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228/268

228:マジ、鮫の調教師になる。

 慌ただしく動き回る村人もいれば、恐怖でおびえる村人もいた。後者は主に女NPCだったけど。

 そしてこの地響きの正体もすぐに分かる。


 村の外に土煙が上がり、その煙の中から巨大なアルマジロが現れた。

 ただ、全身がトゲトゲしていて、触ると痛そうだ。


 バタバタと走り回る村人の中にディオを見つけ声を掛ける。


「おい、ディオ。あれは――」

「『轟爆のアルマージロ』。ここからもっと東に生息している奴なんだが……どうしてこんな所まで」


 そう言ってディオは武器を手に持ってアルマジロが見える東側に向かう。


「えぇっと、ここは俺たちも行くべきかな?」


 とみんなを振り返ると――居なかった。

 え、どこ?

 みんなどこぉ!?


「みなさん、あちらに行かれましたよ」


 おう言ってマフトさんが指さすのは、ディオが向かった方角だ。

 おぉう。俺だけ置いてけぼりくらったぜ。

 慌てて追いかけると、セシリアたちは村を囲む柵の向こう側に立っていた。

 ディオも一緒だ。


「おいていかないでぇ〜」


 柵をヒョイと飛び越えると、途端にシステムメッセージが流れる。


【クエスト【商人組合員マフトの護衛2】を受諾しました】


 いやいやいや、勝手に受諾しないでくれ。

 あと護衛2って、もう終わってるだろ。


「こ、これが『轟爆のアルマージロ』ですか!?」

「ってなんでマフトさんまでついて来てんだよ!?」


 まさか巨大アルマジロから護れってんじゃないだろうな。

 マジ勘弁してくれよ。


「これもクエストに含まれたイベントなのでござろう」

「村まで呆気なく到着したと思ったですが、こういう罠があったですね」

「罠、歓迎。レジェンド、寄越せ」


 そう言ってネクロマンサーの佳奈さんが杖を一振り。

 すると彼女の足元がもこもこと盛り上がり、地面からノーム――ではなく、スケルトンが出てきた。


 なんだろう。

 スケルトンを見ると、むしょうにその骨が欲しくなる。

 あぁ、そうか。

 土壌改良だ。

 あとであの骨貰えないか、聞いてみよう。


 呼び出されたスケルトンは三体。

 それが一斉にアルマジロに向かって突進していく。


 が、アルマジロの右手ワンパンで粉々になった。


 弱い。

 弱すぎるぞスケルトン!


「鑑定――アルマージ、火属性、ね。私のスケルトン、レベルが低いから、太刀打ち出来ない」

「そういや召喚アンデットにもレベルがあったんだったな。ちなみにさっきのスケルトンってレベルは?」

「5、よ」


 5か。確かに低いかも。

 しかも相手は火属性モンスター。スケルトンでは相性が悪いな。


「私、デバフ支援に、専念するから」

「佳奈ちゃんはデバッファーなんですぅ」

「私が、じゃなく、ネクロマンサーは、デバフスキル、作りやすいの」


 へぇ。ネクロマンサーはそういうポジションだったのか。

 今回は歌わずに済みそうだな。


 火属性って事で、呼び出すのは――


「ウンディーネさん! よろしくお願いしやっす」

〔ぷくぷくぅ〜〕


 召喚早々、ウンディーネには水付与をお願いする。

 セシリア、霧隠さん、そして弓使いのメェさんの三人の武器に水が付与された。


「これってNPCにも効果あるんだろうか? 一応範囲内だけど……」

「NPCさんにヒール出来ますしぃ、バフもオッケーなんじゃないですか?」


 そう言ってココネさんが近くのNPCにヒールを出す。受けたNPCは律儀にお礼を言っていたが、ただの実験台にされた事は知る由もない。

 確かにNPCにもヒールは出来る。

 じゃあ……


「ディオ、お前の武器に属性付与出来てるか?」


 ディオは相変わらず鉤爪状の、暗殺者っぽい装備だな。

 そのディオが硬直したあと、武器を見つめて頷いた。

 そして気のせいだろうか。頷く前と後とでダメージが倍増しているように見えるのは。


「マジック君! ウンディーネだけに戦わせてないで、君もしっかり手伝ってよっ」

「お、わりぃ」


 セシリアてんてーに怒られてしまった。

 お、俺だって遊んでた訳じゃない。

 こうして状況観察をしてだなぁ、ダメージヘイトを取らないようにだなぁ……。


 あ、みんながこっち睨んでる。

 NPCまで見てるよおい。


「しっかり働かせて頂きます。それじゃあ行ってみようか! 俺の新技スキル『シャークアタック・レインボースプラッシュ!』」


 シャーク。すなわち鮫。

 俺の頭上に七色の魔法陣が現れ、そこから水でできた鮫が踊り出る。

 そして、敵目掛けて宙を泳ぎ……あれ……アルマジロまで距離があるな。

 えぇっと、これって遠距離魔法だっけ?


 と、頭上の鮫を見上げると、鮫もこちらを見て首を傾げていた。


 え、遠距離……鮫を奴の所まで投げなきゃならないのか?

 いや、投げるつうか、とにかく当てる?


「当たる気がしねぇっ!」


 頭を抱えて叫んだ瞬間、鮫がただの水に戻って俺びしょ濡れ。


「マジック君、暑いのか?」

「あぁ……うん。八月だしな」


 新スキル……やっぱりゼロ距離からじゃなきゃ俺はダメらしい。


「うおおおぉぉぉっ! 水芸『ウォーター!』」

〔ぷっくぷくぅ〕

〔ぷぷぅ!〕


 ダダダダダっと駆け出して行ってアルマジロの目前で芸を披露する。


〔アンガァァッ〕

「くぉうっ、食らえ! 食らいやがれ!」


 ぷぅのサンバ効果でCT半減!

 杖効果で更に半減!


 そして再び放つ。


「今度こそっ『シャークアタック・レインボースプラッシュ!』」


 頭上に現れた魔法陣から鮫が踊り出し、大きな口を開いて直下に飛び込んだ。

 おい、俺ごと食う気かあぁぁぁっ!


「ぎゃああぁぁぁぁぁっす!」

〔アンギャアアァァァァッス〕


 俺――いや、アルマージロに鮫が食らいつくと、頭上に残った魔法陣から次々に鮫が飛び出してきて、ガブガブと敵に食らいついていく。

 その数、最初の一頭を入れて全部で七頭。

 だからレインボーってネーミングにしたんだが――


「まさかお前ら全員、生みの親の俺を食うとはなぁぁっ!」


 これ、ちょっとトラウマになりそう……。


 ガブガブと食らいついた鮫は、直後、四散して水弾となって弾け飛ぶ。

 これもスキル効果。

 周囲に敵がわらわらしてれば効果的なんだが、そうじゃないとアレだな……


「マジック君、ビックリするじゃないか!」

「彗星殿、新手の水付与でござるか」


 そこにはずぶ濡れになったセシリアと霧隠さん、そして前衛タイプの村人の姿があった。


お読みいただきありがとうございます。

今月末、31日水曜日に「殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。」が遂に発売されます。

タイトルの変更は無し。

イラストを担当してくださったのはシソ様です。

ネット予約も各所で開始されております。

書店でお見かけの際にはぜひ、表紙だけでもご堪能ください。

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