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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション0.00【オープンベータテスト】
22/268

22:マジ、受付ロビーで。

『お帰りなさいませ、彗星マジック様』

「あぁ、ただいま」


 ……ん?

 今、俺……おかしな事言わなかったか?


『ふふ』


 がばっとカウンター向こうに居る女NPCに視線を向けると、そこには相変らず無表情を称えた彼女が。


「今、笑ったか?」

『……気のせいでございましょう』

「そうか……」

『たとえばこのようにですか? 『ふふ』』


 そうだよ、その通りだよ!

 こいつ、わざとやってるな。


『この時間のログインですと、夕食を済まされたのですね』

「あ、ああ。食ってきた。ついでに風呂も行ってきた」

『まぁ大変でございますっ』

「え? な、何がだよ!?」


 こいつ、表情は全然変わらないのに、口調だけ変えやがる。逆に緊張するから口調も変化なしか、表情を変化させるかどちらかして欲しいものだ。

 で、何が大変なんだと。


『お手洗いに行かれておりませんね! ゲーム中にもよおしても、危険エリアに居ては次にログインした際にモンスターに囲まれていて即死――などという事も無いとは言い切れませんので。ワタクシのお勧めといたしましては――』

「あー、あー、お前が言いたい事は解った。行ってくればいいんだろっ」

『行ってらっしゃいませ。ごゆるりと――ふふ』


 なんなんだ、この敗北感は……。






 だがしかし、確かに便所は済ませておかなきゃ、お漏らしするかもしれないからな。

 座椅子は止め、ギアを装着してからベッドに寝る。


 よし、電源ONっと。


 意識がすぅっと吸い込まれる衝動に襲われ、そして視界が暗転。

 次の瞬間には、さっき居た酒場のバーに立っていた。


『お帰りなさいませ、彗星マジック様。スッキリなさいましたか?』

「……女がそういう事、いちいち聞いたりするんじゃない」

『畏まりました。照れ屋さんなのですね』


 そういう問題じゃない!

 いや、確かに恥ずかしいけど、けどぉーっ。


 はぁはぁ。こいつの言動に惑わされるな。こいつは確信犯なのだから。


「あー、そうだ。ゲーム内でこういうアイテム貰ったんだが――あ、ちゃんと取り出せるんだな」


 インベントリからピッピ――じゃなく、ピチョンの羽をゲーム内同様にフリックすると、可視化されたモニター前に光の粒子となって現れた。

 受付ロビーは時間の流れこそリアルと同じだが、他の面ではゲーム内と同じなんだな。


『飾り羽根でございますね。おめでとうございます』

「あ、あぁ。ありがとう。で、これなんだが――」


 アクサセリーって事なんだが、どうやって装備すればいいのか解らない。

 それを尋ねてみた。

 ゲーム仕様に関して、教えてくれるかどうかは微妙だな。


『その頭に装備したピチョンの巣にさせばいかがですか?』

「……巣!?」


 忘れていた!

 ばっと頭の上に手を置くと、そこにはしっかり巣があるじゃないかっ。

 こんなの恥ずかしいだろっ。超絶イケメン顔とかより、もっと恥ずかしいっ。

 インベントリの中に入れておこう。


 掴んで巣を持ち上げると――、持ち上げ――持ち――


「外れないーっ!?」

『はい。外れません』

「なぁー、にぃー!?」

『ご冥福をお祈りいたします』


 まてまてまて。なんて不吉な事を言っているんだっ。


『彗星マジック様……称号をご覧になっておいでですか?』

「称号?」

『ピチョンからそれを託されたとき、称号が付与されております。ご確認ください』


 お、おう。確認してやろう。

 えーっと、レベルはまだ上がってない――と。ネームドの蛇倒したのに上がってないってのは、奴の経験値は少なかったってことかな。

 あ、いや。ピチョンが奴のHP九割削ったしな。経験値はほとんどピチョンが持っていったんだろう。


 で、称号称号っと――



◆◇◆◇


名前:彗星マジック / 種族:ダークエルフ

レベル:8 / 

Ht:177 / Wt:66


HP:675(675) / MP:2080(2080)

