向こうは最大の六人揃ってる。

 出来ないというよりは、システム的にも無理なんだよ。


「悪い。本当はケンの言う通り、開拓民クエなんだ。けど、パーティーに入れる人数に限りがあるだろ? もし俺一人だったとしても、そっちは六人いるんだ、一人は参加できないんだぜ。それと、パーティーはもう四人揃ってるから、どっちにしてもお前らを誘うことは出来ない。悪いな」


 これで諦めてくれるだろう。


「じゃあ皆、飯食ってから待ち合わせな」


 そう言って自分のパーティーメンバーに声を掛ける。

 ログアウトしようと路地の隅に行こうとしたら、俺の手をケンが掴んだ。


「パーティー枠、まだ二つ余ってるんだろ? じゃあ、俺を入れてくれよっ」


 え? 何言ってるんだこいつ。

 ずっとつるんでたんだろ、昨日から。なのにアッサリ見捨てるのかよ。


「お前ら、ケンがこんな事――」

「俺も!」

「待ってよ、弓使いのボクのほうが何かと役に立つってば」

「タンク、いるだろ?」

「アコのヒールだって必要よね? ね、マジックさん」

「あのぉ、遠距離大火力なら私が一番だと思うんだけど、どう?」

「俺が先に声掛けたんだぞ。な、マジック。こういうのは早い者勝ちだって」

「じゃあ二番目は俺だったんだから、オーケーだよな」



 誰もそんな事言ってないし。


 俺、セシリア、夢乃さん、ドドンの四人が見守る中、向こうのパーティーは勝手に仲間割れを始めやがった。

 自分が一番役に立つんだと言ってたかと思うと、誰が何処でヘマしたから全滅したんだとか、美味いドロップだけこっそり抜き取っただろとか、女の子に必死アピールうざいとか、ぶりっ子うざいとかetc……

 しまいには男四人で殴りあいまで始める始末。

 まぁ殴ってもHPには影響ないみたいだから、別に止めなくていいか。


「あぁもう! こんなパーティー、抜けてやる!」

「俺だって抜けるさっ」

「ボクもだね。君たちみたいな地雷と、今まで我慢して組んであげてたけど、もう限界だ!」

「それはこっちのセリフだ! ヘイト取る前から矢を撃つ奴となんて、こっちから願い下げさ」

「アコももう少し上手な人と組んで楽したいから、バイバイするね」

「自分の事を名前で呼ぶような子、嫌いなのよね。媚売っててきもぃ」

「ひ、ひっどーい! 私だってあんたなんか大嫌いなんだよ!!」

「は〜ん、ぶりっ子はどうしたの? 素が出てまちゅよぉ〜」

「うっせー、ばーかばーか」


 女の子って……怖い。

 この場に居るのもなんだし、とりあえず――


「テレポするわ。皆ついて来てな」

「「「解った」」」

「『テレポート』」


 移動先はピリカ宅の前。

 これで静かにログアウト出来る。






『お帰りなさいませ、彗星マジック様』

「あぁ、ただいま。はぁ……」

『どうかなさいましたか?』


 扉を潜って丸太小屋へと戻ってきた。

 机の前の椅子に座った女NPCが立ち上がり、俺の傍へとやってくる。


「あぁ、なんていうかな。パーティーの絆って、簡単に崩れるものなんだなと思ってさ」

『パーティーから追い出されたのですか?』

「うーん……ある意味『はい』。ある意味では『いいえ』だな」


 首を傾げる彼女。

 まぁケン達のパーティーから誘われなかった点では『はい』だし、セシリア達とのパーティーでは追い出されてはいないから『いいえ』。

 レアクエストの為にパーティー解散するとか、人間の欲って醜いものだな。


『よく解りませんが、心中お察しします』

「解らないと言っておきながらお察しって、どういう事なんだよ、ったく」

『それはそうと彗星マジック様、何かお忘れではございませんか?』

「あ? 忘れ物?」


 忘れ物って、ゲーム内から何か持ち帰れる訳でもないだろうに。何を言っているんだ?

 両手を下のほうでもじもじさせながら、女NPCがこちらをじっと見つめてくる。

 な、何を忘れたっていうんだ俺は。そんな恥ずかしい忘れ物なのか!?


 はっとなって下を見る。

 うん。別にズボンを履き忘れているとかは無いな。


『すっかり忘れておいでですね』


 もじもじを止め、真顔の彼女が言う。

 そもそも何の事を言っているのかすら解らないんだから、思い出しようもない。


『彗星マジック様っ。ワタクシの名前を考えてくださるのではなかったのですか?』

「あ……あぁ、それね。あぁ、うん」


 それか!

