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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
181/268

181:マジ、お着替えをする。

「ほぉ、デカスライムの皮には、物理防御系の効果があったのか」


 不審者と化していた夢乃さんの後からやって来たザグが、彼女の変わりに説明してくれた。

 できれば装備はザグに作って貰うほうがよかったなもし。


「うむ。効果の内容はまちまちであったが、共通して防御関連だったぞなもし」

「打たれ弱い彗星君やったら、最高の効果でしょ?」

「まぁ確かに、AGIも低いから回避率も低いしなぁ」


 しかしあのゼラチンみたいな皮を、どうやって使うんだろうか……。溶かして、塗る?

 想像したらねちょねちょしていそうで、嫌だった。


「でも持ってるのって、三個だぜ。足りるのか?」

「全然オッケー。一つで一箇所作れるけん」

「ほほぉ。じゃあ、ズボンと上半身二着でお願いしていい?」

「上半身は合成で、ズボンも合成せんと?」


 そんな事したら、パンツ男で通報されますがな。

 確かにアバターという路線もある。だが無駄使いはしたくない。


「ねぇ、ズボンは?」

「俺を変質者にする気ですか、夢乃さんは」

「今でも十分変質者ぞなもし」

「ぐっ!?」


 それを言っちゃあお終いだろ。

 せっかくこの孔雀ズボンともお別れなんだ。次こそはまともな……まともな……デザインの装備を作ってくれるだろうか、このゆめのさんは。


「じゃあ、素材預かるね」

「ついでにこれも使ってください。ザグに教えてもらって集めた素材なんで」


 そうだ。本当はザグに作って貰う予定で素材集めしてたんだもんな。

 どうしてこうなった。

 ザグのほうに目をやると「彼女のほうが裁縫レベルは高いぞなもし」という。

 つまり成功率も高いし、良い性能が付きやすいんだとか。

 ぐぬぬ……デザイン度外視にすれば、確かに夢乃さんに作って貰うほうが良さそうだ。

 背に腹は変えられぬ。

 どうせ上半身は合成で消えるんだ。問題ないだろう。


 デカスライムの表皮といろんな種類の糸玉、それに溜め込んだ素材各種を渡す。

 必要ないものは適当に職人に配って貰ってもいい。

 装備に付与する能力もある程度希望を聞いてくれるというので、防御と回避に特化して欲しいと依頼する。


「じゃあ俺、昼飯ログアウトするんで」

「はいは〜い。いってら〜」

「儂も飯にするぞなもし」


 その場でログアウトし、ロビーでシンフォニアと別れリアルへと戻ってきた。

 さて、今日の昼飯は……お袋も仕事で居ない、特に作り置きもない、でも時間は掛けたくない。


「よし、そうめんにしよう」


 茹でて、めんつゆ用意して――寂しいので弁当のおかず用のウィンナーでも焼いて――完成!

 そうめんを啜りながら昼からの事を考える。

 レベルは32になってしまったし、どうしたものか。

 襲撃イベントまで時間も結構あるし、寧ろゲーム内の時間で換算すると六時間ぐらいだ。

 ぼぉっとするにも限界ってもんがあるよな。

 村で販売用のペットフードを作っておくか。今の内に大量生産しておけば、暫く作らなくて済むだろうし。

 昨日今日と合成剤を大量に買わせて貰ってるし、一度ブリュンヒルデに断りを入れておくか。

 いや寧ろ4EN販売を頼むか。

 いや待てよ。この値段だとあの悪徳合成屋と同じになってしまう。寧ろ1EN安い分、俺の方が性質が悪いかも。

 うぉぉぉぉ、これからは10ENで買わせていただきます!


 午後の予定は決まった。

 まぁ予定は未定。いつどう変更されるか分からないが。

 最後のそうめんを啜ってウィンナーを頬張ると、食器は流し台に置いたままトイレに駆け込む。

 全ての準備を整え、再びログイン!


『お帰りなさいませ、彗星マジック様』

「あぁ、ただいま」

『お食事はしっかりなさいましたか? お早くないですか?』

「……作り置きがあったんだよ。チャ、チャーハンとギョウザ、あとサラダもな」

『まぁ、お優しいお母様なのですね』


 嘘です。そんなもの一切ございません。

 そうめんとウィンナーなんて言ったら、また小言を言われそうだったから適当に誤魔化しただけだ。


「じゃ、行ってくる」

『はい、お気をつけて。あと、お手柔らかにお願いしますね』


 何をどう柔らかくするんだ?