STR:1

VIT:1+1

DEX:1

AGI:1+3

INT:66+7

LUK:1


SP:0


【セット技能】

『雷属性魔法:LV6』|(1up) / 『神聖魔法:LV4』|(2up)

『格闘術:LV4』|(1up) / 『敏捷向上:LV3』|(1up)

『魔力向上:LV6』|(1up) / 『鷲掴み:LV5』|(1up)

『採取技能:LV1』|(new)


【獲得スキル】

『サンダー:LV2』 / 『ヒール:LV1』 / 『ライト:LV1』


IMP:29


【称号】

『少女の勇者』  / 『綺麗好き』 / 『ピチョンとの約束』|(new)


【装備】

『初心者用ローブ』|(HP+100) / 『初心者用ズボン』|(HP+100)

『海獣のブーツ(レア)』|(HP+150)

『海獣の杖(レア)』|(MP+100)

『ピチョンの飾り羽根付きピチョンの巣|(卵IN)(レア)』



◆◇◆◇



 ……『ピチョンとの約束』?

 文字に指を合わせると、出てきた解説にはこうあった。



◆◇◆◇


『ピチョンとの約束』

 ピチョンの雛を育てるという約束を取り交わしました。

 約束を守っている間、ピチョンと同系統の鳥類モンスターと友好的になれる。

 懐いてくる鳥はさぞ愛らしいことでしょう。


 約束を違えると、プレイヤーが滞在するエリア内にいる全ての鳥類モンスターがアクティブ化し、尚且つ索敵範囲が全エリアに及ぶ。


◆◇◆◇



 ……。

 …………。

 どう見ても罠称号です。本当にありがとうございました。


『称号効果というよりも、約束を守っているぞという意思表示の為に常に巣を頭上に乗せているとお考えください』

「外れたらつまり、鳥類モンスターが一斉に俺を襲いに来る、と?」

『ご名答でございますっ。おめでとうございますっ。残念ながら景品はございません』


 いらないからっ。


『どうしても外したいのであれば、巣の中にある卵に触れますと、割りますかという選択肢が出てきますので、ここで『はい』を選んで頂ければ、卵を地面にたたきつけて木っ端微塵のぐっちゃぐちゃにできます。その際中の雛は当然死にます。今ですと、若干グロテスクな形で見れますよ?』

「そんな説明いらないからっ」


 一瞬想像したじゃないかっ。

 今の時点でモンスターの大群に囲まれたりしたら、余裕で死ぬだろ。

 まだ範囲魔法だって無いんだし、ダメだダメ。

 仕方が無い、ちゃんと育ててやるか。


 育てるといえば、この巣……やっぱり装備欄に出てるな。しかも羽根を刺したもんだから、名前が変更されてるし。



◆◇◆◇


 名称:『ピチョンの飾り羽根付きピチョンの巣|(卵IN)(レア)』

 効果:INT+2。風属性攻撃の耐性+25%。

 必須技能:特になし。

 耐久度:∞

 備考:ピチョンの雛の寝床。

     取引不可。

    彗星マジック専用装備。


◆◇◆◇



「これ、いつ孵化するんだ?」

『暖めて差し上げませんとねぇ。孵化までの時間はどんどん長くなりますから』


 あぁ、やっぱ暖めないとダメなのか。


「なんか無いか? 卵を温めるようなのって」

『ゲーム内にございますが……詳細はお教えできません。なにせ正式サービスの際にアップデートで実装されます、モンスターエッグに関する事ですので』

「モンスターエッグ?」

『……ワタクシは何も申し上げておりません。何を仰っているのですか、彗星マジック様』

「あぁ、解った。じゃあゲーム内で探してみるよ」


 ぽろっと口が滑ったようだな。

 本当にこいつには中の人がいないのかよ。


『はい。ではログインでございますね。行ってらっしゃいませ』

「行ってくる――はっ!」


 また!

 ついうっかり返事してしまった!


『ふふふ』


 しかもまた笑われてるし。

 もう嫌だこいつっ。

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