254:マジ、なんでもあり。
中ボスが待ち受ける場所は室内なんだが、この室内ってのがまたちょっと異常だ。
船の中だろ?
中ボスの身長は俺らの二倍以上あるんだよ。更にその中ボスが立ってもまだ余裕のある天井の高さ。
ここだけ豪華客船か何かか。
「めふぃすと、奴の特殊攻撃とかってのは?」
「HPが50%を切ると、即死スキルの発動よん」
「うげっ。即死ってどうするんだよ」
「大丈夫よ。奴のセリフをよく聞いててねん。『お頭が〜』って喋った時には、近接に対して即死効果のある攻撃をするから」
『だから俺は〜』から始まるセリフの場合には、遠距離――ボスから十メートル以上離れてるプレイヤーに対し、即死効果のある攻撃をする――と。
近接に対して即死攻撃の場合、セリフが終わって手持ちの武器を掲げる。このモーションが終わると即死判定になるので、それまでに十メートル以上離れろってことだ。
逆に遠距離即死の場合は、セリフの後、奴が腰巾着から何かを取り出す仕草をするので、それまでに近づけ――だそうだ。
なんでも即死効果のある煙玉みたいなのを投げつけてくるらしい。
近接即死の時には『リターンオブテレポート』で逃げる事もできるな。
遠距離はまぁ、俺は接近戦だから心配しなくてもいいだろう。
召喚する精霊はサラマンダーだな。
「サラマンダー」
〔ぼっぼ〕
「おっと。お前のバフは今回無しな。聖属性付与があるから、書き換えられると困るし」
〔ぼっ!? ぼぉぉぉ……〕
落ち込むなよ。
バフが掛けなおされ、あんまんに『カッチカチ』を施しいざ出陣!
CTが切れたら俺、セシリアの順で『カッチカチ』を掛けておこう。その為にも――。
「ぷぅ、サンバ頼むぞ」
〔ぷっ!〕
了解、っと敬礼するぷぅ。
準備は整ったぜ。
さぁ、やるぞっ。
まずはあんまんが飛び出していく。
「『鑑定』っすわっ。からのぉー『かかってこいやぁぁっ!』」
お。筋肉、鑑定技能取ったのか。
ボスの名前は【泳げなかった海賊カジャット】と出る。
……いや、海賊だろ? 泳げないって、どうよ?
レベルは37。
見た目は大きいスケルトンなんだが、その背後に何故かゴースト状態の、恐らく生きていた頃の姿なんだろう。そんなのが浮いている。
腰には巾着がぶら下がってるな。あれから即死攻撃用アイテムを出すのか。
とりあえずHPが50%になるまでは深く考えないで攻撃しまくっていく。
といっても、俺と紅茶さんは手加減しないと、ダメージヘイトであんまんを上回ってしまうが。
「『カッチカチ』。暫く見てるだけぇ〜」
「私もぉ」
「マジック君っ、紅茶さんっ。ちゃんと戦うのだっ」
「いやな、セシリア。俺ら全力で攻撃すると、あんまんからヘイトを奪いかねないからな」
「アンデット相手だから、私たちの方がダメージヘイトが高いのよ」
「む、そういうものなのか?」
「悲しいっすけど、そうなんっすわ。『かかってこいやぁぁっ!』」
お、二度目のヘイトスキルきたな。
じゃあ――ちょっと加減しつつ、攻撃開始しますかね。
「痒いところはありませんかぁぁ、毬栗『サンダー』!」
「ぜんっぜん意味わかんないし!」
ツッコミ早すぎるだろシースター。
雷が収束して形を成した毬栗サンダーも、今じゃあボーリングの玉サイズ。まるで鉄球のような状態だ。
重くも無い鉄球サンダーをスケルトンの脛目掛けて振り下ろすっ。
うむ。ダメージは400ちょいか。
じゃあ次――。
「『ライト』」
こちらもサイズアップしている、懐中電灯というよりもはや拡声器。
同じように脛を狙って叩きつけるっ。
よっしゃ。ダメージ1000達成!