 謎のままゲーム内へとログイン。工房では製造祭が続いていた。

 ここに居たらまたペットフード屋を開店させなきゃいけなくなるな。ひとまず逃げよう。

 テレポで開拓村へと飛ぶと、直ぐにシステム音が鳴ってメッセージが浮かんだ。


『夢乃:装備出来たば〜い』


 うほ。早いな。

 けど取りに行くと、もれなく製造祭に参加させられそうな予感。


『夢乃:レベリングするんやろ? 送ろうか?』

『彗星マジック:おぉ、助かります。工房の近くに居たら、ペットフード合成依頼されそうで』

『夢乃:されるやろうねぇ。そしてイベントまで合成地獄の始まりとw』


 分かってらっしゃる。

 再びピコンという音がすると、メッセージボックスに夢乃さんから手紙が届いていた。

 何故手紙の中にアイテムが入るのか。そんな事を考えたら負けである。


『彗星マジック:届きました。一発成功なんですか?』

『夢乃:ごめんね。一着失敗して、デラックスがゴミ屑になったんよ』


 あちゃあ。いや、でも一着は成功したってことか。どれぞれ。


【極々ありきたりな上質で軽い絹のデラックスコート】【極々ありきたりな上質な絹のコート】

 なんだ、この極々ありきたりなってのは。デラックス付きがレジェンドで、無しはレアだ。

 試しに着てみると、夢乃さんとは思えないほどありきたりなデザインのコートだった。

 そういう意味での【極々ありきたりな】なのか!?

 もう一つ、【燃ゆるバタフライマフラー】というのがある。マントの上からは装備出来ないようだが、マフラーのくせに防御力はマントより上だ。

 じゃあこっちを装備しよう。

 

 更に追加で手紙が届き、こちらには【陽炎の手袋】と【風魔のデラックスバタフライ皮紐靴】、それから【燃ゆる野獣のデラックスズボン】というのが入っていた。

 恐ろしい……手袋以外オレンジレジェンドじゃん。デカスライムの表皮って二つしか渡してなかったのに、なんで靴とズボンも?


『彗星マジック:レジェンド多く無いですか? 表皮って一つで複数の素材に変わるとか?』

『夢乃:ううん。ドドンのお友達が分けてくれたんばい。元々は彗星君がゲットした素材やけって』


 あぁ、なる。あいつら、クレクレしておきながら結局はこっちに戻してくれたってことか。

 いい奴等じゃん。

 靴とマフラーは同じシリーズになるんだろうか。バタフライって同じ単語が入ってるし。

 ふ。これでHENTAIズボンともおさらばだぜ。

 さっそく着替える。

 うん。なんだか足がすーすーする。

 下を見る。あ、すね毛が無いな。

 ……何これスパッツじゃんっ。しかも三分丈ってやつだろ!

 男の太ももなんて誰も喜ばねえよっ。

 しかもこのスパッツ、腰みの付きだ。赤からオレンジという具合にグラデーションが掛かってるが、よく見ると燃えてるようなエフェクトが付いてるぞ。

 こっちの腰みのはかっこいいのに、なんでスパッツなんだようっ。

 あ、これ手袋も燃えてるように見えるグラデーションカラーだな。

 靴は……うん、鳥の羽みたいなのがついた、某神話に出てくるようなデザインの靴だ。ただし羽は羽でも蝶の羽だ。まぁわりと小振りの羽なんで、そう気にはならないか。


 スッパッツかぁ。どうみてもスパッツだよなぁ。

 うぅん、まぁ孔雀よりはマシか?


『夢乃:合成で失敗したら言うてね〜。レアならまだ予備があるけん』

『彗星マジック:ありがとうございます。出来るだけ失敗しないように努力しますよ』


 よし、じゃあ合成するか。

 えっと、ロックギターにはレジェンドの杖が合成してあるから外せないっと。

 他に合成できる物……あ、ジャックの記念メダル!

 これも呪いのアイテムだったな。味方のバフやヒールが不発するかもっていうアイテムだけど……自己ヒールでカバーする!

 そういや自分のヒールはいいんだろうか?

 まぁ検証すればいいさ。


 ってことで、レジェンドのコートと合成しよう。もう一着はマフラーと合成しておくかな。

 28装備の手袋にレア杖が合成してあるから、代わりの杖を見繕うまではこのままにしておくか。火力が下がるしな。

 靴は素直にはきかえてっと。


 民家の裏手でこそこそと合成開始。

 まずはメダルとコートを――……。

 ……。


「はあうああぁぁぁっ。ゴミになったぁぁぁっ」


 ノオォォォォォォッ。

 残ったのは黒い塊と、金ぴかメダル。

 う、嘘だろ。レジェンドのコートが……コートがぁぁぁぁっ。

 うぅ、うぅ。

 レジェンドの予備なんて無いよな。

 そうだ、今から鉱山行ってデラックスなスライム倒しに行くか!

 よ、よぉし。じゃあとりあえず防御力上げる為にレアを合成させておこう。まぁこっちは失敗しても予備があるっていうからな。

 うん。こういう時には成功するんだよな。

 そういや性能見てなかったな。

 なになに?


【裏切られやすいお人好しジャックの記念メダルin極々ありきたりな上質で軽いデラックスコート】

 やたら長いアイテム名だな。

 能力は回避率+12%、VIT+8、物理ダメージ20%カット。

 おぉ、物理ダメージカットかよ。やったね!

 やった……あれ? レアなのに能力が三つ?

 あれ? この長ったらしいアイテム名はオレンジ色だぞ。


 ……つまりこの黒い塊は、レアコート?

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