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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
195/268

195:マジ、ドキムネ。

「『インパクト・ドライバー!!』」


 そう叫んで拳を突き出す。

 本当なら武器を構えてポーズを取った方がそれらしいんだが、合成で武器のビジュアルが消えてしまっているので仕方が無い。


 月曜日の朝。ログイン早々にセシリアをフレ画面で発見したので合流し、スキル相談の続きを開始した。


「どうだ?」


 そう尋ねるとセシリアは、突き出した俺の拳をじっと見て固まった。

 うっ……やっぱ電動工具ネタはダメか?

 いや、電動工具は侮れないんだぞ。かっこいい名前の工具、結構あるんだからなっ。

 たとえば『インパクトドリル』とか『スクリュードライバー』とか『プラネットカッター』とかとか。

 めっちゃカッコいいだろ!

 などと女の子に言っても仕方ないよな。


「や、やっぱダメか?」


 拳、引っ込めてもいいですかね?

 なんかもう、じぃっと見つめられてるから、引っ込めようにも引っ込められない状況だ。

 いつまで見続けてる気だ?

 ん? なんかぷるぷる震え始めたぞ。便所にでも行きたいのか?


「セシリア、我慢しなくていいんだぞ?」

「……いぃ」

「いい?」


 拳をじっと見つめていたセシリアがようやく面を上げ、こくこくつ頷く。顔は高揚しているし、ぷるぷるだし、何かを求めるような潤んだ眼だし……お、俺はやましい事なんて何もしていないぞ!

 突き出した拳を引っ込めようとすると、その手をセシリアがガシっと掴む。潤んだ眼を向けて。


 ド、ドド、ドキドキなんかしてねえからなっ。


「いぃ……」

「い、いいの、か?」

「うん。凄く、いぃ!」


 何がいいんですかあばばばばばば。


「マジック君、凄くかっこいいぞ!」

「い、いや、そう面と向って言われると、照れるぜ。はは、ははは」

「『インパクト・ドライバー!』かっこいい!!」

「は、はは。あ、そっちね。うん、そうだよな。うんうん」


 気に入って貰えたようで何よりだ。うん。

 別に泣いてないから。


 スキル名は決まった。じゃあその効果だ。

 インパクトっていうぐらいだ、インパクトのあるスキル効果がいいだろう。


「インパクトというのは衝撃という意味ね。うん……突き攻撃っぽい印象だな」


 既にセシリアは一人でぶつぶつと考え始めている。

 どうせなら範囲スキルにすればいいんじゃないか? と横からアドバイスをしておく。

 突きなら扇状の範囲とかどうだろう。直接剣と接している敵には大ダメージを。扇状の範囲に居るモンスターには衝撃による小ダメージと、ノックバックなんかあると使えそうだ。


「なるほど! さすがはマジック君だな」

「いやぁ、それほどでもぉ〜」

「ほ、他にはどんなスキル案が?」

「えぇっとだな……」


 パッシブスキルの説明をし、常時その効果が発動できるものを一つ作ったらどうだと話す。

 AGIか、回避を上げるものがいいだろう。


「そんなスキルも作れるのか!? じゃあ、レベル1上がるたびにAGIが10上がっていくのとか作ったら、凄くいいな!」

「いや、そんな極端な効果のスキル作ろうとしたら……まぁ試しに作ってくれ」


 作れば分かるだろう。IMPが大量に必要になるってことが。

 暫くして案の定セシリアの顔が曇り、助けを求めるような眼で見つめてくる。


「必要IMP、いくらだったんだ?」

「……999」

「ぶふぉっ。作らせる気がないのか!?」

「ふえぇん。欲張ってAGI+50にしてみたんだけど、ダメだったぁ」


 ……当たり前だ! どこの世界にレベル1でAGI50も増えるパッシブスキルがあるんだよっ。そんなスキル、作られて堪るかっ。


「あのなセシリア。そんな高性能過ぎるスキルがあったら、ゲームバランスってもんが崩壊するだろ」

「ふえぇ、そうなのか?」

「そうなのっ。考えてもみろ、その設定でスキルレベル10になったら、AGI+500だぞ?」

「うん。凄く早く動けるな!」


 嬉しそうに答えるなっつうの。

 そんなにAGIあったら、光速過ぎて見えなくなるわ。

 しかもスキルレベルはまだまだ上がっていくんだぜ。そのうちAGI+1000じゃないか。もう完全回避のレベルすら超えてて、誰もこいつに攻撃を当てられなくなる。

 最強とかそういうレベルじゃない。

 一方的な強さが楽しいか?

