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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
182/268

182:マジ、たらし。

 ゴミと化したレアコートをインベントリにしまい込み、追加で貰ったレアコートを眺めて溜息を吐き捨てる。

 また失敗したらどうしよう……。

 もうこうなったらついでだ。合成レベルを40まで上げるか。

 開拓村で販売するペットフードの作り置き兼ねて、時間までがんがんやるかな。


 合成剤を買い込んで開拓村に飛び、村長からその他材料を買い込む。


「しかし、販売出来る様になるまで、まだ数日掛かりますが」

「あぁ、そうでしたね……でも技能レベルを上げたいんで」

「そうですか。でしたらこちらで買取るという形で」


 おぉ、それは助かる。

 俺の取り分が80ENなので、その価格で買い取ってくれるという。

 ペットフードや食材は、今回は無料で提供して貰えるので作れば作るほど……あれ、ボロ儲けじゃね?

 ちょっと俺、わくわくしてきたぞ。

 億万長者も夢じゃない!


 せっせせっせと合成しまくって、五千個用意すれば四十万ENに。

 も、もう五千個作っておくか……。

 合成レベルはとうの昔に40になったが、金がざくざく増えるのがちょっと楽しい。

 あっという間に所持金は九十万に達した。

 

「在庫一万か。作りすぎてもアレかな?」


 という問いに、村長はシンキングタイムを得て返答する。


「左様でございますね。在庫が千個を切りましたらご連絡いたしますので、その時にはまた合成をお願いします」

「オッケーオッケー」


 ふふふ。販売が始まれば完売も直ぐだ。

 くっくっく。合成御殿だって夢じゃないね!

 今の内に合成剤の件をブリュンヒルデに相談しておこう。

 さくっとテレポして彼女の家を訪ねる。


「おぉーい、ブリュンヒルデやぁ〜い」

「はぁ〜いですの」


 戸をノックすると直ぐに返事が返ってきた。


「あら、マジックさんですの」

「はい。マジックさんです」


 にこにこ顔のブリュンヒルデに、合成剤を売って欲しいという旨を話す。

 やや首を傾げ、町の同胞から俺が大量の合成剤を購入していったという報告を受けていると話し、その件と関係があるのかと逆に尋ねられた。


「いや、あれとは関係ないんだ。買わせて貰ってたのは、襲撃に備えてちょっとしたお祭が――」

「襲撃!? い、いつどこでですの!?」


 あ、そういやブリュンヒルデは知らないのか。

 昨日の会議ではダークエルフは参加してなかったしな。

 もしかして誘拐事件の事もあるし、仲間はずれにされてたとか?

 それは可哀相なんで、かくかくしかじかで簡単に説明をする。


「――という訳なんだ。まぁ合成はプレイ……冒険者の士気向上の為に開いたイベントで使ったんだ」


 話し終えたがブリュンヒルデは動かない。シンキングタイムに入ってしまったか。

 NPCがシンキングタイム中でも、こっちの会話は聞いているようなんだよな。それも踏まえて返答を検索している感じだ。

 あれこれ言うとその分、シンキングタイムも伸びてしまう。


「あ、それとは別に合成剤を売って欲しいってのは、開拓村で合成ペットフードの販売を委託する事になったんだ」


 出来るだけ多くの冒険者に行き渡るよう、常に在庫を確保しておきたい。

 が、合成剤の材料確保からやっていると、一日が合成で終わってしまう事になる。

 少しでも時間を有効活用する為に、合成剤が直接ブリュンヒルデから仕入れたい。価格は10ENで、と話した。

 案の定、シンキングタイムが延長される。

 待つこと二分弱。


「そんなっ。マジックさん、私たちダークエルフもお手伝いするですのっ」

「いやいや、いいんだ。ここの暮らしもようやく豊かになりかけてる時期じゃないか。ここでまた無理をさせれば、後々何かあるかもしれないだろ」


 また貧乏暮らしに逆戻り、とか。


「そんな……マジックさん。あなたはどうしてそこまで私たちを……」


 ふ。

 だってな。

 初めてみたここの連中なんて、もんぺだったんだぜ。

 あれはちょっとどころじゃなく、かなり同情じてしまうだろ。

 あと、超絶に似合わないんだよ。ダークエルフのもんぺ姿は。


「まぁこっちはこっちでなんとでもなるからさ」


 ペットフードでボロ儲けできそうだからな。懐は潤っている。いや、これからますます潤う!

 なんなら15ENで買ってもよかったな。


「ブリュンヒルデは俺の事なんか気にせず、安心してくれ」

「そんな……マジックさん、あまり無理はしないでくださいですの。何かあったらすぐに駆けつけるですからっ」


 駆けつける?

 え、出張販売もしてくれるってか?


「そりゃあ助か――いや、やっぱりいいよ。この程度の事で君の手を煩わせるわけにもいかない」

「マ、マジックさん」


 くぅ〜。今の俺、かっこいい!

 ただ出張販売を断っただけなんだけどな。

 実際ここに合成剤の制作を依頼しに来ると、日々発展していってるのが見れて面白くもあるんだよな。

 相変らずブリュンヒルデの家は隙間があるんだが、いつ修理するつもりなんだ?