 いやぁ、すっかり忘れてた。まったく全然考えてないよ。

 なんていえない雰囲気だ。

 真顔なぶん、じっと見つめられるとなんとなく、怖い。怒ってるように見えないこともないな。


 名前、名前……自慢じゃないが、今までペットすら飼ったことが無く、何かに名前を付けたりってのもした事が無い。

 あ、自キャラは除外して。

 前にやってたVRMMO物のキャラ名だって『水村 彰人』って本名をもじって『ミズアキ』だし。

 考えるのって苦手なんだよ。


『彗星マジック様っ』

「う……うぅ……あ、頭が……」

『仮病でございますね』

「ぐっ……」


 ある意味本当に頭が痛くなりそうだ。

 頭が……頭……こいつの頭、っていうか髪の毛、綺麗な青だよな。水色っぽくも見えるが、青だよな。

 青か、青ね。


「よし、コバルトだ!」

『コバルト?』


 ただの思いつきだけど、カラーリングを参考に名前を考えるのも悪くないよな。

 ブルーって名前だと男っぽいし、他に思いつく青系だとスカイブルー、マリンブルー、そしてコバルトブルーだ。


「お前のイメージカラー、コバルトブルーから取った名前だ。どうだ?」


 コバルト、良くね?

 なんとなくエキゾチックな響きもあるが、悪くないと思う。

 首を傾げて考え込む彼女。やがて出した答えは――


『もしワタクシのヘアカラーや目の色の事をおっしゃっているのでしたら、これはコバルトブルーではなくシンフォニーブルーでございます。カラーコードは#0085deでございますよ』

「シンフォニーブルー?」


 まったく聞かない名前だな。でも、シンフォニーってなんかよくね?


「あー、シンフォニーって、交響曲だっけ?」

『はい。左様でございます。管弦楽によって演奏される、多楽章で構成された楽曲の事をシンフォニー、またはシンフォニアと呼びます』


 音楽の事は解らない。でも、交響曲って漢字が惹かれる。

 MMOなんてのはプレイヤー同士が関わりあってなんぼのゲームだ。そんなゲームにあって、交わるという漢字が含まれた交響曲は、まさにMMOにピッタリだ。

 ゲームのロビーを管理するNPC。俺にとって、ゲームの入り口にあたるここの住人。


「よし、じゃあシンフォニアだ」

『ヘアカラーですか? 安直な……』

「い、いや、そうだけど、そうじゃないって。人との繋がり、交わりによってより面白さがアップするのがMMOだろ。交響曲ってのがさ、まさにピッタリなんだよ」

『ピッタリ……人との繋がり、そして交わり――シンフォニア……』


 考え込むような仕草で固まる彼女に、ダメ押しの一言を浴びせる。


「ほら、お前言ってたじゃないか。響きの良い、綺麗な名前をって」

『響きのよい清涼感のある、且つ知的で美しい印象を与える名前でございます』

「そうそれよ、それ。シンフォニアって響きは良いだろ? 清涼感だってある。知的にも聞こえるし、この名前でブスは有り得ないと思うだろ?」

『そう、言われてみると、そんな気もします』

「だろ? いいじゃないか。シンフォニアで決定な!」


 何度か小声で『シンフォニア』と、言葉の響きを確認するように彼女が呟く。

 何度目かのあと、彼女――シンフォニアの口元が僅かにほころんだ――ように見えた。






◆◇◆◇


名前:彗星マジック / 種族:ダークエルフ

レベル:11 / 

Ht:177 / Wt:66


HP:1150(1150) / MP:2425(2425)

STR:1

VIT:1+2

DEX:1

AGI:1+3

INT:81+8

LUK:1


SP:0


【セット技能】

『雷属性魔法:LV6』 / 『神聖魔法:LV5』|(

『格闘術:LV4』 / 『敏捷向上:LV3』

『魔力向上:LV6』| / 『鷲掴み:LV6』|

『採取技能:LV1』| / 『乗牛技能:LV1』

『怪力:LV1』|(new) / 『木工技能:LV』|(new)

『空間移動魔法:LV1』|(new) / 『炎雷属性魔法:LV1』|(new)



【獲得スキル】

『サンダー:LV4』|(1up) / 『ヒール:LV2』| / 『ライト:LV2』

『テレポート』|(new) / 『サンダーフレア:LV1』|(new)


『加工:LV1』|(new) / 『作成:LV1』|(new)

『修繕:LV1』|(new) / 『手入れ:LV1』|(new)


IMP:38


【称号】

『少女の勇者』 / 『綺麗好き』 / 『ピチョンとの約束』

『ヒヨっこ大工』|(new)


【装備】

『黒楼羽根のロングコート(レア)』|(HP+300) / 『黒楼のズボン』|(HP+150)

『海獣のブーツ(レア)』|(HP+150) / 『黒楼羽根の手袋(レア)』|(HP+100)

『海獣の杖(レア)』|(MP+100)

『ピチョンの飾り羽根付きピチョンの巣|(卵IN)(レア)』


◆◇◆◇

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