聖属性を付与されたセシリアとシースターのスキル攻撃も900は出ている。
あんまんにしても800と、良いダメージ量だ。
そろそろ本気出してもいいですかね?
「『ファイア』ソード!』
「マジックって素手殴りだけじゃなく、武器も使うんだ?」
「あ? いや、これはスキルなんだが」
後ろからシースターに尋ねられ、振り向くことなくそのまま答える。
『ファイア』って言ってんだから、初期スキルだって分かるだろ?
「熱血闘気スキルかぁ。もうなんでもありだよね」
「おぅ。よくわからんが、ありだ」
形状変化で炎を剣の形にしてるだけなんだけどな。
形が違うってだけで、たぶんまったく同じINT数値と同じスキルレベルの魔法使いの『ファイア』と比べても、ダメージまったく同じだと思うけどな。
見た目が派手でかっこいいからこれでいいんだ。
『ライト』と『ファイア』を、ほぼ交互に繰り出す。
だがこの中ボス。さすがというべきか。
ムカ付くことに範囲攻撃をしてきやがる。
シミターをぶんぶん振り回すだけなんだが、奴の前方を扇形に攻撃してくるようだ。
「くっそぉ。斜め後ろに移動するか」
「その方がいいっすわ。マジさん防御力は低いっすからね」
「レジェンド入ってても布装備だからなぁ」
「わ、私も後ろに行った方がいい?」
「無駄にダメージ受けなくて済む分、あんまんだけに『ヒール』集中できるから、そうしてくれたほうがいいな」
「分かった」
セシリアと俺が中ボスの斜め後ろに陣取り、あんまんが正面、他さんにんは微妙に正面からずれた位置での後方に。
これで範囲攻撃が食らわないはず……だったが甘かった。
空洞になっている目の奥がギラリと光って、シミターぶんぶんが来る――と思ったら、背後霊的な方がくるりと俺たちの方に向き、半透明のシミターをぶんぶん振り回しやがった!
おい、それ実態あんのかよっ。
「ぐっ、まずっ!」
「マジック君!? 危ないっ」
「げふっ――」
シミターの攻撃を一発食らったところでセシリアが飛んできて、最近ご無沙汰だった行動に出た。
両手を突きだし、俺を――吹っ飛ばしやがった!
「ごるぁっ! ダメージ無いからって、簡単に人を突き飛ばしてんじゃねぇっ」
「でもマジック君……貧弱だから」
ひっ、貧弱!?
くっそう。そうさ。防御に関しては貧弱さっ。
全身レジェンドの超合金と一緒にするなっ。
しかし、突き飛ばされなかったら、それはそれで瀕死に近い状態だったからな。
感謝のしるしに。
「『ヒール』」
「ん、ありがとう」
「っかしまぁ、まさか背後霊まで単独で攻撃してくるとは」
「360度対応っすな」
そんな対応せんでいいのに。
「ほらあなたたち。そろそろ50%になるわよ」
「うっ。え、えっと――」
「んもうっ。『お頭が〜』だと近接即死。だから十メートル以上離れるの」
「お、おぅ。で?」
「『だから俺は〜』は遠距離即死。近づくの。いいわね? 一応アタシが近づけ、離れろって指示は出してあげるわん」
「お願いします」
その方が有難い。
というか、このオカマさん、慣れてるなぁ。
などと感心していると――。
〔お頭が……ジャック船長がお人好しだから悪いんだぁ。なんでお宝を貧乏人にくれてやるんだよぉ〕
っと、突然中ボスが叫んだ。
「離れてぇ〜ん」
そして野太い声も聞こえた。
お読みいただきありがとうございます。
ここからは営業タイムです。
年末年始、お暇な時間に書籍版の「殴りマジ?」などいかがでしょうか?
またweb版の評価など増えると喜んだりしちゃったりしますよ?




