219:マジ、凹む。
露店をあれこれ物色してみたが、魔法使い系向けの手袋は品薄だな。
逆に多いのは前衛向けのガントレットとかグローブだ。
買った杖は魔法ダメージアップ効果だし、同じように総合的なダメージ上昇効果があればオールマイティーに使えるんだが。
分解してもらったレア杖は風属性効果があるし、一つぐらいはそっち特化でもいいかなと思っている。
が、探しても風特化の手袋はおろか、他の部位すらない。
まぁ風は使い勝手悪そうではあるからなぁ。
うぅん。こうなったら知り合いを当たってみるか。
えぇっと……夢乃さんは最終手段ってことで。
まずはザグに……
【彗星マジック:Hi】
お洒落に英語で挨拶をしてみた。
【ザグ:ハイ】
カタカナで返事が来た……。
え、ええっと。
風属性特化の手袋探してるんだけど――ってことで送信っと。
【ザグ:風属性付与とか?】
【彗星マジック:いや、属性のダメージ上昇系】
【ザグ:風属性のダメージ上昇は無いが、飛行系モンスターに追加ダメージのゴミ屑レジェンドならあるぞなもしorz】
何がどう失敗作なのか。
そう思ったら、土属性モンスターに追加ダメージの能力石を使おうとして、その隣にあった飛行系を使ってしまったんだとか。
飛行系限定だと需要はほとんどない、と。
でも遺跡ダンジョン四階では大活躍じゃね?
【ザグ:そうらしいがの。しかしそこ以外で使えないんじゃ、ゴミであることにかわりないぞなもし】
そんなものか。
でも俺はいま猛烈に特化装備が欲しいんだ。
ブルジョア気分を満喫したいんだ。
【彗星マジック:買う。ついでに魔法ダメージアップ系の手袋持ってないか?】
【ザグ:在庫はあるぞなもし。しかしマジックどんに魔法攻撃系は意味があるのかなもし】
何を言っているんだザグの奴。意味あるに決まってるだろ。
ザグと待ち合わせしてゴミだという手袋を十万で、INT補正が二つ付いたレア手袋を二十五万で購入。
「同タイプの補正を付けられたのか」
「うむ。能力石でINT補正を確実に一つ受けられるのだが、残り一つは魔法系でランダムにしたらこうなったぞなもし」
ちなみに同種の能力石を複数使っての製造は出来ないらしく、完全に運任せな結果だとか。
その分値段も割高になっている。
手袋はあと一つか。
「布手袋が欲しいんじゃったら、この前鉱山に行ったギグレッドも裁縫持ちじゃぞもし」
「お、そうだった。ログインは――してるな。ファクトに居るようだし、聞いてみるか」
ザグと別れ今度はギグレッドにメッセージを送る。
返事はすぐにきて、手持ちはINT補正とAGI補正、それに直接的な物理ダメージ追加補正という、なんとも不思議なレジェンドグローブがあるという。
【ギグレッド:素殴りには効果のあるグローブなんですよ。そういえばマジックさん、殴りでしたよね?】
【彗星マジック:いや、ぜんぜん】
【ギグレッド:でもスライムをがしがし掴んでませんでしたか?】
がしがし?
あぁ、スライムの中に埋まった、あの時か。
【彗星マジック:鷲掴みな。それにも追加補正入るんだろうか】
【ギグレッド:直接的な物理ダメージですからね。入るはずでしょう。もう売れなくて捨ててしまおうかと思ってたところだったんです。五万でもいいんで、買って頂けませんか?】
おぉ、安い!
INT補正はあるし、AGIもあって損はない。
屋台を出しているというので教えて貰った場所に行くと、露店のカウンターから顔だけ出しているドワーフを見つけた。
どう見てもさらし首状態だよな。
「おっす。おひさ」
「やぁ、どうも」
露店にはポーション類や、他の裁縫防具が売り物として並べられていた。
ほほぉ。状態異常を回復するポーションなんかもあるのか。
HPとMPの回復は自力で出来るが、状態異常の回復までは出来ないんだよな。
スキルを作ればいいんだろうが、支援特化になる気はないし。
ついでに状態異常回復のリカバリーポーションを三十本を合わせて購入。
っふ。残金、まだ百八十万ENもあるな。
もっとこう、ドッカーン! な金の使い方がないものか。
高価な物。高価な物……思いつかない。
結果、シースターから杖が出来たという連絡を受けて、そのまま彼の下へ向かうことに。
「出来たよ。でもいつも思うんだけどさ、マジックはどうして杖なの?」
「は? 魔法を使うために決まっているだろ」
なんでまたそんな話を。
俺をなんだと思っているんだ?
完成した杖は、水属性ダメージを15%追加。INT+6補正。
そして、火属性モンスターに対し、10%の追加ダメージ。
「え、レジェンド!?」
「うん。材料があったから作ってみたんだ。そしたら成功しちゃってね」
す、すげぇ。
これ完全に火山特化だな。
なんて贅沢な武器なんだ。これとどの手袋を合成するか。
まずは特化装備になる予定の風杖と飛行系手袋を合成――うほ、成功!
手袋は飛行系特化以外にも、INT補正とDEX補正とがある。ありがたやぁ。
じゃあ次。
魔法ダメージアップのレア杖とINTダブル補正行ってみよう!
よし。見なかったことにしよう。
つ、次だ。
「マジック、今、合成失敗したよね?」
「気のせいだ」
「どれを失敗したのさ。まさか今作ったばかりのレジェンドじゃないだろうね!?」
「心配するな。その前に買った魔法ダメウプのやつだ」
「ならいいや」
俺としては失敗して欲しくは無かったんだけどな。
まぁ同じ効果の杖がもう一本あるし、いいんだけど。
いいんだけど、INTダブル補正!!
くそうっ。
次だ次!
「で、合成に成功したのは、最初の風飛行系特化と、火山特化のレジェンド装備か……」
「直接攻撃に追加ダメージか。殴りの補正も考慮しての効果なんだね」
「いや、殴りじゃなくって『鷲掴み』な」
「そっちのダメージ効果もあるんだ。へぇ」
四戦二勝二敗、か。
凹む。
レジェンド杖の代金、四十万を支払って少しだけ財布が軽くなった。
いや、財布とかないけどさ。
無駄使いするなら、課金アイテムを露店廃売してるところから何か買うかな。
アバターとかいいんじゃないか?
上半身裸だし。
でもせっかくのボディペイントが見えなくなるのはなぁ。
「ところでマジック。鉱山山脈の東には行かないのかい?」
「え? 東?」
「うん。ウィキ情報だけどね、鉱山を少し下った森から、東に行けるルートがあるんだって。それを見つけたプレイヤーが、NPCを現地で見たらしいんだけど――」
そのNPCはプレイヤーの姿を見て慌てて逃げたらしい。
ってことは、先住民NPCじゃないかと、ウィキでも話題になっているんだとか。
「ディオってNPCに会えるんじゃないかな」
「そういや……」
俺の村に来てくれって、ディオにも言われてたな。そして「今ハソノ時デハナイ」と、バグってたような。
じゃあ、もしかして今はその時になったってこと?
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