 そういう事もあるから、俺から出向くほうが楽しみがあっていい。

 まぁテレポ一発で済むんだし、面倒なんて無いからなぁ。


「マジックさん……マジックさん……きっと、きっとまた来てくださいの!」

「お、おぅ。また来るよ」

「きっとですのよ!」


 何をそんな大袈裟に……。

 帰り際、何故か彼女は大粒の涙を浮かべて見送っていた。

 ……女って、よく分からないよ。


 




 さて襲撃時間までは……まだ大分あるな。

 ゲーム内では丁度昼飯どきになり、襲撃は今夜の予定だ。もう数時間余裕がある。

 新しい装備の具合を確認しておこうかな。


 鉱山にテレポして、エレベーターで一つ下の階へと移動する。

 フロアガイドには、入り口のある第五階層はソロだとレベル34推奨。パーティーだと30推奨となっていた。

 湧きがいいからな、ソロだとちょっと厳しいんだろう。

 一つ下の階層だと、推奨レベルがそれぞれ-3されているので、レベル32の俺には丁度いいだろう。

 デパートなんかで見るエレベータの外観を、そのまま土にしただけのソレに乗ると、当然のように停止階を押すボタンなんかもついている。

 4を押せば扉が閉まり、数秒後にはチーンという音と共に扉が開く。

 ファンタジーはどこに行った!?


「んじゃまぁ、サクっと行くかね」

〔ぷっぷぷぅ〜〕


 まずは【陽炎の手袋】の効果だ。

 DEX+5、火属性攻撃の際、ダメージ10%UP。

 火属性ヒャッハー!


 元の手袋にはレア杖が合成してあるので、実質的には攻撃力が落ちる。なので素手と32手袋で違いを検証。

 まず手袋無しでスケルトンを『ファイア』ソードで斬る。

 ダメージは1428。

 次。手袋をはめて同じくスケルトンに――1554。

 おぉ、増えてるふえてる。


【風魔のデラックスバタフライ皮紐靴】は風属性耐性と落下速度減少。それと被ダメージ時、一定確率で物理ダメージを防ぐバリアの発動とあった。

 なので無抵抗で殴られてみることに。だが何故かスケルトンにはダメージエフェクトが入っていた。どれかの装備効果だろうな。

 スケルトンに七回ほど殴られたところで突然靴が輝き、七色の光が俺を包む。

 その光は、スケルトンの攻撃二発でバラバラに砕けた。

 うぅ〜ん、二発かぁ。

 スケルトンの攻撃で250ぐらいのダメージを食らっているが、二発で砕けるってことは250は確実に防げるわけで。でも250以上500未満のどこで砕けるのか分からないな。

『カッチカチ』との併用は出来るんだろうか?


 絆創膏『ヒール』で回復し、暫くまた殴られ続ける。

 よし、バリア発生からのぉ、


「『カッチカチ』やぞ!」


 再び二発目でガラスが砕ける音が聞こえるが、『カッチカチ』のバリアは残ったまま。

 よし、併用可能っと。

『カッチカチ』はレベル10になっているので、吸収できるダメージ量は750だ。

 バタフライ靴はスキルじゃないので、防げるダメージは固定だろうな。

 それでも併用できるとなると、1000は防げる事になる。

 紙装甲な魔法使いとしては、かなりありがたい効果だな。


【燃ゆる野獣のデラックスズボン】は火属性耐性と、動物型モンスターからの被ダメージ10%減少。そして、被ダメージの20%を反射とある。

 無抵抗なのにスケルトンがダメージを受けてたのはこれか。

 スケルトンが俺を殴ると、平均50ダメージをスケルトン自身が受けている。

 ちなみにこの反射ダメージは、バリアがあっても発生しているようだ。

 美味すぎる。これはなんて素晴らしい装備たちなんだ!


 レアコートのほうはVITと回避がプラスされるという、レジェンドコートと似た効果になっていた。

 バタフライマフラーは防御の他に、靴同様の落下速度減少とある。

 もしかしてこれで『シャイニングフォース・フィンガー』の威力が増すんじゃないか?

 それを試すべく、天井の高い部屋を探す。

 程なくして見つけたその部屋は、見事にモンスターハウス化していた。


〔ぷぷぷぅ〜。ぷっぷぷぅぷ〜〕


 やめなさいよ。また戦闘不能になっちゃうわよ。とぷぅが仰っている。


「ノームさんや」

〔のっ〕


 召喚したノームは既に理解しているらしく、ダダダっと駆けて行ってちゃぶ台を立てた。


「うおおおぉぉぉぉっ!」


 全力で走り、ちゃぶ台を蹴ってジャンプする。


「『シャアァァァイニングゥゥゥフォォオォス・フィンガアァァァッ』」


 天井近くまで飛び上がった俺は、心なしか体が軽く感じた。

 そして――


〔ぷぅ!〕――何その羽!

〔のの、のぉぉむ!〕――す、凄いでやんす!


 ぷぅとノームが驚くが、何の事だかさっぱり分からない。

 いや……モンスターハウスを見下ろす俺の目に、靴のかかとでパタパタ羽ばたく蝶の羽が見えた。

 申し訳程度だった羽だが、今は掌サイズぐらいだろうか。

 それが七色に光って羽ばたいているのだ。


 そ、そういえば……

 ふと背後を振り向くと、そこには巨大な七色の蝶の羽が見えた。


「なんぞこれぇぇぇっ!?」


 そう叫んだ瞬間、俺はモンスターハウスの真っ只中に着地した。


【戦闘不能状態になりました】

【最寄のセーブポイントに帰還しますか?】

【はい   いいえ】







 システムデータログ……


 ダークエルフの始祖ブリュンヒルデ。プレイヤー・彗星マジックと接触する。

 彗星マジックに対する好感度:小アップ。

 彗星マジックから、先住民によるモンスター襲撃計画を聞かされる。

 ブリュンヒルデ、彗星マジックの身を案じる。

 協力を提案する。

 彗星マジック、協力を拒む。

 ブリュンヒルデ、自身の身を案じる彗星マジックに胸きゅん。

 彗星マジックに対する好感度:激アップ。


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