230:マジ、護衛クエ【2】をクリアして笑う。
最後にもう一度、俺は活躍したかった。
シャークアタック……したかった。
〔アングォアァァァァッ〕
その願いは虚しく、今、目の前で崩れ去った。
結局俺は何をした?
えぇっと……。
歌った。
『カッチカチ』した。
歌った……。
うん、そうだな。後半はほぼこの二つだったな。
途中まではウォーターを挟む余裕もあったんだが、アルマージロのHPが30%を切ると……。
十秒間隔ぐらいで反射状態になるもんだから、セシリアに『カッチカチ』したらすぐ歌わなきゃならないぐらいだったもんなぁ。
「はぁ……俺も普通に戦いたかった」
「しかし彗星殿のデバフソングが無ければ、かなり時間が掛かったでござるよ」
「そうだぞマジック君。君が一番大活躍したのだ。だから元気を出せっ」
「ですよねぇ〜。あ、でも佳奈ちゃんって、怠惰効果のデバフ持ってたよねぇ〜?」
え……。
慌てて彼女の方に視線を送ると、頷いてるじゃん!?
待て、じゃあ俺の歌はいったいなんだったんだ。
「歌、イイ」
「いや、イイ。じゃなくって……」
「うんうん。マジックさんの歌、噂通りのイケメンボイスでうっとりです」
「メェさんありがとうって、そうじゃなくって」
うぅ、俺も魔法ぶっぱなしたかったよぉ。
肩を落としてガックリしている俺の前にディオが現れる。
「アルマージロは強敵だ。だがマジック、お前のおかげで被害を出すことなく倒せた。ありがとう」
「ディオ……」
ある意味お前が一番、俺使い荒かったよな!
なのにこいつときたら、悪びれたような顔一つせず、寧ろ爽やかに微笑んでいるんですけど。
くそう。いいよもう。
「で、こいつはクエストボスかなんかだとしたら、当然レアやレジェンドドロップはあるよな?」
インベントリを確認して、アイテム一覧の最後尾に目をやる。
新しく拾った物はインベントリの最後尾に配置されるからな。
で、拾った物は――
「レジェンドだが、素材ばっかだな」
「私もだ」
「拙者もそうでござる」
「あれぇ? ココネも素材ですぅ」
「私、も」
「ですです」
六人全員が素材オンリー?
そんな事ってあるのか?
「いやぁ、みなさんお強いですねぇ」
そう言いながらやってきたのは……誰だっけ、こいつ?
と言いたくなるほど、戦闘中は薄いどころかまったく存在すらなかったNPCのマフトさんだ。
どこに隠れていやがったんだ。
ここでシステム音が鳴り、【クエスト【商人組合員マフトの護衛2】を完了しました】とメッセージが流れる。
いつの間にか『2』を受けていたのか。
で、じっと待っていたが『3』が現れる気配はない。
「それでは改めて、私は村長さんと商談を致しますので」
「あ、ああ」
「帰りは自前の『テレポート』がございます。皆さまとはここでお別れということで。これを組合長にお渡しくだされば、報酬をお支払いしますよ」
そう言ってマフトさんが手紙を寄越してきた。
もうこの手の「どこから」「いつのまに」シリーズにツッコムのは止めよう。
じゃあ俺たちは――。
「報酬を受け取りに戻るか?」
振り向くと……誰もいなかった。
いや、何故か女子五人が村人に囲まれていた。
「なんとお強い方々だ!」
「こんなかわいらしいお嬢さん方が、あのアルマージロをやっつけてくれるだなんて」
「英雄じゃ。新たな英雄様じゃ!」
……英雄って、そんなに簡単に現れるもんですかね?
「ふえぇぇ、マ、マジックくぅん」
「よかったなセシリア。お前、勇者目指してただろ。勇者じゃなく英雄だけど、願いが叶ったじゃないか」
俺がそう言うと、それを聞いた村人が一斉に振り向き止まる。
こっち見んなと言いたくなる衝動に駆られるが、直ぐに彼らはセシリアの方に向き直った。
その一糸乱れぬ動きは、正直見ていて怖い。
「ではセシリア様の事は『勇者セシリア様』とお呼びいたそうぞ」
「そうしよう」
「勇者セシリア様!」
「勇者セシリアお姉ちゃん、ありがとうっ」
いかん。この光景は……。
「マ、マジック君、笑うなっ」
「いや、笑ってないから」
「嘘つき!」
「嘘じゃないって」
今必死に耐えてます。
「彗星殿。嘘はいかんでござるよ。それに――」
「マジックさん、笑うとキラキラ光るの、忘れてませんか?」
……はっ!?
そ、そんな罠があったとは!?
「で、でもお前、勇者に憧れてたじゃん」
「そ、そうだけど。でもいざ勇者様なんて呼ばれると……」
再び村人が勇者様大合唱。
するとセシリアは顔を真っ赤にしてふえふえと慌てふためく。
うん、見てると面白いな。
「だからまたっ、笑うなぁぁ」
っぷ。笑ってねぇよ。