 俺は楽しくないな。ギリギリの戦いか、ちょっとTUEEEぐらいが楽しいんだよ。

 と力説する。


「うむむむ。確かに。正義のヒーローはいつもピンチを迎えてから強くなるものね」


 それどこの戦隊ヒーローですかい。


「まぁそれにな。AGI+50が許されるゲームだと、バランス調整の為にモンスターもそれに合わせて強化されちまうんだ。そうなったら、馬鹿みたいな効果のスキルを作ってないプレイヤーが、生き残れない世界になっちまうだろ」

「むむむ……それも確かに」

「そうならないよう、運営が最初から馬鹿みたいなスキルを作らせまいと、消費IMPを糞みたいな設定にしてんだろう」

「なるほど……じゃあ、どうすればいい?」


 またまた潤んだ瞳で見つめてくるセシリア。

 こ、これはスキルの相談会なんだぞ。な、なんでそんな目で俺を見るんだよっ。

 ド、ドキムネとかしてねえからっ。


「と、とりあえずAGI+1で妥協したらいいんじゃないか? も、もしくは……そ、そう! さっきの『ピンチを迎えてから強くなる』なスキル効果とかどうだ!」

「ピンチを? うぅん……そうだなっ。囲まれたらAGIが自動で上昇するとか、そういうのでもいいな! 一対一なら今のステータスで十分だし」

「おう。そういう限定された条件でしか発動しないパッシブとかなら、消費IMPも抑えられるかもしれないぞ」

「うん!」


 嬉しそうに返事をした彼女は、再び俺には見えないシステム画面を操作してスキルの作成に取り掛かった。

 あーでもない、こーでもないとブツブツ言いながら、やがて完成したらしいスキルを自慢げに語り出す。


「五匹に囲まれたら、AGIと回避、攻撃速度が+1されるようにした! スキルレベルが上がれば+1ずつ増えるようにもなったぞ」

「ほほぉ。なかなか謙虚な効果にしたじゃないか」


 ――と思ったが、そもそも回避と攻撃速度はAGI依存ステータスだ。AGIが増えればこの二つのステータスも上がるのに、スキル効果でAGI無視して上がるってなると、二重の意味で上昇する事になるな。

 謙虚なんてもんじゃない。欲張りだ! いや、強欲だ!

 これ、もしかしたら囲まれてピンチになるほど強くなるパターン?


「ふふふ。楽しみだぁ」


 こいつを取り囲むモンスターに同情するぜ。






 他にもセシリアは『刹那のインパクト・ドライバー』と言う、剣先で敵を突くスキルと、『プラネットブレイド』というプラネットカッターをもじったスキルを作った。

 プラネットのほうは星をも砕くという意味で作ったらしく、消費MPは多いものの破壊力のほうはかなりある小範囲攻撃スキルだ。

 工具名スキル……かっこいいよな。

 俺も次にスキルを作るときは工具で行こう。


「ありがとうマジック君! 君のおかげで強くてかっこいいスキルが出来たよ」

「おう。いいってことよ」

「じゃあ私は早速、囲まれる為に旅に出る!」

「お、おぉう」


 モンスターに冥福を祈ろう。


 ソロに戻ったな。さぁ、何をするか。

 俺も狩場を探すかなぁ。

 水と風の属性魔法を上げたいが、風が有効なのはやっぱ水属性モンスター……だろうか?

 そういや風と雷の違いがいまいちだな。

 属性魔法の説明を見ても、どの属性に強く、どの属性に弱いなんてのは記載されていない。

 普通に考えると、風は土に弱くってイメージだ。じゃあ何に強いかっていうと……空跳ぶ系のモンスターに強い印象だな。でもそういうモンスターって、風属性の場合が高いんだよ。


「うぅん……属性表でもあればいいんだけどなぁ。魔法を教えてくれた大賢者に直接聞いてみるか。トリトンさんもいる事だし」


 ベヒモスを素手で倒した俺に対し、もしかして大賢者が――


 儂ももう引退じゃ。ベヒモスはお前に託そう。なんと言ってもベヒモスを素手で倒した男じゃからな!

 頼りにしておるぞ!

 ついでに重力魔法でもなんでも伝授しよう!!


 なーんつってなんつって。

あ……

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